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躁鬱経営統合への道 SOUとUTSU⑤
SOUは、UTSUの言葉を反芻しながら、初めて真剣にノートと向き合っていた。今まで、数字の羅列を見るだけで頭痛がしていたのだが、今は違った。UTSUが丹念に書き込んだ表やグラフの一つ一つが、まるで暗号を解読する鍵のように思えた。
「これは…支出の内訳か…確かに、こうして見ると、無駄なものが多いな…特に、交際費…飲み会とか、結構行ってるもんな…UTSUはこういうのをちゃんと把握してるんだな…すごいな…」
SOUは、UTSUの几帳面さに感心しながら、ノートを読み進めていった。UTSUは、ただ単に節約を訴えているのではなく、将来を見据えた具体的な計画を立てていた。目標金額、貯蓄方法、運用方法…SOUにとっては未知の世界だったが、UTSUの言葉を通して、その重要性が少しずつ理解できるようになってきた。
「UTSUは…ただケチケチしてるんじゃなくて、ちゃんと将来のことを考えてるんだ…俺は今まで、目先の楽しさしか考えてなかった…UTSUは、俺にないものを持ってる…本当に…」
SOUは、ノートを閉じ、深く息を吐いた。今までの自分がいかに無計画だったかを痛感した。しかし、同時に、UTSUという頼れるパートナーがいることに、心強いと感じていた。
「よし…UTSUがここまでやってくれたんだ…俺も、ちゃんと応えないと…まずは…UTSUの計画をちゃんと理解することから始めよう…」
SOUは、再びノートを開き、UTSUの書いた数字と向き合い始めた。今まで避けてきた数字の海に、勇気を出して飛び込んだのだ。最初は戸惑ったが、UTSUの丁寧な記述のおかげで、徐々にその意味を理解できるようになってきた。
数日が過ぎた。SOUは、UTSUの計画を理解するために、毎日ノートと格闘していた。最初は苦痛だった数字の羅列も、今ではパズルのピースのように、少しずつ繋がり始めていた。そして、UTSUの計画がいかに緻密で、将来を見据えたものであるかを、改めて認識した。
ある日、SOUは、UTSUの計画に基づいて、自分なりに改善案を考えてみた。それは、UTSUの提案していた節約策に加えて、新たな収入源を確保するためのアイデアだった。
「UTSUは、無駄な出費を減らすことを提案してたけど…それだけじゃ、根本的な解決にはならない…やっぱり、収入を増やすことも考えないと…」
SOUは、自分の得意なことを活かして、副業を始めることを思いついた。それは、以前から興味があった分野で、UTSUの計画に組み込むことで、より効果的なものになると考えた。
「これなら…UTSUも納得してくれるかもしれない…UTSUの計画と、俺のアイデア…これが合わされば、きっとうまくいく…」
SOUは、興奮しながら、自分のアイデアをノートに書き始めた。それは、UTSUの几帳面な記述とは対照的に、図や矢印で溢れた、SOUらしい自由な発想に満ちたものだった。しかし、以前とは違い、UTSUの計画をしっかりと踏まえた上で、自分のアイデアを提案していた。
その夜、SOUはノートにこう書き込んだ。
「UTSUへ。お前の計画、本当にすごいな。俺、今まで全然分かってなかったけど、ちゃんと見てみたら、本当に緻密で、将来のことを考えてるんだな。尊敬するよ。で、俺も考えてみたんだ。お前の計画に、俺のアイデアをプラスしたら、もっと良くなるんじゃないかって思って。それはね…」
SOUは、自分のアイデアを丁寧に説明し、UTSUの計画とどのように連携するのかを、図や表を使って分かりやすく示した。最後に、こう締めくくった。
「UTSU、お前と一緒なら、きっとうまくいくと思う。俺の勢いと、お前の計画性…これが合わされば、最強だ!だから、これからも、一緒に頑張ろう!」
SOUは、ノートを閉じ、満足げな表情を浮かべた。初めて、UTSUと心を通わせることができたような気がした。今までは、ただ反発していただけだったが、今は、心からUTSUを信頼し、尊敬している。