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2024年5月の記事一覧

言葉をうつす言葉、文字をうつす文字(「鏡」を読む・02)

言葉をうつす言葉、文字をうつす文字(「鏡」を読む・02)


◆言葉をうつす言葉、文字をうつす文字*文字がうつすものは文字

 上は、「「鏡」を読む」という連載の第一回に書いた文章ですが、今回はそれを変奏してみます。

 言葉は言葉をうつす
 言葉は世界をうつさない
 言葉は世界ではない、世界は言葉ではない
 言葉と世界は別物

 文字は文字をうつす
 文字は世界をうつさない
 文字は世界ではない、世界は文字ではない
 文字と世界は別物

 鏡は鏡をうつす

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山の記憶、「山」の記憶

山の記憶、「山」の記憶

 今回は、川端康成の『山の音』の読書感想文です。この作品については「ひとりで聞く音」でも書いたことがあります。

◆山と「山」
 山は山ではないのに山としてまかり通っている。
 山は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通っている。

 体感しやすいように書き換えると以下のようになります。

「山」は山ではないのに山としてまかり通っている。
「山」は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通って

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うつす、うつる、うつってしまう

うつす、うつる、うつってしまう

 川端康成の『名人』には「うつす」と「うつる」と「うつってしまう」が出てきます。

 頼まれて「うつす」ことになった写真に「うつる」ものを見て、「うつってしまう」を感じたときの気持ちが文字にされているのです。「みる・みえる」について考えさせてくれる刺激的な記述に満ちています。

 なお、『名人』については以下の記事に書きましたので、よろしければお読みください。

写す・写る
 写真を撮る場合には、

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当てる

当てる

 石に石を当てる。
 石に「石」を当てる。

 いまここにあるたった一つのものに、一本化された「たった一つのもの」を当てる。

 猫に猫を当てる。
 猫に「猫」を当てる。

 いまここにいるたった一つのものに、一本化された「たった一つのもの」を当てる。

     *

 愛に愛を当てる。
 愛に「愛」を当てる。

「たった一つのもの」とは言えないものに、一本化された「たった一つのもの」を当てる。

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まなざし、目差し、眼差し

まなざし、目差し、眼差し

 私は言葉を転がすのが好きです。眠れない夜とか、昼間にぼーっとしているときにやっています。

 具体的に言うと、次のように連想にうながされる形で言葉を並べていくのです。

 まなざし、目差し、眼差し、なざし、名指し、名付ける

 よく記事の中でも、言葉を転がしています。あれは記事を書きはじめたり、書きつづけるために、取っ掛かりを探しているのです。見切り発車で記事を書くので、どうしてもそうなります。

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うつろう かげろう

うつろう かげろう

 見出しの付いた各文章は連想でつなげてありますが、断章集としてお読みください。どこからでもお読みいただけます。

*言葉を転がす

 映る、鏡に映る、水面に映る、瞳に映る、壁に映る、スクリーンに映る
 映る、見える、眺める

 映す、鏡に映す、水面に映す、瞳に映す、壁に映す、スクリーンに映す
 映す、見る、観る

 映してみる、映しみる
 映して見る、映し見る
 移して見る、移し見る

 うつしみ

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「鏡」という「文字」、鏡という「もの」(「鏡」を読む・01)

「鏡」という「文字」、鏡という「もの」(「鏡」を読む・01)

「「鏡」を読む」という連載を始めます。江戸川乱歩の『鏡地獄』の読書感想文です。体調というか病状が思わしくないので、この連載は不定期に投稿していくつもりでいます。

◆「鏡」という「文字」、鏡という「もの」
 江戸川乱歩の『鏡地獄』の最大の奇想は、鏡ではなく「鏡」という「文字」を真っ向からテーマにしたことだと私は思います。この短編のテーマは、鏡という「もの」ではなく、「鏡」という「文字」だと言いたい

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うつす、ずれる

うつす、ずれる

 今回は「何も言わないでおく」の続きです。見出しのある各文章は連想でつないであります。緩やかなつながりはありますが、断章としてお読みください。

 断片集の形で書いているのは体力を考慮してのことです。一貫したものを書くのは骨が折れるので、無理しないように書きました。今後の記事のメモになればいいなあと考えています。

書く、描く
「書く」のはヒトだけ、ヒト以外の生き物や、ヒトの作った道具や器械や機械

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辺境にいる 辺境である 

辺境にいる 辺境である 


テリトリー、外、内、辺境
 昔の話です。

「仏文学は澁澤龍彦、独文学は種村季弘(たねむらすえひろ)、英文学は由良君美(ゆらきみよし)」――そんなふうに、一部の人たちが口にしていた時期がありました。

 三人に共通するのは、博覧強記というところでしょうか。在野、アカデミックな場と、身を置く場所は違いましたが、それぞれが持ち味を生かしながら、いいお仕事をなさっていました。

 澁澤龍彦 - Wik

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