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【時は笑うとき】 ペらぽう日記Ver.00\1ns
ある日…哲学者と助手が
「今とは何か?正しい未来と過去とは?」
について語り合っていた。
「先生…未来って何もしてないのに期待されてたり
不安がられたりして…ちょっとかわいそうじゃないですか?」
「なるほど。確かに未来には何の責任もない。
人間は勝手に希望を持つそして勝手に恐れているな。」
「そうですよ!未来からしたら『いやいや!まだ俺何も決めてないんだけど!?』って感じですよ!」
「ふむ…どうも…なかなかむずかしいことを言うな。カントの時間の先験的な形に鑑みれば『時間とは人間の認識の経験にすぎない』本当に『未来』というものが存在するのかも不明だ。それにもかかわらず…我々はそれを確実に未来はやってくる前提で扱っている。未来からすればはた迷惑な話だな。」
得意げに助手と哲学者が語っていると——
「待って待って待って!未来の話ばかりするな!!」
突然どこからともなく怒鳴り声が響いた。
「……誰?」
「私は過去だ!!」
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過去の主張:「私こそがすべてだ!」
「お前ら未来の話ばかりしているが…すべての原因と結果を繰り返しているのは…この私だ!」
「でも過去さん…あなたはもう済んでいるから変えられないですよね?」
「変えないことが偉大なのだ!!」
「なるほど。アリストテレの目的論によれば…ものごとの本質はその原因と結果にある。つまり…我々が今こうして話をしているのは『すべて過去があったため……』ということだと。」
「その通り! 私がいたからお前たちも存在する! そして私の存在は確定している。そこで私は揺らぎのない真実なのだ!!」
「でも過去さん!ニーチェの永劫回帰によれば
永劫的な繰り返し…この世界は全てのものがまったく同じように永遠にくり返すと考えていますよね?」
「うむ。過去から見れば君ら『終わらない』存在なのかもしれぬ?」
「と、とにかく!過去がいなければ未来も現在も存在しないのだから私が最強なのだ!!」
すると…別の声が響いた。
「おいおい勝手に威張るなよ!」
「今度は誰だ!?」
「私だ!現在だ!!」
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現在の主張:「今こそが全てだ!」
「お前たち未来とか…過去とか好き勝手に言っておるが…実際に行動しているのはこの私!現在なんだぞ!シンプルに俺を評価しろ!」
「でも現在さん…あなたは一瞬であちらの過去さんに変身しますよね?」
「だから私はかなりレアなのだ!貴重であり生な存在だ!!」
哲学者はニヤリと笑いフッサールの現象学的時間論を持ち出す。
「フッサールは時制の認識も『自己の“主観的な確信”である』と考えています。 その生活世界が自分に立ち現われてくる「確信成立の条件と構造」を問うて明らかにする行為を現象学的還元だと!」
「そうだろう?未来がどうなるかなんて誰にもわからない。過去だってもう変えられない。だったら今こそがすべて!だからもっと私を大切にしろ!」
すると…また新たな声が響いていた。
「ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇ!!」
「今度は誰だ!?」
「私は!未来だ!!」
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未来の主張:「勝手に私を決めるな!」
「お前たち、勝手に私のことを語りすぎだろ!! 私はまだ何も決まってないのにどうして期待されたり…不安がられたり…耐えられたりするんだよ!」
「ベルクソンの持続の哲学によれば…未来とは現在継続によって無限に変化するもの。確かに未来は未確定な存在です。」
「こら助手!わかったような顔で断定するな!
私には何の責任もない!未確定は誰かの責任に帰趨するのか?
結果は未確定でも不存在でもない…未来があるという明確な根拠なんてどこにも存在しない…かもしれない…知らんけど。それなのに『未来は明るい』とか『未来は不安だ』とか勝手に思い込むからややこしくなる!」
「じゃあ未来さんはなぜ?ここにいるんですか?」
「ん…うぐぐ…」
「あなたは俺の後釜として存在しているんだ! 現在の私なくしてはお前さんも存在しない!」
「君らが不確定だから過去の私が色々と詮索されたり、ほじくり返されたり
あるいは捏造されたりするんだ。私がめちゃくちゃ忙しいのは正しい過去を証明するためなんだぞ!!」
「みなさんいい加減にもめるのはやめましょう!!」
哲学者はさらに続けた
助手と現在・過去・未来は顔を見合わせた。
「これじゃ収拾つきませんね?」
「知らんよ……っていうか…これって未来が解決する問題じゃないのか?」
「おい!なんでも後回しにして私を煩わせるな!!」
「どうせ未来だっていずれは俺と同じ過去になって『あの時はこうすれば良かった』とか言うんだろ?だから過去はたまる一方でへりゃしない!お前らの御託はもう聞き飽きたくないわ!」
「よし俺が責任をとる今!この瞬間に決めろ!!」
「それもすぐに過去になる!
じゃあこうしよう。みんなで笑おう!」
哲学者・助手・過去・現在「えっ?」
「だって笑った瞬間は現在!それは過去にもなり…未来の笑いのタネにもなるんじゃない。」
「……確かに!!」
「ハハハハハ!!」
過去「おお私の中に新しい笑いがやってきた!」
未来「まだ何も決まってないのに…笑いはつながるのかぁ!」
現在「結局…時制なんてどうでもいいんじゃないか?」
「悩み事なんて笑い飛ばせば過去になるのか?」
とりあえず時制大論争は
最後に笑いとともに幕を閉じた。
そして未来も過去も現在もまだ笑っていた。
本当かどうかは知らんけど。
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