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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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#読書日記

「月が綺麗ですね」と言わせたのは太宰治じゃないの

「月が綺麗ですね」と言わせたのは太宰治じゃないの

アイラブユーを「愛してる」と訳さずに「月が綺麗ですね」とでも言っておけ、
と夏目漱石が言ったことにされている。

読んでも、そんな場面ないので調べてみたら
「漱石が教師時代に言ってそうなこと」だった。
架空の名言がミーム化された野原ひろしみたいなことになっていた。
沢山文章あるのになんで架空の言葉追加した!お札の肖像画でいちばんイケオジやぞ!

だけど、太宰治の「津軽通信」を(金がないので図書館で

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【本好き日記】ヤーレンズ出井の禁煙、海外小説ツアーを経まして、四国のあやしい古本屋へ

【本好き日記】ヤーレンズ出井の禁煙、海外小説ツアーを経まして、四国のあやしい古本屋へ

年に一度の本棚整理の準備をしています。
8月は僕だけじゃないだろうけど異常なだるさ。
温度差と無気力が原因なのはわかってるのに、何これ軽めの熱中症?症状の出ないコロナ?と疑うぐらいだった。

読み切れなかった本も、難しいけどなんか好きな本も、自分ごときが感想書けない本もいっぱい出てくる。

台風の時に家にこもって、秘密基地みたいにして分厚い文芸誌を読むのよくね? って思ってできるだけお菓子を買い込

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北海道の刺身

北海道の刺身

河﨑秋子はちゃんと北海道では誰もが知る超有名作家になってるんですか?短編集「土に贖う」のうちの一遍でもいいから、学校でちゃんと読ませてるんですか?
 
トロの刺身を食べただけでマグロ全体が生きていたことを想像できるように、数ページの短編ひとつで北海道の大地と寒さが頭に注入される。
この本は北海道の刺身。北海道の切り身。北海道のえんがわ。

地方小説としてすごくかっこいい。このテキストは四国で書いて

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【読書日記】「三四郎・それから・門」

【読書日記】「三四郎・それから・門」

「それから」を読んだ。学校で「坊ちゃん」を勧められても読まなかった記憶があるのに、大人になって、自分で読みたいから自分で稼いだ金で文庫本を買って、1日2行しか進まない日もあるけど、少しづつ、自分で読みたいから読むことができた。

読書感想文でもない、作者の考えを読み取るでもない、ただ100年前の人の言葉使いとか、文章が好きだから読んだだけ。

この時代とは人生の長さも、きいてる音楽の速さも違うのに

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すばる7月号を学校の図書室に置こう

すばる7月号を学校の図書室に置こう

すばる7月号を読んだ。
李琴峰さんのアイオワ滞在記が良すぎて共有したいので、ここだけでもカッターで切り取って小冊子にして全国の高校の図書館に吊るそう。

アイオワ大学で、反LGBTQの活動家が講演をすることに、大学生たちが一斉に抗議する。
コールで、アートで。それぞれのスタイルで反差別を態度で示し、近所の車はクラクションを鳴らし、武装警察まで巻き込む騒ぎ。
その一部始終をその場にいるような迫力で記

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【読書日記】映画より先に「2001年宇宙の旅」を読むぜいたく

【読書日記】映画より先に「2001年宇宙の旅」を読むぜいたく

5月は体調崩した方の報告が多かった。俺もお前もアイツも俺もみんな、ノド枯らしたり入院したりしていた。
みんな大丈夫か!生きているのか!じゃあ良かった!

SF小説を読める元気がもどったので、ついにこれを読む。

映画は猿の集団の前にモノリスが出現する場面しか知らない。ネタバレなしで読めるぜいたくを噛みしめる。

猿人たちの前に突然現れたモノリス。
猿たちはまず、植物のように生えてきたものかと考える

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【読書記録】北の大地の怒りを感じた「肉弾」

【読書記録】北の大地の怒りを感じた「肉弾」

河﨑秋子「肉弾」を読みました。
この小説に贈られた言葉「熊文学の新たなる傑作」が気になりすぎて。なんせ「熊嵐」が好きですから。クマのプーさんも。

狩猟と小説は相性がいい。
自然の描写から、どこに敵が潜んでいるかわからないホラー的な怖さ、最期には自然との共存といったテーマ性も感じる。どこをとっても読みごたえがある。
熊の習性として、獲物を一度で殺して終わりじゃなくて、しばらくとっておくところもいい

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「バッタを倒すぜアフリカで」買って風呂だ

「バッタを倒すぜアフリカで」買って風呂だ

深夜のおやつに罪悪感を感じたことはないけど、無駄な休日の使い方に罪悪感がある。

こどもの頃の休みの日は、全部おいしいごちそうのようなもので、起きた瞬間から楽しさしかなかった。

大人になってから、休みの日の無駄使いに罪悪感をおぼえるようになった。

平日と違う場所に行く。初めての映画や料理などを知る。友人などと触れ合うなど、有意義っぽいことをしないと、夜に憂鬱になる。

仕事の日に体が疲れて、休

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これはハヤカワSFトートと「地図と拳」

これはハヤカワSFトートと「地図と拳」

何やってもあんまり楽しめない、短い本も頭に入ってこない精神状態なのに、いきなり思いついて分厚い本を買ってきた。

本好きあるあるだと思うんだけど、薄い本は一文ごとに考えさせられるからなかなか読む手が進まない。分厚い本の方が全然いける。

で、本好き以外でもあるあるだと思うんだけど、いかにもとっつきやすいですよー、初心者のこと考えましたよー、って感じを出した作品よりも、難解そうなものに理由もなく手を

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【読書記録】小説すばる2024/2 イノシシとクマの芸風。好きな読みきり「優しくない友達」

【読書記録】小説すばる2024/2 イノシシとクマの芸風。好きな読みきり「優しくない友達」

「小説すばる」に「猪之噛」って巨大イノシシを狩る小説が連載されている。最初は純粋におもしろくて読んでいたけど、
だんだん
「クマとどう差別化していくんだろう」
と考えながら読んでいる自分に気づいた。
別にイノシシも
「あっ!俺、最近ブレイク中のクマと芸風かぶってる!」とか意識しないだろうけど。

直木賞の「ともぐい」だったり「流れ星銀」の最終章が始まったり、時代は クマなのかもしれない。あとリラッ

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【ノンフィクション】特攻服少女と1825日

【ノンフィクション】特攻服少女と1825日

「コギャル」「ヤンキー」は何となく想像できるけど、女の不良「スケバン」女だけの暴走族「レディース」がいて、彼女らの専門誌が何万部と売れ、本物のヤンキーたちが修学旅行でディズニーランドに行った帰りに編集部に来て、紙面で総長が「半端にやるぐらいなら学校行きな」と不良をさとす。

こんな時代があったのか!の連続。

少年院から出所してすぐにかつての仲間からリンチにあった、ある少女の事件をきっかけに、レデ

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【読書記録】高山羽根子「ススキの丘を走れ(無重力で)」

【読書記録】高山羽根子「ススキの丘を走れ(無重力で)」

この中に収録されている、小学生のころの記憶を掘り返す短編「ススキの丘を走れ(無重力で)」がすごく好き。
自分もこんなきれいで不思議な小説を書いてみたい。分量的には30分ほどで読めます。

学校を卒業してしばらくして再会した人がいると、こんな会話が発生しませんか。
「あいつ覚えてる?」
「あの子今何やってるか知ってる?」
 そんな感じで、記憶を掘り起こす話。久しぶりに再会した同級生と、子供のころいっ

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安堂ホセ「迷彩色の男」で芥川賞だ

安堂ホセ「迷彩色の男」で芥川賞だ

村上龍や石原慎太郎がデビューした時、こんな感じだったんじゃないか?

迷彩色の男はかっこいい。
ゲイが集まる風俗施設で傷害事件が起こり、そこから出た男がすぐ警官に職務質問される場面がある。
お巡りさんは当たり前の捜査をしているはずなのに、読んでいる最中は向こうが悪に感じる。偽善、嘲笑。そんな言葉がうかぶ。

正しい仕事をしているのに悪意を感じて、聞かれた男に感情を入れ込めたのは、読書体験によって善

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「つけびの村」が他人事とは思えない

「つけびの村」が他人事とは思えない

限界集落で行われた連続放火殺人事件の犯人を取材したノンフィクション「つけびの村」が、まあ怖かった。恐怖を与えるために書かれた本じゃないのに、不安になるツボを刺激する内容だった。
それは、ぼくが電車内で叫んでいる「どうかしてる人」を見ていられないのと関係がある。
そういう人が、向こう側の人間とは思えないのだ。

「つけびの村」では、連続放火殺人をおこして、殺害予告のような川柳を残した犯人の印象を聞い

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