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2024年9月の記事一覧

【読書ノート】『判決』(『F』より)

【読書ノート】『判決』(『F』より)

『判決』(『F』より)
カフカ著

主人公・ゲオルクは、2年前に母親を亡くし、老いた父親と二人で生活していた。

ゲオルクは、ロシアに住む友人に手紙を書こうと思う。近いうちに結婚する予定なのだけど、友人にこの喜ばしい知らせを伝えるべきかどうか悩む。友人は、ペテルブルクで新しいビジネスを始めたものの、うまくいっていない。
手紙を父親に見せると、父親は、ゲオルグを死刑だという。

なかなか、訳のわから

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【読書ノート】『大きな星の時間』

【読書ノート】『大きな星の時間』

『大きな星の時間』(『生命式』より)
村田沙耶香著

パパに連れられて女の子は遠い国にやって来た。そこでは、誰も眠れない。そこでは、昼の時間は眩しいから部屋で過ごして、星が見える時間に人々は外に出て活動するのだという。女の子は急に寝たくなったのだけど、眠ることが出来なくて嘆く。

よくわからない世界観。

何を言いたいのか考えてみた。

眠らないことにはどんな意味があるのか?
時間の制約を超えるこ

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【読書ノート】『光のところにいてね』

【読書ノート】『光のところにいてね』

『光のところにいてね』
一穂ミチ著

結珠(ゆず)と果遠(かのん)は、居住環境こそ異なるものの、毒親に蝕まれた人生を送っていた。そんな二人の出会いは、7歳。15歳の時に再会して、29歳で再び出会う。四半世紀にわたる二人の人生の物語。

キーワードをあげてみる。

①「光のところにいてね」
光は暗闇を照らし、迷いを晴らし、道を示す。光は知識や洞察力を象徴する。また、光は神の存在を象徴する。

②ギ

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【読書ノート】『傲慢と善良』

【読書ノート】『傲慢と善良』

『傲慢と善良」』
辻村深月著

映画化されるということで、再読した。

あらすじ
西澤架と坂庭真実は、婚活アプリで出会い、一緒に暮らしていて結婚も決まっていた。お互い充実した日々を過ごしていると思っていた矢先、真実は、突然姿を消す。
ミステリーの流れで、物語は進んでいく、、

①婚活アプリ
徐々に愛を育む通常の恋愛とは異なる。写真と自己PRを読んで、メールなどのやり取りを通して、会うかどうか決める

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【読書ノート】『てがた』(『あとかた』より)

【読書ノート】『てがた』(『あとかた』より)

『てがた』(『あとかた』より)
千早茜著

黒崎副部長が死んだ。屋上から飛び降りたのだった。「俺」には、黒崎が、死を選んだ意味がわからなかった。死後わかったことは、黒崎は、家族に捨てられていたということ。そして、愛人にも捨てられていた。

主人公の「俺」には愛すべき妻がいて、子供もいる。幸せなつもりで生きているのだけど、ある日、会社を早めに帰宅すると、妻はいなかった。そして、そこから物語は始まる。

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【読書ノート】『法廷遊戯』

【読書ノート】『法廷遊戯』

『法廷遊戯』
五十嵐律人著

ロースクールに通う、久我清義と織本美鈴は、大きな罪を犯していた。それは、罪であっても、裁判では裁かれることはない。

ある日、二人の過去を告発する差出人不明の手紙が届く。

そして、過去の冤罪事件が明るみに出る。

冤罪とは?
無実の人が冤罪を被せられることを指す。これは、法的なシステムにおいて不正確な判断や十分な証拠がない状況で起こる。無実の人が冤罪を受けることで、

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【読書ノート】『待ち人の心得』

【読書ノート】『待ち人の心得』

『待ち人の心得』(『ツナグ』より)
辻村深月著

友人から誘われた合コンの帰り道で偶然出逢った女性・日向キラリ。

キラリと交際を始めて数年経過して、主人公・土谷功一が、プロポーズをした翌日キラリは姿を消した。そして、土谷の時間は止まった。

この物語では、二人は愛し合っていたはずで、キラリが行方不明になるということは、何か事件や事故に巻き込まれて、亡くなってしまったのではないかと思っていたのだろ

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【読書ノート】『輝く滑走路』

【読書ノート】『輝く滑走路』

『輝く滑走路』(『ギフト』より)
原田マハ著

主人公の「私」は、中学の同窓会があるので、故郷に戻ってきた。恋に敗れ、失業していたというのが、戻ってくる本当の理由なのだけど。

キーワードを挙げてみる。

①畦道
自然との調和や均衡を表現している。直線的な形状を持ち、周囲の風景と調和しながら、地形の変化に対応する。この均衡感は、人間の内面の調和やバランスを象徴している。それゆえ、畦道を歩くことは、

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【読書ノート】『麒麟の翼』

【読書ノート】『麒麟の翼』

『麒麟の翼』
東野圭吾著

男性が亡くなった場所は、日本橋麒麟像の真下だった。被害者の名は青柳武明、ナイフで胸を突かれていた。

中原香織はアルバイト先の総菜屋で閉店準備をしていた時、同棲中の八島冬樹から電話がかかってきた。八島はただ「まずいことをしてしまった」と言った後、即座に通話を切った。

物語のなかで、様々な形でひとが嘘をついたり、物事をごまかしてしまうことが、わかる。

①中原香織は同棲

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【読書ノート】『花咲か死者伝言』

【読書ノート】『花咲か死者伝言』

『花咲か死者伝言』(『むかしむかしあるところに死体がありました』より)
青柳碧人著

『花咲か爺さん』のその後の話。
花咲か爺さんはやはり良い人で、お偉いさんからご褒美をもらっても、村に寄付してしまう。
ある日、そんな花咲か爺さんが、殺害される。

次郎と名づけられた犬が、推理する形で物語は展開する。

成功者は財産とどう付き合っていくべきかというのが、ある意味論点。多額の財産を手に入れることは、

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【読書ノート】『魔王の帰還』

【読書ノート】『魔王の帰還』

『魔王の帰還』(『スモールワールズ』より)
一穂ミチ著

鉄ニは、甲子園常連の名門高校に野球部の推薦で入っていたのだけど、同じ1年生で、パッとしない友人が、先輩から公然のリンチを受けていたところを目撃して、先輩らを叩きのめして、菜々子のいる高校に鳴物入りで転校してきた。

菜々子は、母親が再婚して、父親に犯されそうになって、抵抗して、逆に菜々子は父親を誘惑するから別居だとされてしまったため、やりマ

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【読書ノート】『ハピネス』

【読書ノート】『ハピネス』

『ハピネス』
嶽本野ばら著

「私ね、後、一週間で死んじゃうの」
という言葉で物語は始まる。

彼女は余命宣告を受けて自らの運命を受け入れ、限られた時間を自分らしく生きることを決める。

「僕」は、彼女の望みを叶えるために、行動をともにする。

そして、ある寒い日の朝、彼女は「僕」のベッドで目覚めることのない眠りにつく。

物語の主題は何か?
限りある人生をどう生きるか?ということなのだろう。

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【読書ノート】『護られなかった者たちへ』

【読書ノート】『護られなかった者たちへ』

『護られなかった者たちへ』

中山七里著

東日本大震災の後、家族と離れ離れになったカンちゃんは、遠島けいのもとで、生活していた。そこに、同じく身寄りのない利根 勝久が一時、合流した。その後、利根は出稼ぎに出ていき、数年後、遠島けいを訪ねる。

遠島けいは、生活保護を受給できず、餓死してしまった。そして、利根 勝久は、福祉保健事務所の課長・三雲忠勝と城之内猛留を恨んでいた。

その三雲忠勝と城之内

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【読書ノート】『さいはての彼女』

【読書ノート】『さいはての彼女』

『さいはての彼女』
原田マハ著

「最悪の事態に直面した時、1時間後に立ち直っている自分を想像できるか?それができる人は一年後、10年後、必ず成功する人です」

主人公・鈴木涼香が、聴覚障害のナギと出会い人生を再始動する物語。

涼香には辛い過去があった。その両親を見返してやろうと決意して、起業して、成功の道を進んで来たつもりだった中、信頼していたつもりでいたスタッフが、何人も辞めていく。

不本

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