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加速主義

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記事一覧

御田寺圭『フォールン・ブリッジ 橋渡し不可能な分断社会を生きるために』読んだ

御田寺圭『フォールン・ブリッジ 橋渡し不可能な分断社会を生きるために』読んだ

白饅頭こと御田寺圭さんの新著が出たので読んだ。

本書は、スタジオジブリの機関誌『熱風』に連載された記事を中心にしたものらしい。

熱風に連載を持っているのは知っていたが、同誌はやや入手しにくいこともあり読んでなかった。ありがたい。

しかし、著者の文章を何年もほぼ毎日読んでいる私でも暗い気分になってしまう記事がいくつかあり、おいおい、これをジブリのファンに読ませたんかい、、、と驚いてしまったので

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三浦清美『ロシアの思考回路』読んだ

三浦清美『ロシアの思考回路』読んだ

いやあ、これは面白かった。

今、Kindle版はお安くなってます。

三浦清美氏のことは、この本で知った。

氏は主に正教からみたロシアの精神史について書かれていた。それが興味深くて、単著を読みたくなったのである。

高橋沙奈美氏のこの本は、より深く正教に突っ込んでいくのに対して、三浦氏はどちらかというとロシア、ウクライナ、ベラルーシの歴史、特に精神史と絡めて語っているのが特徴である。

ものす

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轟孝夫『ハイデガーの哲学』読んだ

轟孝夫『ハイデガーの哲学』読んだ

ちょっと前に、防衛大学の哲学教授であるところの轟孝夫先生のこの記事がバズっていた。いわゆる「黒いノート」刊行以降、ドイツではハイデガーに触れるのはタブーとなっているが、日本では相変わらず人気という話題である。

日本では、もともとユダヤ人差別など存在しないからか、ハイデガーは変わることなく読まれ続けているのだ。私は読んでないけど。

そういうわけでマルクス・ガブリエルが日本にやってきたさい、老婆親

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山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』読んだ

山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』読んだ

東アジアでは少子化が話題にならない日はなく、少々のことでは驚かないが、韓国の数字は衝撃的すぎるね。。。

そういうわけで少子化シリーズいきましょう。

著名な家族社会学者であり、政府の政策にも関与してきた山田昌弘氏の新書。

コロナ前に出ていたが、今ごろ読んだ。Kindle Unlimitedだよ。

トゥイッターランドに棲息する賢明な諸氏ならだいぶ前から知っていたことばかりなのだが、やはり真っ当

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長宗我部友親『絶家を思う』読んだ

長宗我部友親『絶家を思う』読んだ

知人に面白そうって教えてもらったので読んでみた。

著者は長宗我部家の何代目かの当主であり、タイトルのとおり世継ぎがいないらしい。。。

名家がこうなってしまうのは個が重視される今の時代ではしかたないことだと思うし、著者もそう慨嘆しているのだが、子孫を残すためにどういう努力をしたのかは書いてない、、、まあ無策だったわけじゃないと思うが。

長宗我部家のハイライトは、四国を制圧した元親の時代である。

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中国の少子高齢化

中国の少子高齢化

モーランド先生に続いて少子化シリーズです。

先日、こちらの記事で紹介されたレクチャーを聴講したのである。

中国の少子化はまじでやべえということがわかった。

まず中国が日本や韓国と異なるのは、昔の農業の生産責任制とかいう、家族の人数が多いほど農地面積が広くなる仕組みのせいで、男児の価値が高かったことである。これに一人っ子政策が組み合わさり、女児の中絶や遺棄が激増したといわれる。

だから男女比

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東浩紀『動物化するポストモダン』読んだ

東浩紀『動物化するポストモダン』読んだ

今さら読んでしまった、、、

去年の夏ごろに買ったのだが、今見たらKindle Unlimitedになってるし、、、

まあそれはいいとして。

本書は著者がまだ批評空間でブイブイ言わせてたころに書かれたので、内容はやや古かったりもするが、普通に面白かった。

動物化とはいうまでもなく、アレクサンドル・コジェーブが『ヘーゲル読解入門』でアメリカの消費文化を指して言った言葉である。

コジェーブはそ

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H. L. A. ハート『法の概念』読んだ

H. L. A. ハート『法の概念』読んだ

めちゃ時間かかったけど無理やり読み終えたことにした。

邦訳書は2冊あって、ちくま学芸文庫のほうが電子書籍あり、かつお手頃価格である。みすず書房のほうが訳は読みにくいが、正確とのことである。さすがみすず書房だ。

そもそも法律の文章は日本語であっても読みくい。というかたぶん日本語は法律に向いていないかもしれない。そういうことをラテン語を学んでいると考えてしまう。

法律の文章は、英語の意味は取れる

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【週末雑感】EURO2024始まる/ザ・ボーイズ シーズン4/東浩紀さんのこと

【週末雑感】EURO2024始まる/ザ・ボーイズ シーズン4/東浩紀さんのこと

週末やたら暑くて外に出る気がしなかった。日本の夏が始まったって感じだ。

そういやいつの間にかサッカーヨーロッパ選手権(EURO2024)が始まってた。

日本に2連敗してどん底だったドイツだが、開催国だからかどうか知らないが、スコットランドに快勝していた。われらがカイ・ハヴァーツも1点とったみたい。よかた。

スペインとクロアチアの試合はちょっとだけ見た。感想また明日にでも書くかもしれない。

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ポール・モーランド『人口は未来を語る』読んだ

ポール・モーランド『人口は未来を語る』読んだ

友人のSさんにおすすめされた本をようやく読んだのである。

早く読まなきゃと思っているうちに、白饅頭師匠が的確な書評を上げてしまわれて、もう読まなくていいかなと思ってしまったが、どうにか読んだのであった。

これからさらに3ヶ月たってるし、、、時間たつの早すぎやろ。。。

本書と似たような内容のものとして『格差の起源』がある。

同書は人口減少について、地球環境への負荷が減るからいい面もあるという

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三牧聖子『Z世代のアメリカ』読んだ

三牧聖子『Z世代のアメリカ』読んだ

なんとなくシラスでこんな動画を見て、この三牧さんて人は面白いなあとか、最近のアメリカの情勢どうなってるのかなあとか、そんな関心からこの本を読んでみたのである。

けっこう面白かった。

Z世代とはいまの20代なかばくらいの世代である。つまり2001年9月11日のテロのときには生まれていないか、物心がついていなかった人たちだ。

アメリカ例外主義との決別彼らに特徴的なのはアメリカ例外主義の否定である

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サミール・オカーシャ『哲学がわかる 科学哲学』読んだ

サミール・オカーシャ『哲学がわかる 科学哲学』読んだ

オックスフォード大学のVery Short Introductionシリーズの科学哲学編である。

文章は平明にみえるのだが、中身はそれなりに骨太であんまり理解できなかった。

科学のルールは言語ゲームのそれとたいして変わらず、あるとき突然ちゃぶ台返しされる可能性がある。そういう意味で、科学と疑似科学の線引きは簡単ではないのである。

東浩紀ならそれを訂正可能性に開かれているというだろうが、そんな

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ネオ高等遊民『一度読んだら絶対に忘れない哲学の教科書 』読んだ

ネオ高等遊民『一度読んだら絶対に忘れない哲学の教科書 』読んだ

通称ネオ哲学史、やっと読み終わった。

発売日前にフライングゲットしたのにずいぶんと時間がかかってしまったのは、ポップな装丁、キャッチーな見出しに反して、骨太な内容だったからである。

著者のネオ高等遊民氏は日本初の哲学系Youtuberであり、その名の通りタイで高等遊民をしているという非常に羨ましいお方である。

氏は読書サークルも主宰されており、私も混ぜていただいております。

本書がよくある

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ニック・チェイター『心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学』読んだ

ニック・チェイター『心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学』読んだ

一昨年くらいから時間とか意識についてチマチマと本を読んでいる。

だから一部で話題のニック・チェイターを読んだのである。

本書の原題はThe Mind is Flat、つまりマインド(知性、意識、心、、、どれもしっくりこない訳だ)はツルペタということだ。

私達は主に視覚情報から、意識において外界について稠密なコピーを作っていると考えている。ところが様々な実験から、人間の視覚は中心窩でしかまとも

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