彩生透

「アヤキ/トオル」です。 フィクションをあなたに届ける ただの音楽好き(投稿は少しずつ)! はじめまして__いつもありがとう。 観る:聴く:読む:紡ぐ、もっと noteで多種多様な感性に触れたい。 無色透明の僕から極彩色へ 毎回姿を変えるかも知れません。

彩生透

「アヤキ/トオル」です。 フィクションをあなたに届ける ただの音楽好き(投稿は少しずつ)! はじめまして__いつもありがとう。 観る:聴く:読む:紡ぐ、もっと noteで多種多様な感性に触れたい。 無色透明の僕から極彩色へ 毎回姿を変えるかも知れません。

最近の記事

花言葉はソラシド(⒈藤の酔う恋)

『私たち、離婚しました』  友人夫婦が揃ってSNSに〈ご報告〉の投稿をした。紙切れに添えられたマリッジリング、普段ならば、ざっと目を通してスルーするような内容である。  一瞬、『結婚おめでとう!』が頭をよぎった。が、このカップルは別の道を歩むらしい(こんな真似をしなくてもいいものを)。  深夜アニメの放送に併せて、コンビニエンスストアで最も高価なアイスクリームの蓋を開ける。  午前の贅沢、ピンクとブルーの渦巻きを平たいスプーンで掬って、幸せの味とやらに首を傾げた。  チグ

    • 税込2,990円のワインレッド

       お気に入りのブーツで家を出て、階段をおりるなり、足元に違和感を覚えた。歩く度に何かがぶら下がっているような、そういった重みが突如、解消され、踊り場にて宙を舞う。  あたかもステージダイブの如しーー〈当会場〉でのモッシュ・ダイブは禁止ですーー重心が行方不明に、結局のところ、ぽろりと取れた物はごとん、ごん、ごっ、と鈍い音を立てながら見る間に落ちていく。  ヒールが折れた訳ではない、靴底の部分が丸ごと綺麗に剥がれ、爪先立ち状態が奇妙な笑いを連れて来る。ややバランスを崩すも、足

      • ちぎれた意図をたぐりよせ

        『久しぶり』『ラーメンでも食べに行きませんか』など、遠回しに「会いたい」とメッセージを送った。好きな人、正確には好きだった人に。  ここ最近、朝晩の急激な冷え込みで胸がずきんと痛むのを叶わなかった恋のせいにして、俺は再び深雪(みゆき)さんに擦り寄る。  新卒で入った映像制作会社を1年で辞め、故郷へ帰り、転職したはいいが、それ以来ロクな出会いがなく、生活の安定と引き換えに失った(多分)。  暇潰しにデータフォルダを眺めていたら、深雪さんとの写真がちらほら。思い返すだけで、か

        • 一雫で君が香る頃

           私の勤務先は駅前、商業施設の3階入り口付近だ。洋菓子を扱うチェーン店で、ハロウィンは肩透かしを食ったように思うが、この後に控えているクリスマスは間違いなく行列ができ、休む暇すら与えられないだろう。  それはさておき、同じ階に雑貨屋があり、休憩中に〈プチプラコスメ〉を探しに行くついでに、そこでアルバイトしている友人の顔を見ようとするも、本日は休みだった。 「なんか昨日、様子がちょっと変で。本人から何か聞いていませんか」 「いえ、初めて知りました。教えて下さりありがとうござ

        マガジン

        • CHAMELEON
          93本
        • REMEMBER
          13本
        • SURRENDER
          206本
        • DESTRUCTION
          201本

        記事

          だからこれは比喩【お知らせあり】

          筆を折るには相当な力が必要で。 とある小説の登場人物がいつまでも忘れられなくて内容を消される 考えているうちに最終回の始まり 全てがサビみたいな曲 メロディックな愛を欲しがるのにいつからストレートなラブソングを歌えなくなったんだっけ 「好きなの?」とか周りに聞かれて「うん」って答えたら「あいつ、こういうところあるよ」、だけど、そんなことじゃ怯まない、もう! 変わりたいで変われない自分が変わりゆく 初恋の子が『酒呑まんとやってられん』と投稿していた。持て余す感情、俺

          だからこれは比喩【お知らせあり】

          過ぎし日と不在票が宝物に変わるまで

           いつも同じ服で持ち物も少ない。何故なら鞄ひとつで逃げたからだ。  束縛に始まり、度重なる暴力を受けても「自分は愛されている」と思い込んで、感覚が麻痺していく。  そのうち心身共に限界を迎え、口がきけなくなり、そこでようやく追い詰められた状態に気付き、目が醒める。  元恋人・松実(まつざね)の隙を突いて、明け方にマンションを抜け出した。  あの日の冷たいながらも解放感に満ち溢れた空気を私は生涯、忘れられないだろう。  奪われた自由と本当の自分を取り戻すために新たな環境でが

          過ぎし日と不在票が宝物に変わるまで

          放課後を延長して口遊む

          【疲労感が踊る】 ステージのヒーローでいてね ライブ終わりの夜がまだまだ続けばいいな 1駅3分刻みのすみま線5号車で 再生する今日の強弱を胸に刻む 私服高校生の至福 【揺蕩い歌い】 返信待ちの女々しさ ビジネスライクに変身 予測変換を予測して ラブ寄りのライク伝わらない残念 ラブよりヘイト伝わりやすい無念 何でもショートのショートカット 短くまとめられた数々のムービー 「ソロは要らない」イントロも消えてゆく 間奏がなくなっても感想は残るのに カテゴライズやパーソナライズ お

          放課後を延長して口遊む

          最後の車で旅に出よう

           友人らに見栄を張るべく買ったブランドバッグが、使わないままボロボロになる。  通販サイトのセールでいざ手に入れたはいいが、部屋に飾り、4年半経ってみると、どうだ。  換気の風にさらされ、職業柄(現在は介護関係)ランチや飲み会を控えて過ごせば段々と疎遠に、寧ろバッグ云々より高校時代からの友情が長年、続いたことの方がすごかった。  ワタシには息子と娘がひとりずついる。  やっとそれぞれ巣立っていき、結婚には興味がないようで、当然まだ〈おばあちゃん〉ではなく、神経質な夫とふた

          最後の車で旅に出よう

          24時台の迷子

           心は近くとも物理的な距離が遠い恋人のため、毎月2回は高速バスで車中泊をしている。 大学生同士で、昨年〈リゾートバイト〉を通じて知り合い、彼女がこちらに来ることもあり、俺たちの関係は良好だ。    深夜のサービスエリアで休憩。一旦降りて、メッセージを読む(謎めいた『ぶな』だけの)。  さてはまた途中で眠りに落ちたのであろう、答えはきっと『無難』。  手元から視線を外し、明かりの方へ、てくてく歩いて行き、用を足して、ハッと気付く。  眼鏡を車内に忘れるばかりか、ナンバーすら

          24時台の迷子

          ((お菓子くなり想))

           5日前に見失った、あいつと不本意な同居をしていた。こう表すと誤解を招くだろう、訂正。『あいつ』とは飴玉のことである。  会社員ちなみに経理の萩谷(はぎや)が先週の買い出しでスーパーマーケットの新商品や限定品のコーナーから選んだ〈クリーミー・ステンドグラス・キャンディ〉がそれだった。  実に長たらしい名前の菓子とショッピングカートを押す人間。運命的な出会いでも何でもなく、強いて言えば萩谷はステンドグラスの線がとろけてランダムに垂れるような、パッケージのイメージ写真に心惹か

          ((お菓子くなり想))

          ドールハウスにて生まれる日

           未来行きの電車に乗り損ねて何度も〈今週〉を繰り返し、途方に暮れながら滑り込んだ頃には、当然だが、その分、歳を重ねており、どうにも間に合わない、と思った。  このように毎日は一瞬で永遠ではなく、だからこそ今後は限られた時間を大切にする。  甘すぎた生クリームが舌に絡まるなか、そう誓った。    ところが、誕生日を自分の人生における新章開始と捉えた場合ーー先月のまま捲っていない卓上カレンダーや止まってしまった電波時計、そして皆の「おめでとう」が詰まった幸福な宝石箱を失いーーたっ

          ドールハウスにて生まれる日

          心を映し出す鏡とは何ぞ

           喉まで出た言葉を探している。掴み掛けたところで目が覚める、大抵はうーんとうなされ、汗をびっしょりかいて。  しかし今朝の場合は違った。  夢の途中で〈ケークギャル・けいこ〉を見つけ、意味不明な響きが頭にこびりつく。  外出先は不慣れな都会ゆえに歩みが辿々しくなる。道端に寄れば木陰が揺れ、スマートフォンの道案内はでたらめの疑い、その横を幾人もが通り過ぎた。  すると、絞れる程に濡れたシャツを着て、暑さに参った様子の男性に街頭インタビューを申し込まれる。 「少しお時間よろし

          心を映し出す鏡とは何ぞ

          1stアルバムは律の調べ

          毎日お疲れさまです。最近の僕は虫の音に癒されています。季節の移ろいを感じ、そのような中で『心のセーブポイント・すきま時間に眺められる秋』を今回のテーマにしました。 撮影した写真や、それをもとに加工で作った画像に詩のような言葉を添えて。 (この後、順次みんなのフォトギャラリーに登録いたしますので、よろしければ小説をはじめ創作、または日記等あなたのnote内でご活用下さい) ● ○ ● ○ ● ○ 以下はCanvaの素材を組み合わせたものです。 初の試みでしたが、コラージ

          1stアルバムは律の調べ

          「失いたくない」が愛を物語る(後編)

           なかなか取りに来ないので、交換日記が6ページも埋まった(個人のノートと大差ない)。  職場の休憩室にテレビがあり、例のピグミーマーモセットが無事に捕獲されたとのニュースを見る。当然ながら野生ではなく。  大勢に愛でられて、随分とポエティックな名前がついたあれと正反対な彼に、どこか通ずるところを感じ、到頭おしまいだと私は覚悟を決めた。 『すまん、またシソを摘み食いしちまった。アマナツが作るもんは全部うまい。好きだ』  昼食の梅おにぎりによってヘビイチゴの文と乱雑な字を思い出

          「失いたくない」が愛を物語る(後編)

          「失いたくない」が愛を物語る(前編)

           一目で分かった。手の平に収まるような大きさ、ふさふさと生えた毛に覆われ、つぶらで賢そうな瞳、愛くるしい口元、尾は縞模様。  いつぞやの風変わりな恋人が出し抜けに「何のセット」と訊いてきて、半ば呆れながら解説するのにわざわざネットで調べたので、間違いない。  ピグミーマーモセットだ。  余程ぬいぐるみが動き出したのかと思ったが、チチッと鳴き、走り去る。  それで、心臓が宙に浮いたような感じがして 「今の。見た?」 を私は言えずに種を飲んでしまった。  縁側にて。近所の人

          「失いたくない」が愛を物語る(前編)

          待ち合わせはポエトリィ通りで

           まずは昨日の話をする。僕は道に迷いやすいが、まさかあれ程とは思わなかった。  大学の夏季休暇、ワンルームはサウナ状態である。そこに友人が『じいちゃんが送ってくれたメロンの残り食べる?』と果汁が滴るような写真付きのメッセージを寄越せば、必然的に家を飛び出して『今から行く』だろう。    小型の扇風機を持ち、シャツにデニム、駅を通って西口、地元の住民からは〈旧町〉と呼ばれるノスタルジックな辺りを歩き、コンビニエンスストアやスーパーマーケットを通り過ぎる。  病院及び薬局の角を

          待ち合わせはポエトリィ通りで