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もしも宮中晩餐会に招かれたら-至高のマナー学/渡辺誠#40

いつでもOK!へいへい!早く菊の紋章入りの招待状カモーン!

読後、そんな気持ちにさせてくれる一冊がこの「もしも宮中晩餐会に招かれたら」である。

そもそもこの本に出会ったのは、結婚したての23歳の頃。
6つ歳上の夫が持っていた本で「これでいつでも宮中晩餐会に行ける、あなたも用意しておきなさい」とわたしにそっと手渡してくれた。
そんなくだらないやりとりをして読み進めると、わたしの知らない晩餐会の世界にすっかりハマってしまった。

まず目次から良い。

ようこそ、夢の晩餐会へ と始まり、
I 菊の紋章入り招待状が舞い込んだ
Ⅱ いざ皇居へ
Ⅲ 宮中晩餐会が始まった
Ⅳ これが宮中の饗宴だ
Ⅴ 乾杯とスピーチ
Ⅵ マナーを愉しむ心

そして「ごきげんよう」で締め括られている。完璧な構成だ。

著者の渡辺誠氏は1948年東京生まれで、70年より宮内庁管理部大膳科に勤務され、東宮御所の主厨を経て、96年に退官されている。
マナーの専門家ではなく食文化を研究しており、26年余にわたって宮内庁に勤務しており、渡辺氏なりの見解でマナーが語られている。

なので、本の序章からマナーとは、というような書き出しではなく、菊の紋章入りの招待状が届いちゃった!服はどうする!?なんで呼ばれたの!?どんな人たちがくるの!?わー!パニック!と晩餐会に縁のない方たちに寄り添いユニークに語られているので、非常に読みやすい。

渡辺氏自身も、「動じずにスマートな対応ができるなんていうのは、幼少のみぎりからヨーロッパの寄宿学校で教育を受けたとでもいう経歴をお持ちの方くらいではあるまいか。」と綴っている。

それはたいていの日本人は、マナーや社交術というものを正式に教えてもらうことがないからだという。しかもそれを教わらなくても、困らない。

しかしながら、もしも宮中晩餐会に招かれて、世の中に出回っているマナー教則本や冠婚葬祭のマニュアル本を立ち読みしても、全く役に立たない、と途方に暮れるだろうと話は続く。

この本の良いところは、食におけるマナーが「こういう場面ではこうすべし」「こういうことはやってはいけない」という禁足や形式ではなく、食事そのものを愉しみ、食事をともにする人たちとのコミュニケーションを愉しむことができてこそ、真のマナーである、ということを大切にしてマナーが語られていることだ。

宮中晩餐会という異次元空間、夢のような世界に「招かれたい!」と思っている人も「全く関係のない話だ」と思っている人もこの世界を垣間見ることができる一冊だ。

我が家のポストに菊の紋章入りの招待状が届いていないか、本日も確認しようではあるまいか。
では、ごきげんよう。


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