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2023年6月の記事一覧
ハードボイルド書店員日記【141】
「タックスフリー?」「ノー」
外国人観光客が増えてきた。
ウチの店は洋書を置いていない。せめてHaruki MurakamiとSoseki Natsumeはと店長に訴える。普通のお客さんは買わないと却下された。私は「坊っちゃん」と「一人称単数」の英訳版を持っている。普通じゃないなら何なのか。
レディオヘッドの「クリープ」を心の中で口遊んだ。
ポストカードやコミック、画集を購入する人が多い。
ハードボイルド書店員日記【140】
「入菅法改正のニュース、見た?」
人手不足と不毛な返品作業が悩ましい平日。棚卸の経費をケチることが最優先でどこもかしこも書籍の並びが傾いている。返している本の大半は、本部が大量に発注したものだ。こうして自ら返品率を跳ね上げる施策を採り、春先には抑えるための縛りを掛ける。馬鹿としか言いようがない。
本を返すのはたやすい。ダンボールに入れるだけか、加えてデータを読み込むのみ。誰でもできる。しかしそ
ハードボイルド書店員日記【139】
「あのエリアの本、返さないよね?」
梅雨の合い間の平日。束の間の平穏。やがて新潮文庫の100冊やナツコミ、施設が催す夏のイベントも始まる。学生たちは襟元と口調を砕けさせ、外国人観光客はスマイルと2000円札を振りまき、連日がウィークエンドへ化ける。だからいまのうちにHPとMPを節約する。尤も凪のタイミングで重大な事故が起きやすいのは世の常であり、結局は年中気が休まらない。
返品する本をダンボー
ハードボイルド書店員日記【138】
「あの人、また来てますね」
某出版社のコミックス新刊が発売される金曜日。朝、売り場へ出ると梱包の山がバリケードを築いていた。特典を一緒にシュリンクしないといけない。複数あるものはまだしも、一種類しかないものは予め本に封入しておいてくれると助かる。あと初回入荷分の特典ぐらいは満数ほしい。矢面に立たされるのは書店員なのだ。
おかげで開店前は自分の棚をまったく見られなかった。大雨警報が発令されたとは