どうすれば幸せを感じられる?逆境を乗り越える筋肉づくりとは(レジリエンスを高める工夫)
「まだ経験が少ないから自信が持てなくて…」
これは先日同僚との会話で出てきた言葉。新入社員やキャリア採用で新しい職場でスタートを切った人はなかなか自信を持ちにくいです。
先日、幸福感には自己効力感が大切だと整理しましたが、この一つ上の概念として最近よく耳にする「レジリエンス」という考え方があります。
このレジリエンスは自己効力感とどう関係があるのでしょうか。幸せに生きるヒントを探ります。
レジリエンスとは
「レジリエンス(Resilience)」の元々の意味は、「回復力、弾性」です。弾力のあるゴムタイヤを押しつぶしてもすぐに元の形に戻る、あるいは柳が強風に煽られて大きくしなっても、折れることなくしなやかに元に戻るような回復力のことです。
レジリエンス研究の第一人者であるペンシルベニア大学のカレン・ライビッチ博士によるとレジリエンスとは「逆境から素早く立ち直り、成長する能力」と定義しています。
日本人の馴染みのある言葉としては「打たれ強さ」「折れない心」「しなやかな心」などの表現がイメージがしやすいかもしれません。
随分昔から「ストレス社会」という言葉が浸透し、今ではコロナウィルスの影響もあって、誰もが高ストレス環境にいると言えます。
そんな中でも、日々仕事に取り組み課題解決をしながらも、心身ともに健康を維持していくためにはこのレジリエンスをいかに高めるかが重要なテーマです。
レジリエンスとは、いくつかの能力が複合的に組み合わさった概念です。先日整理した「自己効力感」もその一部です。その構造を見ていきましょう。
レジリエンス能力を構成する6つの要素
ライビッチ博士によると環境ではなく個人が育めるレジリエンスの心理的構成要素を以下の点を挙げています。6つの要素を詳しく見てみましょう。
1. 自己認識(Self-Awareness)
自分自身の感情や思考はもちろん、自分の強みや弱み、大切にしている価値観や人生の目標を正しく認識すること。
辛い境遇に立たされた時、まず自分の感情を正しく認識することです。例えそれがネガティブな感情でもそれを自覚する事が立ち直る上での始めの一歩です。
2. 自制心(Self-Regulation)
その時々の状況に応じて自分の感情や思考、行動を律すること、適切に制御することです。
3. 精神的敏捷性(Mental Agility)
物事を多面的に捉え、大局的な視点で対処することです。逆境に直面したとき、慌てふためいたり感情的になったりせず、冷静に本質的な原因を究明し、適切な解決策を講じて、迅速に対処すること。
4. 楽観性(Optimism)
未来はより良いものになる、良くすることが自分にはできるという確信を持つことです。
5. 自己効力感(Self-Efficacy)
自分で計画して自分で実行できる力。問題を解決に向けて、「自分はやればできる」という自信を持つこと。
自己効力感があれば、逆境に直面しても「ダメかもしれない」とネガティブにならずに、次の一歩を踏み出すことができます。結果、逆境に打ち勝てれば、自信はさらに強まり、また新たなチャレンジに向かうエネルギー源になります。
6. つながり(Connection)
他者とのつながり、関係。逆境に直面したとき、誰かがそばにいてくれるだけで救われたりするものです。支えてくれる他者がいることは、その人が持つ貴重な資源、財産と言えます。日頃から信頼できる仲間を作っておくことは、レジリエンスを高めることにつながります。
以上、6つの構成要素が関連しながらレジリエンスを形成しています。
レジリエンスの高め方
イローナ・ボニウェル博士によると4つ「I」でレジリエンスは高められると言います。これら4つの構成要素を、レジリエンスマッスルと呼んでいます。マッスルという言葉の通り、レジリエンスは筋肉のように鍛えられるという考え方です。
4つのレジリエンスマッスル
・I can(私は◯◯できる)
自分が過去に経験した困難な状況を思い出し、どのように乗り越えたか、その時の学びを思い出しましょう。自分の中にある隠れた財宝に気づけるかもしれません。
・I have(私には友人・知人がいる)
自分の周りの大切な人、お世話になった人を思い浮かべてみて下さい。きっと自分の持っている宝物に気づくはずです。
・I like(私は◯◯が好きだ)
自分の大切な人の写真や楽しかったことを考えましょう。わくわくして自分の中にある楽しむ力、ポジティブなマインドを感じる事ができます。
・I am(私は◯◯である)
自分の得意なこと、強みを考えてみましょう。また、自分の強みは自覚していない事も多いです。自分では当たり前でも、周りからすると異端な能力である方は多いです。周りの人にも「私の強みは何だと思いますか?」と質問するのも良いでしょう。自分でも気づかなかった自分の宝物を発見できるのかもしれません。
この4つの視点で自分という存在、自分が持っているものを客観的に理解する事で、逆境を乗り越える心の筋肉を身につける事ができます。
まとめ
レジリエンスとは「逆境から素早く立ち直り、成長する能力」のことです。強い風が吹いても柳のようにしなやかにしなり元に戻れる力強さのことを指します。
レジリエンスは個人の心理に関わるものとして、6つの構成要素が関連しながら構成されています。逆境に遭遇したとき、これらの要素をうまく組み合わせて、柔軟に対処し、素早く立ち直ることが、レジリエンスの基本となります。
これらを意識する事で、逆境に立たされた時もポジティブにはね返すマインドセットを持つことができます。
そして、このレジリエンスは程度の大小はあれど、誰もが内に秘めた能力だと思います。なぜなら、どんな人でも人生を振り返ればいろいろな逆境を乗り越えて今、ここに生きているからです。
自分では意識していなくてもこれまでの人生でレジリエンスの力を発揮してきたということであり、身に付けてきた事でもあります。
実は既に宝物を手にしていて、それに気付いてないだけなのかもしれません。4つの「I」でその眠っているレジリエンスマッスルを目覚めさせることで、より強くタフに生きていくメンタリティを手に入れられるのではないでしょうか。
さらに、そのレジリエンスマッスルは今以上に鍛えることもできます。先行き不透明な今、改めて自分の内面に意識を向け、自分を信じる力を身に付けていきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。