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花言葉はソラシド(⒈藤の酔う恋)
『私たち、離婚しました』
友人夫婦が揃ってSNSに〈ご報告〉の投稿をした。紙切れに添えられたマリッジリング、普段ならば、ざっと目を通してスルーするような内容である。
一瞬、『結婚おめでとう!』が頭をよぎった。が、このカップルは別の道を歩むらしい(こんな真似をしなくてもいいものを)。
深夜アニメの放送に併せて、コンビニエンスストアで最も高価なアイスクリームの蓋を開ける。
午前の贅沢、ピンク
曖昧/A.M.【ただいまnote】
鶯の鳴き声で目が覚める。
夢現つのなか、まず壁時計に視線を向けた。
まだ余裕があると微睡む直前、出窓を覆うカーテンの隙間から光が差し込み、落ちた影が卓上に置いたペットボトルを幻のような琥珀色に染める。それが極めて美しく見え、身体を起こして近寄った。
あれ、昨夜はお茶を持ってきたっけ、などとぼんやり考えながら煌めきに触れる。
その正体がラベルレスのミネラルウォーターだと気付いても、しばらく魅せら
(1)在宅ストレンジロードムービー『ありもしないマトモだとか』
一昨年から姉と同居している。
こちらの大学卒業並びに就職後、年上の恋人と結ばれた彼女は順風満帆らしくたまにメッセージアプリで連絡を取った。
幸せそうに見えたが、やがて憔悴しきった顔で土砂降りの中、遠路遥々、関東へやって来て、すぐさま迎え入れる。しばらく身を寄せ、いつも通り明るく振る舞う姉が何とも痛々しくて離婚を条件に引っ越しを持ち掛けた。
非常に喜ぶも容易ではなかった道のり、残る傷跡、物音に怯え
(2)在宅ストレンジロードムービー『今日からは一味二味違う』
どうも寝付けない午前1時、居間にてスナック菓子片手にシリーズの映画を楽しむ姉と出会う。沈んだソファと大欠伸、寛ぎの極みはまるでトドのようだ。
幻想を抱くなどとんでもない、嫌という程、思い知らされる。
「やっぱ何度観ても面白いや。私もファンタジーの世界に住みたいな。」
「ここ出て行くなら来月分の家賃払ってね。」
「ヤダ。あの服かわいい。」
軽く遇らわれ、溜息を吐いて床に腰を下ろした。
台詞まで覚えて
(制服の群れにはぐれた少年少女) #薔薇
「あなたは、」
正面の椅子に座る、養護教諭が困ったような笑顔をこちらに向けながら口を開いた。
「見た目が良くて、勉強も割とできて、優しい家族や心配してくれる友達が居て、すごく恵まれているのよ。何が不満なの?今ちょっと躓いてしまっただけじゃない。」
それは麗らかな春の午後、眠気に襲われた一瞬の出来事である。しかし確実に投げられた言葉は私の胸に突き刺さった。
「…先生、何にも分かってないね。」
ま
(制服の群れにはぐれた少年少女) #蜃気楼
いつの間にか自分の顔を嫌い、上手に笑えなくなり、おかげで小学生時代のわたしは大抵、表情が引きつっていた。運動会での一枚ばかりか修学旅行の集合写真でさえニコリともせず。
やがて中学校の先輩と会話中に手で口元を隠したところ、彼女から
「うららはなんか、お上品だね?」
と不思議そうに言われる。そのような訳ではなく、単に癖が付いただけだった。
当時を振り返ってプリクラを見ると、試行錯誤の末〈こうしたら写
(制服の群れにはぐれた少年少女) #砂糖菓子
料理やお菓子作りが好きな理由として〈レシピはしっかり食材とその分量などを教えてくれる〉という点を挙げることができる。
ただ何も考えずに従えばそれなりのものが完成するとは、私にとってどれだけ安心か。
加減が分からないような、桃の話を聞いて欲しい。
例えば定期テストの対策では綿密に計画を立て可能な限り机に向かった。よって勉強をしていないなどの(ありがちな)軽口を叩くクラスメイトの前で馬鹿正直に
「○
(制服の群れにはぐれた少年少女) #雨傘
都合のいいように使われる。
学級委員長?誰も手を挙げないなら僕がやろう。
どのみち、そういった〈面倒事を放っておけないタイプの鈴木〉に押し付けよう、など皆が考えているとは見抜けなかった。
ひとりぼっちの子には積極的に声を掛けて仲間に入れる。いつも広く浅い関係だった。
すると厄介者にまで好かれて、しかも先生から世話を任され、呆気に取られる。
明らかに傷付けられたこともあった。
お笑い芸人のいじりはプ
六畳半と"現"想曲 〜飾る仮面〜
〈方向性の違い〉によって解散した筈の、あの子から届いたメッセージを返せないまま
朝寝坊、天気予報は雨のち曇り、春愁と諸々を気圧の所為にして、揺蕩う、炭酸飲料で流し込むブランチ、穏やかな雫の音が心地好い、部屋干しのバンドTシャツ、間もなく降り止み、季節は巡る、横たわりフィクションへ誘われて、どこまでも旅に出た、浮遊、情緒の螺旋階段にて待ち合わせ、突然のノイズ、午睡から覚めて、相応しいプレイリスト