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カカオ産業の過去・現在・未来を全力解説する。
つい先日のこと。ニューヨーク市場で、カカオ豆の先物価格が、1トンあたり1万ドルに達した。やば。
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すぐに読み終わるようなニュース記事には、このぐらいの情報しか書かれていない。↓
原因は、コートジボワールやガーナの天候不順などによる、生産量の減少である。
「など」の一言で片づけられてしまっている。
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先ほどのグラフを見て、本当に悪天候が原因なのかと、疑問に思うだろう。当然だ。そりゃ世界中が異常気象だけれど・だからこそ、今だけなの?と、モヤるはずだ。
相変わらず長くなると思うが、解説していく。
ごく短くて・嘘ではないが真実でもない情報を好む人は、私の文章とは相性が悪いと思う。ここでさよならしよう。残りの人、がんばって読んで。
全体を理解するためには、まず、カカオの基本的なことを知る必要がある。
・カカオは、熱帯気候でしか育たない。
・カカオの木が果実をみのらせるのに必要なのは、やや酸性で水はけのよい土壌、規則的な降雨、高い湿度である。
・カカオは光に敏感なため、特にはじめの内は、日陰で栽培しなければならない。
・カカオの収穫は、おいそれと機械化や自動化できるものではない。
日陰で栽培する = 他の大きい木の下で栽培する。長年、この方法が用いられてきた。
安定するまで他の木の陰で育てる必要があるということは、カカオが、単一作物として広大な面積で一挙に栽培するのに、不向きな植物であることを意味する。
他の熱帯性商品作物(バナナやコーヒーやカシューナッツ)とは、わけが違うのだ。
言いかえると。バナナのような大木と「混栽する」には、適している。そういった植物の片手間に栽培するには、適している。
理論的にはこう。だが、実際は、ついでに〜といえるほど簡単なことではない。
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以下で、説明していく。
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この高い木の下にカカオの若木がある。
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まず、カカオ豆から苗を育てる。日光が当たりすぎないようにしつつ、毎日水を与える。ある程度育ったら、森林に植えかえる。そう、大木の近くにだ。さらに3~5年間、育て続ける。
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そうしてやっと、花が咲くのだが。受粉して実になるのは、ほんの一部だけ。具体的な結実率は1%未満。
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思い出すんだ。夏休みの朝顔を育てる宿題を。1ヶ月たらずの世話でも、手間がかかったはず。少なくとも、真夏にほっといても育つなんてことは、なかったはず。
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これが熟したカカオポッドだ。中につまっている20~60ほどの種子が、カカオ豆になる。
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やっとここまできた。
言わずもがな。この先にまだまだ、長い道のりがある。文字数がいきすぎるため、もう書いていられないくらい。
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チョコレートを食べれることが、ありがたくなってきたはず。最後まで読むと、あと10倍ありがたくなるはず。
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いや、本当に、ありがたい。大変そうだ……。
次は歴史。大筋だけでもわからないと、今回の話がピンとこない。
カカオノキの学名 Theobroma は、ギリシャ語で、神々(theos)の食べ物(broma)。
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マヤやアステカにおいて、カカオ豆は、飲料・神への供物・貨幣だった。
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コロンブスの第4次航海にて。彼は、現在のホンジュラス付近で、カカオの種子を入手した。スペインへもち帰った。ところが、用途がわからず。誰も、その価値に気づかなかった。
西洋人は、アステカで、はじめてカカオの利用法を知った(コンキスタドールの時か)。それ以降、熱帯気候の島々で率先して、カカオを栽培するようになった。
砂糖や香辛料を加えたショコラトルが、上流階級で、大人気になったからだ。あのあまいやつまた食べたーい!となったのだろう。甘味には中毒性があるし。
この回(シリーズになっている)はおもしろい自信がある。今回で書ききれない部分。読んでみて。
19世紀半ば。木々に病気が蔓延し、中米でのカカオの生産が激減した。アフリカが、うってかわって、生産の主体となった。例)英国が、現在の赤道ギニアで、カカオのプランテーション経営をはじめた。
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余談。
歴史は繰り返すか。今のコートジボワールやガーナの状況が続くなら、我こそはと名乗りをあげる国が、複数出るかもしれない。 インドネシアから輸入したカカオを加工して輸出している、マレーシアなど。
現在のガーナには、テテ・クワシが、カカオを導入した。象牙海岸(現在のコートジボワール)には、フランス人が、カカオ栽培を発達させた。
ヨーロッパの人々の一部は、この時の概念や価値観をそのままスライドして、現代でももっているのではないか。搾取する/搾取される構造を、そんなの当たり前だろくらいに思っているのではないか。
基礎的な話は、このくらいで、もういいだろう。ここから徐々に、本題にふれていく。
カカオの生産には、“奴隷” が多く使われてきた。古くはアジア系のクーリーが、最近では西アフリカの児童が、労働力にされている。
2001年。最悪の形態での児童労働を禁じるための議定書が、米国連邦議会とチョコレート製造業者協会の間で、締結された。
しかし。コートジボワールのカカオ農場の9割は、その後も、児童労働を続けた。
児童労働に関しては、個人的には、本人たちに直接聞いてみないとわからないところはあるのかなと。個別性が高いのかなと。そのように思う。
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所詮、1枚の写真にすぎないが。
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夢があるかとか。あるとしたらどんな夢かとか。
一方、チョコレート・メーカーなどに有利な、低すぎる価格が設定されていること。これは、まぎれもない事実である。そして、明らかに問題である。
2019年。ガーナの大統領が、アフリカへの投資フォーラムで、カカオ豆生産農家への見返りが少ないことをアピールした。
「チョコレート産業は1000億ドル規模だが、農家らが労働とひきかえに手にする額は、60億ドルに満たない」
他人の不幸は蜜の味ならぬ、他人の不幸はカカオの香り。
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グリーン・ガー⚫。カラダにも地球にも。魔法の言葉グリーンと、カラダにも地球にも……よいとは言わない部分が、見どころのCMだ。笑
チョコレート製品はもっと高くていい。ただし、条件がある。生産者に利益が行きわたることだ。
(以後、買い上げ制度ができた、ガーナなど一部の国をのぞいて)価格の主導権は、ニューヨークやロンドンの商品先物市場による、国際相場がにぎっている。
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今回は、かつてない様相を呈しているが。今までも、価格が安定しているとは言いがたかった。
生産者からしたら、きっと、漠然と嫌だろう。
お客さんのリアルな評価で、おいしい/まずいと言われたり、売れたり/売れなかったりするのならいいけれど。そういうのじゃない、もてあそばれてるような感じがして。
ちなみに。カカオ先物市場の内、現物のやりとりがあるのは5%程にすぎず。現実に存在する量の7~9倍が、取引きされている。
ロイターが、こんなインタビュー記事を出していた。
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このガーナの女性のカカオ農園(カカオ生産の中心地にある)には、6000本のカカオの木が植えてあったのに、無事なのは今12本だけだという。
ロイターが、農家や専門家や業界関係者に取材したところ。気候がおかしいこと以外に、違法な金採掘の横行・業界の運営ミス・カカオの木の病気、これらが重なって現状にいたるのだそう。
やはり、全部〇〇のせい方式ではなかったようだ。
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2023年、彼女のカカオ農園に、ゴールドの違法採掘業者がやってきた。そいつらは、ブルドーザーで勝手に、カカオの木を掘り返し出した。
やば。
こんなことが、複数の農家で起こった。
警察と政府のカカオ関連委員会に助けを求めても、何の反応もなかった。
農園主の中には、こういう人もいると。
カカオ、苦労して育てるわりにぜんぜん儲からない。採れる量も年々少なくなってるし。天地に恥じない。違法採掘者がきたら、俺は、農園を売る交渉をはじめるね。無駄な抵抗の代わりに。
『ブラッド・ダイヤモンド』を彷彿とさせる。
私はこの作品の大ファンだ。
内容もさることながら、主役も準主役もヒロインも、大変素晴らしく。ディカプリオ氏、なまり英語はリアルでうまいし、ブッシュからとびだして敵を撃つシーンは圧巻だ。「T.I.A.」(This is Africa.)のシーンも忘れられない。
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何度観ても泣いてしまう。いい男すぎて。
通話の途中、ただならぬ様子に気づいたヒロインは、涙声で「わかった。私今すぐあなたのもとに行くから。どこにいるか教えて」と言う。一緒にいろんなことを経験した男が、はじめて、君は俺にとって特別なひとだったーーなんてことを明かしてくるから。
生まれた環境を呪い続けた男が、最期は雄大な景色を眺め赤土に触れながら、誇らしげに散ってゆく。人生とは、どこで生を受けたかではなく、どう生きたかということである。この作品は、そんなことを私たちに伝えてくれる。
ヒロインは、主人公の生き様を無駄にせず、きっちりと彼の仇をとった。
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話を元に戻す。
ロイターは、さらに、独占入手した情報があると言っている。
ガーナの政府機関「ココア委員会」は、ガーナ中のカカオがカカオ膨梢ウイルスに感染していると、見ているのだと。
このウイルスがコートジボワールでも拡がりはじめている、とも書いてあった。風にも虫にも、国境なんか関係ないからね。これが本当ならだが。ガーナ・コートジボワール間の蔓延は、防ぎようがないのではないか。
ココア委員会も、運営資金不足で。数年前から、肥料や農薬の配布を停止していた。
病気が蔓延してしまう土台は、とっくに、整っていたのかもしれない。
気候の変化によるダメージも、決して、嘘松ではない。夏が年々暑くなっていってることを認めない日本人なんて、いない。有名な砂漠地帯の最新の写真は、二度見するほど緑が多い。アフリカだけ何もないわけがない。
株高を背景に、投機マネーの流入が、価格をつり上げている可能性もある。ゴールドとカカオでいこうとか?。
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アグロ・テロリズム = 農業テロリズムの話をする。
Wikiにある定義はこうだ。
植物または動物の病原体を悪意をもって使用し、農業部門に壊滅的な病気をひき起こすことによって、ある集団の農業や食糧供給システムを混乱させたり破壊したりしようとする試み。
国家的/国際的な利益をいちじるしく損なう。
生物戦・化学戦・昆虫戦の概念と、密接に関連する。
この言葉から、アグロ・セキュリティーという言葉も、生まれた。
最も可能性が高いバイオ・テロのシナリオの、主要な登場キャラクターは、昆虫だろう。
製剤などを用いるよりも、昆虫の方が、効果的に思える。昆虫の卵など、発見されることなく、容易に送りこむことができる。日々行われている、輸出入を通して。
ブラジルであった、アグロ・テロリズム疑惑について。
1989年まで、世界で2番目に重要なカカオ生産地は、ブラジル北東部のバイーア州だった。
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そこで、天狗巣病/魔女のほうき病というものが発生した。
天狗巣病/魔女のほうき病は、枝が異常に密生する奇形症状を示す、植物病害である。
高い木の上に巣のような形ができるため、こんな名前がついた。
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天狗かどうかはさておき。たしかに巣みたいだ。
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アグロ・テロリズム疑惑。この病気の導入には、政治的な動機があったのか。
こんな話をするのなら、特に、しっかりと書いていかねばならない。
バイーア中のカカオポッドが腐り、当時、20万人以上が職を失った。彼ら彼女らは、仕事を求め、近隣の都市へと移動した。貧困と人口過密から治安が悪化し、都市部で犯罪が多発するようになった。
ブラジルは、暴力犯罪が多い国として、知られている。サンパウロ、リオデジャネイロ、サルバドール、ベロオリゾンテなど。
改めて、世界で最も危険な都市ランキングを見てみた(2023年版)。10位内に、ブラジルの都市が2ヶ所入っていた。
ある歴史家は、ブラジルがこのような国になったのはカカオの崩壊が直接の原因であるーーとまで、言いきっている。
本当に、ほうきに乗っていた魔女がいたのか。いたとしたら、誰だったのか。
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『Molecular Plant Pathology』に、2008年に掲載された論文、「Moniliophthora perniciosa, the causal agent of witch' broom disease of cacao」によると。
このカビは、カカオと同じく、アマゾンではじめに発生した。この菌は、感染 → 緑色ほうき病 → 壊死 → 乾燥ほうき病 → 胞子形成の5段階で、樹木を死にいたらしめる。
植物消毒・化学的防除・遺伝的抵抗性・生物学的防除によって、この病気の防除をこころみたが、その結果はまちまちであった。
そもそも。これらの対策を複数~全てこうじることは、あまりにもコストがかさむため、妥当なものとは思えない。
そうなると、残された現実的な手段は、抵抗性品種を見つけることである。
ペルー産の SCA6 と SCA12 は、高い抵抗性をもつ。だが、ある場所で抵抗性をもつクローンが、別の場所でも抵抗性をもつとは限らない。
政府は、これらと並行して、病気の侵入経路の調査も行った。河川のような自然の境界線ではなく、農場の真ん中に出現したのだから、そこを主に評価することになったのだが。
1989年の第一次発生報告では、この病気の発生は自然拡散の要因に帰することはできないと、そう結論づけられた。
2006年に、左派の労働者党支持者の告白が、また別の雑誌に載った。
計画を立てたのは、ブラジルのカカオ産地を管轄する、政府農業機関だと。カカオエイラ農園実行委員会。計画は、そこに勤務する人物からもたらされたのだと。
カカオを病気にする。→ カカオの商売をつぶす。→ 裕福な地主たちが権力を失う。→ 地域が不安定になる。→ 抑圧されていた下層階級が「その日をむかえる」ことができる。
最後のは、Xデイみたいなことね。革命前夜みたいな話ね。正直、??? という感じである。
私が、わかりやすいように、もっと長く・もっとかたく書かれた英文をサマリーしているのだが。簡素化して書き表してみてよかった。バカバカしさが伝わりやすくなった。
たまたまだが。前回の内容とも関連性がある。
ちなみに。
SNSで、この話をもとに、怒り心頭に発していた人たちを見かけた。だから左派は/右派はダメなんだとか。ダメなのは、他の誰でもない、その人たちだ。
90年代に起きた出来事。それをまとめた15年程前の情報。それを部分的に摂取した、もしくは、不正確なサマリーをした誰かの文章。
最後のものだけを読んでキレるような人たちが、残念ながら、少なからず存在する。
この件でハッキリとした黒幕をあげている文章があれば、それは誤りだ。
私が「正しい解説」をする。私のリサーチのレベルは、こんなぐらいでは、普通だ。誤情報をかこむ人らのそれが、低すぎるだけだ。
告白者は、自分が、農園に病気をもちこむ手助けをしたと語った。黒幕の一員だったと自称する男は、続けて、こうも語った。
アマゾンの熱帯雨林からバイーアまで、バスで、病気にかかった枝を運んだんだ。
フィールド・ワークをしていると言えば、どんな農園にも、簡単に入ることができたよ。
感染した枝をカカオの幹にくくりつけて、立ち去った。
することはそれだけだったのだから、正直、罪悪感も抵抗感もうすかった。
後は全て、風がうまくやってくれたーー。
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なかなかどうして、聞かせる話し方をするじゃあないか。
この男は、十中八九、嘘をついている。
しかしだ。素通りしてはいけない要素が、彼の話の中にはある。嘘(おそらく)の中の真実の部分だ。
大規模農園の所有者は、カカオで一攫千金組は、農園で働く一般労働者から恨まれていた可能性がある。
私が調べた中では、アキノ氏という女性にされた取材が詳しく、参考になった。
ブラジルのカカオ農家が集団不況におちいるより、 約100年前のこと。バイーア地方にカカオ栽培の伝統を築いたのは、彼女の親戚だった。一族は、巨万の富を得た。
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幼い頃を農園ですごした彼女は、カカオ財閥 (?) 転落の一部始終を目の当たりにした。
田舎には、水道も電気も何もなかった、80年代に。「私は、具合が悪ければいつでも、サルバドールかサンパウロの病院を受診できていた。サルバドールの大きなアパートに住み、私も弟も、私立学校に通っていた。私は、10代で車を所有していた。弟は、ブラジルで最高の大学に進学しカリフォルニアへ留学もした」。
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労働者は、読み書きすら、まともにできなかった。契約書や給与明細を読めず。了承(了承もなにも読めていないが)にはサインでなく拇印をしていた。
ジョルジェ・アマード。Prémio Camões を受賞したことがある、ブラジルの作家だ。
アルファベット表記もカタカナ表記も、よくない。実際の音は、ホルヒェ・アマドに近い。
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Pronounce Names .com という、素晴らしいものがある。著名な人物の名前を、彼ら彼女らが「生まれた時に呼ばれたサウンド」で、教えてくれる。そのためだけに、存在するもの。好き。
彼は、『黄金の収穫』の中で、以下のように書いている。
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「カカオ畑は、仕事場であり家であり庭であり映画館であり、墓地でもある」「労働者たちの足は風変わりだ。カカオの樹皮や殻がへばりついて、決してはがれず。まるで木の幹のようだ」
うまい。奴隷のように土地にしばられ、出ていくことができない。そんな労働者たちの苦しみを、そこに根づくカカオの木々に喩えている。
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政府は遠い存在だった。インフラはごくわずかだった。
プランテーションの所有者は、仮の政府のような役割を果たしていた。少なくとも、本人たちは、そのつもりだった。たとえ、影では恨まれていたとしても。
アキノ氏の父親も含めた多くの農園主が、従業員に対して、正しい行いをしようとしていたという。
ずっと赤裸々に語ってくれた彼女が、ここだけ真っ赤な嘘をついているとは、思いがたい。実録もある。
彼女の親の農園には、労働者のために建てられた8軒の家々があった。農園内に、学校まであった。
裕福だったのはたしか。けれど、私たちは悪人ではなかったと。政府が定めた最低賃金が、相当に低かった。多くの雇用主は、その規定にそって、給料を支払ってしまっていたと。
なるほど。とても納得した。
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現代社会の自分たちにあてはめて考えても、そうなってしまうだろうことは、イメージできる。たしかに、これを悪人と呼ぶのは違うな。
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コナンくんはいい人だし、作品の主旨はわかるため、これはいい言葉だと思うのだが。
真逆の「真実は1つじゃない」も、同じくらい大切な言葉だなと。改めて、感じる。
カカオエイラ農園実行委員会は、これまで、問題への関与を一貫して否定してきた。やまない質問や取材にも、応じてきた。
真犯人?冗談じゃない。我々はむしろ、被害者の方だと。病気への対応で、カカオ農業を維持するために進行していた、他の科学プロジェクトを全て中止することになったそうだ。
名前を出された人たちがちょうど、軒並み、政府高官などの重役についた。中には、イタブーナ市の市長に、当選・後に再選された者もいた。
このあたりに、即座にきな臭さを感じたり・安易な連想ゲームをはじめたりする人が、いるのかもしれない。主に部外者に、そういう癖があるのではないか。
市長に複数回なったこと。これは、(当事者らには)告発者を信じない人が多いということの、表れとも言えるだろう。
(この市長さんが、取材申込みに、「やましいことなどない。なんでも聞いてくれ👍🏻」と絵文字入りで返していた記録を見た。全くびびってなかった)
ガーナやコートジボワールの政府が、ブラジルの経済を妨害しようとしていたのではないかーーなどという説もあるそうだ。
前述した、アグロ・テロリズムの話を思い出してほしい。
結局のところ。
今でも、ブラジルのカカオをおそった、天狗巣病/魔女のほうき病の真相はわかっていない。
私たちにはわからない。
これが「正しい答え」「正しい情報」である。
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政府は、感染した農園を焼きはらい、除草剤をまいた。真犯人だと名指しされた機関は、病気の原因菌と競合する菌を研究した。空港や国境は、検査所をもうけ、病気が外国に伝染らないように努めてきた。
感染した木々を切り倒し、樹冠を全体的に下げるようにという指示だけは、悪手だった。
約250年間、ブラジルは、カブルカ・システム = 大木の陰でカカオを栽培することを続けてきた。国連・持続可能な開発会議で、真に持続可能なものとして発表された、唯一のカカオ生産モデルもこれである。
結果が出るまでわからなかったのは、仕方ないが。樹冠を下げることは、菌類の蔓延を加速させてしまった。
絶望的な話ばかりではない。
暗い話でしめくくるのが嫌で、わざと書くわけではない。本当のことだ。
化学薬品で病気と戦う以外の方法。
より強い幹や、より厚い殻をもつ個体(木)。これを選りすぐり、交配を繰り返す。これにより、天狗や魔女に耐性をもつ強い個体が、ブラジルのカカオ農園で生まれはじめている。
あるチョコレート関連企業のトップが、現地を訪れ、このロー・テクニックっぷりに驚いた。
彼ら彼女らが、科学技術に頼ることなく(コストとパフォーマンスが見あわず頼れない)、マンパワー・絶え間ない努力・ド根性で、危機を乗り越えようとしていることにだ。
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![](https://assets.st-note.com/img/1711906562281-NBoIwrWfiI.png?width=1200)
強いオス木と強いメス木の交配。これは、ほうっておいても、いずれ自然に起こること。その時計を人力で早回しさせている。
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![](https://assets.st-note.com/img/1711906568541-DwsCQRN4Aa.png?width=1200)
大事なポイントだが。これは、遺伝子組み換えなどでは、決してない。
ブラジルにおけるカカオ栽培の起源、その一族の子孫であるアキノ氏は、大金をはたいて農園を買い戻した。
いくら没落したといっても、自分1人だけなら、何不自由なく余生をおくれただろうに。
「私は、悲しい物語を変えなければならない」
王の帰還という感じで、めちゃくちゃカッコイイ。
「以前は、砂糖たっぷりのネ⚫レのココア・パウダーを活用していた。そういうものではない、新しいものに、チャレンジしてみたい。一からつくるのは大変だが、新鮮な体験だ」
ブラジル産のカカオ豆を使いチョコレートをつくる、新世代のブラジル人職人の1人、バイアニ氏。彼の名前が入ったチョコレート店では、アキノ氏の農園で栽培されたカカオ豆が、使用されている。
実際に食べた人たちからは、ココナッツに似た風味を感じる・土の味がするなどの感想が、寄せられている。
そういう系統は苦手だ・演出されたうま味の方がいいという人も、いるだろう。でも、私は、食べてみたいと思った。
![](https://assets.st-note.com/img/1711964587654-fQI9mRj00a.jpg)
おまけ
expensive chocolate ?私が紹介するのはそんなものじゃない。extreme chocolate だ。
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18~19世紀、世界中のパティシエから切望されるカカオ源だったが、病気や交配で絶滅したと思われていた種がある。長い年月を経て、末裔の木(交雑してない)が発見された。その希少種を使用したチョコレート。
味に大差があろうが、顕著な見た目などしていない種だ。強いて言えば、花の香りに特徴があるのだそう。大勢で、嗅ぎまわり続けたりしたのか笑。To'ak ならやりかねない。
君はギネス記録のためかな。
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君は一から出直して。
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ゴールドとダイヤの値段で草。
邪道は画像も貼ってやらない。
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「今期、我々が皆さまにご提供するのは、50年物のコニャック樽で18ヶ月熟成させたダーク・チョコ・バーです」などと言い出す会社で。限界を超えるチョコレート会社と呼ばれている。
ていねいな言い方をするしかなかっただけで、イカレ集団と言いたかったのだと思う。笑
HPで価格を見て。こんな安いのからあるんだとびっくりすると思う。Shop All(日本語表示だと「全て購入」と訳されてしまうかも)から、JPYを選択して、見るのがオススメ。それぞれの製品に、細かい語りがなされていて、マッチするお酒が紹介されている。オシャだけど、チョコ・ヲタの勢いをすごく感じて、笑う。
しかも、なかなかよい会社だよ。
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だって。
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だって。