贖罪/湊かなえ#19
東野圭吾、三浦しをん、宮部みゆき、そして湊かなえ。
どの作者も刊行されるとすぐに映画化、ドラマ化される人気作家である。
映画は割愛されている部分があるので原作でしか味わえない面白さが、本にはある。
湊かなえの代表作といえば映画化もされた松たか子主演の「告白」である。
—愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです—という教師の生徒への発言から始まり、教え子に復讐をする教師というテーマのもと、リアルな姿が描かれる。
「夜行観覧車」「Nのために」「往復書簡」などすべて読了したが「贖罪」も含め、湊かなえの作品は救われない話が多い。気持ちに余裕のない時に読むのはお勧めしない。
「贖罪」は15年前、静かな田舎町でひとりの女児が殺害されたところからはじまる。
直前まで一緒に遊んでいた4人の女の子は、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、なぜか顔を思い出せず、事件は迷宮入りとなる。
娘を喪った母親は彼女たちに言った。—あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい、と。
数年後、母親は娘を喪った街から引越すことになった際、事件に居合わせた13歳になった4人を呼び出しこのように発言した。母親も一人娘を喪ったことで精神的に不安定な状況だった故の発言で、次の日になればすぐに娘のことは忘れて生きていくのだと思っていた。しかし、感受性豊かな歳だった中学生の4人はその言葉(約束)に捕われ、負の連鎖が始まってしまう。
私が予想していたあらすじは、この4人が苦難を味わいながらも、協力または個人で犯人を探すといった流れを予想したが薄っぺらい物語ではない。
中学生の思春期という不安定な心の動きを、物語と結びつけていくところがこの作品の面白いところだと言える。
中学生という多感な時期に遭遇してしまったショッキングな事件は、彼女らの人生に大きな爪痕を残しその呪縛から逃れられないのだ。
湊かなえの作風として章ごとに語り手が変わるので、おそらく若い人にも読みやすいのも人気の一つと言える。
最後に待ち受けるどんでん返しもページをめくる毎に胸が高鳴る。また、映像化された作品は期待を裏切られることも多いが、映像化された彼女の作品は原作とは違った魅力がある。
自分にもし娘がいたとしたら、自分がこの中学生だったらと、登場人物のそれぞれの境遇に胸が締め付けられる作品である。