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本のこと

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読んだ本の感想です。
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#読書感想文

1分で大切なことを伝える技術/齋藤孝#69

1分で大切なことを伝える技術/齋藤孝#69

「聞かれたことに答える」という基本ができているか。

本書の目次に書かれてあるこの一文を読んで、ぎくっとした。
まず1分で大切なことを伝えられるかということは一旦置いて、この基本ができているかいないか。
結果、できていない。

本書を読んで、「聞かれたことに答えているか」ということに注意して人の話を聞いてみた。実際には、真っ当な受け答えができている人は意外と少ない。
私自身も、「あれ?私の話って質

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色の辞典/新井美樹#60

色の辞典/新井美樹#60

たしか、この本は熊本市内の長崎書店で購入したのだったと思う。

長崎書店は上通りというアーケード街にあり、置いてある本が芸術的なものが多いように思う。流行ものというより「こんな本あったんだ」という他の書店にはない品揃えで、つい長居してしまう。

その中でもこの「色の辞典」は、オシャレなカバーに窓が開けられていて、本体表紙の色鉛筆がのぞく仕様になっていたので思わず手にとった。

数ページめくると、「

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「点-ten-」「線-sen-」/宇多田ヒカル#45

「点-ten-」「線-sen-」/宇多田ヒカル#45

わたしが中学生の頃、ラジオから流れてきた時からすきな宇多田ヒカル。

わたしよりちょっと年上で、近所のお姉さんくらいの人がこんな曲を作るのかと衝撃的だった。

何よりわたしは宇多田ヒカルの声と歌詞がすきで、アルバムはすべて購入。

「初恋」が発売されたときには、コンサートの応募券が入っていたのでもちろん買った。妊娠中だったので結局行けなかったが、必ずいつかコンサートに行きたいと思っている。

たぶ

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もしも宮中晩餐会に招かれたら-至高のマナー学/渡辺誠#40

もしも宮中晩餐会に招かれたら-至高のマナー学/渡辺誠#40

いつでもOK!へいへい!早く菊の紋章入りの招待状カモーン!

読後、そんな気持ちにさせてくれる一冊がこの「もしも宮中晩餐会に招かれたら」である。

そもそもこの本に出会ったのは、結婚したての23歳の頃。
6つ歳上の夫が持っていた本で「これでいつでも宮中晩餐会に行ける、あなたも用意しておきなさい」とわたしにそっと手渡してくれた。
そんなくだらないやりとりをして読み進めると、わたしの知らない晩餐会の世

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たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く/石村博子#38

たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く/石村博子#38

本当にこんなことが可能なのだろうか?と思うほど、10歳の少年には過酷で、そして希望がある。

たった独りの引き揚げ隊の物語は、1945年の満洲から始まる。
同じく引き揚げの本はいくつか読んでおり、藤原ていの「流れる星は生きている」も感動する内容ではあるが、かなり悲惨な現実が描かれており読後は気分が落ち込む。
それは引き揚げの状況からして当然のことではあるのだが、この「たった独りの引き揚げ隊」は悲壮

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女の一生/遠藤周作#31

女の一生/遠藤周作#31

遠藤周作の作品に出会えたのは、わたしの人生の中で幸運なことだったように思う。

「女の一生」は「一部・キクの場合」と「二部・サチ子の場合」の二冊本で、それぞれ600ページ前後ある長編小説だが、18歳のときにあっという間に読み終えてしまった。
物語は長崎を舞台にしており、町名や場所の名前が随所に登場するので長崎人は必見の作品だといえる。

「一部・キクの場合」は、長崎の商家へ奉公に出てきた浦上の農家

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竹林はるか遠く/Yoko Kawashima Watkins#22

竹林はるか遠く/Yoko Kawashima Watkins#22

「竹林(たけばやし)はるか遠く 日本人少女ヨーコの戦争体験記」は、日系米国人作家のヨーコ・カワシマ・ワトキンズこと川島擁子が11歳の折、第二次世界大戦の終戦時に体験した羅南から京城(現在のソウル)、釜山を経て日本へ帰国するまでの体験記である。

朝鮮半島を縦断する決死の体験や、引揚げ後の壮絶な姿が描かれている。

1986年にアメリカで出版され、優良図書に選ばれたのち中学校用の教材として多くの学校

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贖罪/湊かなえ#19

東野圭吾、三浦しをん、宮部みゆき、そして湊かなえ。

どの作者も刊行されるとすぐに映画化、ドラマ化される人気作家である。

映画は割愛されている部分があるので原作でしか味わえない面白さが、本にはある。

湊かなえの代表作といえば映画化もされた松たか子主演の「告白」である。

—愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです—という教師の生徒への発言から始まり、教え子に復讐をす

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カネを積まれても使いたくない日本語/内館牧子#13

カネを積まれても使いたくない日本語/内館牧子#13

「カネを積まれても使いたくない」

タイトルからしてあまり品があるとは思えないが、一体どのような日本語のことを指しているんだという興味本位で手に取った。

内館牧子といえば、2000年に大阪府知事に就任した太田房江が、大相撲大阪場所での大阪府知事賞の贈呈を土俵上で希望したことを、日本相撲協会が相撲女人禁制の伝統を理由に拒否したことに関して一貫して協会側を指示したことでも記憶に新しい。

この本を手

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音楽は自由にする/坂本龍一#9

音楽は自由にする/坂本龍一#9

2009年、教授が約5年ぶりとなるコンサートツアーを行った。
当時わたしは長崎にいたので、もちろんコンサートのチケットはすぐに取った。
それに先駆けて発売されたのが、教授にとって初めてとなる半生を描いたこの自叙伝である。

コンサートではその熟練されたピアノ技巧と、洗練された音楽に感動した想いは今でも忘れることができない。

ピアノ2台を自動演奏を使って、丸2時間を一人で演奏するものだったが、オー

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臨機応答・変問自在/森博嗣#6

小説家であり工学博士、元名古屋大学助教授にしてミステリィ作家「森博嗣」。

「小説が売れに売れて大学で教員をするのが馬鹿らしくなって辞めた人だよ」

わたしの夫は、森博嗣をこう説明してくれた。ちなみに夫は森博嗣のファンである。

森氏も「金になることをしようと考えて小説を書いた」と、ある書籍にも書いている。

一風変わった彼が名古屋大学助教授の頃、学生に質問させることで出席をとり、その質問に自身が

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