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すき、は偉大なる杖だ。幾度となく折れでも、幾度となく立ち上がった。いくつになっても、すきだと叫んでばかりいる。
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84°33でつながってたい。

84°33でつながってたい。

たまらなくなって、あわててパソコンを開いた。うれしい。
前回の更新から約3ヶ月ぶりでしょうか。
お久しぶりです。元気にしています。お元気ですか?
元気でなくてもいいんです。生きていてくれれば。

あれから仕事を始めました。
心配していた夏休み、家事の分担、子どものメンタル、7月に抱えていた問題は夫と子どもとの話合いと試行錯誤を重ね合いながら、9月からは週4と求人票通りに働いています。

いまにして

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禁じられた遊び3

その日はいつもより小高い山の崖から飛び降りることにした。もうその頃には、高いビルのフェンスを越え、屋上の90度のコンクリートに足を掛け、次のビルへ飛び移るようになっていた。

崖も簡単だろうと思ったら大間違いで、脆い岩では足の裏に力を入れても思った以上に勢いがつけられず、ある家の裏庭に落下してしまった。仕方なく窓を開けて静かな家の中へ忍び込んだ。

古い見知らぬ家の中は暗いはずなのに、青白く明

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アウトサイダーアートはいい匂いがして水銀のように魅力的

アウトサイダーアートはいい匂いがして水銀のように魅力的

アウトサイド・ジャパン展(~5/19)に行った。

アート展に行った、なんて言うと、アート好きを公言しているようだけど(いやそんな風に見る人はいないかもしれないけど!)、それは全くの間違いで、たぶん芸術と比べるなら、まだCBテストレポート(特定電気用品PSE適合性検査に提出する試験証明書)の方が理解できるよねえ…!?と悩むほど、わたしは芸術鑑賞に疎い。

絵を見れば油の波が気になる始末。
彫刻を見

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焦がれる砂丘。

焦がれる砂丘。

2018年大晦日にどうしても行きたかったのは、やっぱりあの砂丘だった。

地元では白い砂の砂丘がある。海の砂は白い、と記憶して生きていると、11歳で初めて見た黒い砂浜は強烈だった。それを海ではないとすら感じるほどに、白い砂丘と海は私の中で硬く結びついている。

静岡県の駿河湾を囲む湾岸線がちょうど弧を描き終わる最南端に、御前崎港がある。名古屋から続く遠州の砂丘はこの地でちょうど途切れる。

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コトバ

コトバ

深夜2時、帰宅した夫の脚を揉む。

立ち仕事と、秋の夜風の寒さが沁み
ふくらはぎは パンパンに腫れている。

熱を帯びたふくらはぎの中には
二本の大きな筋が埋もれていて、
その合間で行き場をなくした
血液を川下へ流していく。

すこしずつ液体は、わたしの言うことを聞いて
あるべき流れを取り戻す。

苔むした大きな岩も
小石の積まれた堰も
ゴロゴロと流れていく。

そして大方流し終えたのか

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年の瀬川

年の瀬川

年の瀬の東名高速道路の渋滞は、絢爛たる川だった。

フロントガラスの半分より上には、世界が逆さまでない隠れた恩恵を覗かせるように、底のない暗い空がまたがる。

さらに三分の一の高さには、光る橙を灯した一本草が並び、宙にもう一枚の滑走路を浮かべるも、そこを走る車は一台も見えない。

誰も走れない滑走路の下で、ようやく、尻に赤を灯す車たちが等間隔に流れていく。

これほどの赤い蛍を見る

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女のSNSの世界で行う筋トレ

女のSNSの世界で行う筋トレ

先日ある業界のとあるお偉さんが、facebookやめちゃおうかな、とつぶやくのをみて、笑った。

同じレベルの話を、知り合いの事業者界隈からも、子育て中の友人界隈からも、聞いている。(前出の投稿の真偽はさておいて)
そう愚痴ってくれる人の話を聞きながら、人っておもしろいなぁとおもう。

SNSを仕事に使う友人はとても多く、古株もいれば駆け出しも出てきたり、いなくなってしまったり。変わり身も入れ替わ

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追分羊羹

追分羊羹

むかし、母方の祖父にオネダリした、追分ようかんをたまに食べる。静岡駅か、本店で買うか、またはネット通販でしか買えない静岡銘菓だ。
孫が ねだった この羊羹を祖父は、見えないところで 遠路はるばる買いに行ってくれたのだ。
追分羊羹を食べるとき、無口な祖父のやさしさを感じることができる。

この追分羊羹を、あの徳川慶喜も食べていた、ということを知ったのは、最近だった。



春すぎから暇さえあれば、

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クッションで寝たいので寝ます!

クッションで寝たいので寝ます!

わたしの周りの人はひとりもわたしの言うことを聞かない人ばかりで、それにとても苛立つこともある反面、そのことに、ひどく救われている。

とある人とお仕事をさせていただいていて、その人には仕事を貰うだけでなく、それを通じて今大事なことを教わっている。
わたしは彼女の掌の上で よく踊る。その事実は心地よく、誠に有難い人だと心底感じる。

彼女のインスピレーションを現実化することがわたしの役割で、わたしは

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あけさんのごはん。

あけさんのごはん。

あけさんはいつも声が高くて
はーい❣️と言っている。

なにを話してもハートマーク付きという
独特の語尾をしている。

突然うずくまり皆んなに倒れたかと心配されるのに
ケロっと、探し物をしてたんです❣️と言う。
ごめんごめん❣️もハートがついている。

あけさんが野菜を切るとき
少し背中を丸めて慎重にしている。

もしかしたらいま、まな板の上で
ビーズアクセを作ってるのかもしれない。
わたしは音

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すきなひと

ものすごく好きな人がいました。
もう20年くらい、いや25年くらいすきでいます。
10年ぶりかでその人の新刊を読みました。

その人の言葉に触れると
自分の中にふだん隠しているマグマみたいなのが
ダクダクと沸騰し泡が爆ぜてしまいます。

ホントのわたしに戻してしまうのです。

この体がいちばん喜ぶことを知る、言葉でした。

わたしはまた あのときと同じ様に
爆ぜたマグマが内壁にベッタリとこ

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妖怪キモチアライ

妖怪キモチアライ

noteには浄化作用があるとおもっている。

風呂トイレのついてない
レオパレス式共同マンションにいて、
たまに誰かと顔を合わせることができる。

ゲストハウスで色んな刺激をもらいながら
心が洗われるような体験に近い。

ここに吐き出した言葉は一陣の突風に吹かれ
またたくまに 埃をはたかれ
水を浴び 日光で滅菌される。

このゲストハウスでは
書きながらじぶんの階段を上る旅人たちが憩う。

みな、

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仕事

仕事

満月の夜。

9時を回る前から、光が真っ白になった。

三原色は重なると白になる。
光は加算される。

あの白のどこに青と赤と緑があるのかわからない。

この網膜はその波を捉えないし
照らされる肌も変わらなく見える。

ないのに ある ということが、
こんなに普通で 日常だ ということに気がつかない。
すぐそこの境界線は こんなに揺らいでいるのに。

南南東に輝く白光の対局、
北北西の空の大半

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月

昔から月を見ると、その裏側にいる太陽を感じた。

見えない太陽を映し けれど青白い光は太陽と別物。
この星の裏にいる人たちは
今起きて生活をしているんだと思った。

光は集まると強く白くなる。
太陽からの反射角で紅くも見える。

ただそれだけなのに
石の衛星の作る世界に心を打たれ
いつまでも見ていた。

田舎では月が強く光るほど
月の灯りが作る影と光の遠近感が消えてしまい
不思議な感覚を覚える。

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