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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2022年10月の記事一覧

情報教員の不足に見る文科省の責任と制度改革の必要性

情報教員の不足に見る文科省の責任と制度改革の必要性

文科省が情報教員の不足に対し、改善計画を自治体に指示しているようです。

「情報Ⅰ」が共通テストの教科に加わることで、全国的な情報教員不足が深刻化しています。

学校によっては、常勤の担当者を確保できず他校と掛け持ちの非常勤の講師が対応する状況のようです。

共通テストの影響今回の発端は共通テストの教科科目として情報を導入したことです。

従来、「情報」は標準単位数が2単位(一週間の授業は2時間と

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「原因」と「責任」を切り分けられない人々

「原因」と「責任」を切り分けられない人々

いじめ問題に関する研究会などでよく出る言葉に

「いじめる側が悪いのであって、いじめられる側は悪くない」

というものがあります。

もちろん、この言葉や考え方は否定する気はさらさらないのですが、この言葉を勘違いしているケースが非常に多いように感じます。

それこそ、生徒や保護者だけでなく、教員やこうした言葉を発した研修講師でさえもです。

いじめる側が100%悪いことに異論はないいじめはもはや社

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インクルーシブ教育に関する国連の勧告と日本の入試制度改革

インクルーシブ教育に関する国連の勧告と日本の入試制度改革

先日、障害者教育に関して国連から勧告が出されています。

日本では障害者に関する教育は特別支援学校の枠で行われてきました。

しかし、欧米ではインクルーシブ教育と言われる健常者とともに学ぶスタイルが一般的となっています。

そして、日本のそうした政策が障害者と健常者の分断を生み、ともに学ぶ権利を侵害している、というのが国連の勧告の主な内容です。

ここでは高校や大学制度とインクルーシブ教育、特に知

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不審者侵入に対し、学校現場はどう対応するか

不審者侵入に対し、学校現場はどう対応するか

先日、大阪府の小学校で不審者が侵入し暴れるという事件が発生しました。

大阪府の不審者侵入事件と言えば、大阪教育大学附属池田小の痛ましい事件を思い出します。

非常に痛ましい事件で、印象深いのですがもう20年以上前の事件になるんですね。

今回の事件の顛末今回の事件は大阪市鶴見区の小学校で発生しました。

10月24日の午前8時45分ごろに50代の男性が校門のインターホンを鳴らし「忘れ物を届けにき

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スピーキング試験を導入する都立高校入試の問題点

スピーキング試験を導入する都立高校入試の問題点

本年度より、都立高校入試において英語のスピーキング試験が導入されるようです。

「ESAT-J(イーサット・ジェイ)」と呼ばれるこの試験はベネッセコーポレーションが実施するもので、タブレットを用いてそこに話しかける形式で行われます。

時期的な問題そもそもこの試験の導入が決定したの1年前という短期間での導入決定となったことで、情報や試験の要領がわからないままに1か月前となってしまいました。

これ

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群馬大学医学部の「3分の1が留年」問題について

群馬大学の医学部のアカハラが話題になっています。

どうやら医学部の教授が厳しい単位認定を行い、その結果学年の3分の1の学生の留年が確定しているということです。

医学科は「必修単位を落とす=留年」の可能性が高い医学部、特に医学科の場合、1つでも単位を落とすことは留年につながる可能性が他学部と比較して非常に高いことは有名です。

実習時間を確保するために、6年間で学ぶ内容を4年間に押し込んだカリキ

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相手の信仰する宗教を尋ねる行為とそれ許し、育てた学校教育の暗部

相手の信仰する宗教を尋ねる行為とそれ許し、育てた学校教育の暗部

国会で打越議員が山際経済再生担当大臣に対し、統一教会の信徒であるかどうかを尋ねた行為が問題になっています。

大臣は答える必要はない、と言いつつも統一教会信者であることを否定をしていますが、

この質問に対して様々な評価があるようです。

そうした中でもよく見るのが、「問題がある宗教なのだから、公職である大臣が関与していないかを尋ねるのは当然だ。」とする意見です。

信教の自由日本国憲法第20条に

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教員採用試験の前倒しの効果はあるのか

教員採用試験の前倒しの効果はあるのか

教員不足が深刻化しつつあります。

私の住む九州は全国と比較しても教員不足が深刻な地域であり、すべての県の小学校の採用試験の倍率は1倍台となっています。
(県によっては実質倍率は1倍を切っているようです)

文科省の起死回生の一手はこれだ!!そうした中で、文科省の起死回生の一手がこれです。

文科省の原案では以下の2案が存在するようです。

5月に試験、8月に発表

4月に試験、7月から順次発表

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GIGAスクール3年目、ICT利用の持続化の分かれ目

GIGAスクール3年目、ICT利用の持続化の分かれ目

2020年、感染症拡大の懸念から全国一斉休校が実施されました。

その流れの中で、GIGAスクール構想の前倒しが決定され、日本中の小中学校にはタブレットPCなどのICT端末が配備され、ネット環境の整備が進みました。

こうした流れはICT普及の起爆剤となって、停滞していた日本のICT教育政策を一気に推し進める形になったわけです。

1、2年目は休校で、ICT機器の利用を余儀なくされた2020年の夏

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アンチ共通テスト派の抜けられない教科分断思考

アンチ共通テスト派の抜けられない教科分断思考

一昨年度から始まった、大学入学共通テストの内容に関して、批判的な発信が方々でなされています。

アンチ共通テスト派の主張その批判の内訳の大半は以下の内容に集約されます。

長い文章や前提条件で誤魔化して、教科の本質的な学力を問えていない

平均点が低すぎて、学力の差が表れていない

ここからさらに、令和7年度からの「情報Ⅰ」の導入に関しても、北海道大学や徳島大学が配点をなしにすることが話題になって

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全国学力テストの「行き過ぎた事前対策」は問題か。

全国学力テストの「行き過ぎた事前対策」は問題か。

小学6年生と中学3年生を対象に毎年実施されている全国学力テストを、平均順位を上げるために過去問対策などをしていた自治体や公立学校の教員などが問題になっています。

問題の石川県では、現場教員などに対して校長からの圧力があったという情報も寄せられているようです。

はたして、こうした対策に意味はあるのでしょうか。

高校で行われる「進研模試対策」その意味を考える前に、高校での話をまとめたいと思います

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行事は物足りないぐらいが丁度よい

行事は物足りないぐらいが丁度よい

本日、私の勤務校では体育祭が実施されました。

本当は先週に実施の予定だったのですが、あいにくの雨模様で延期となって、本日やや遅めの体育祭となったわけです。

とはいえ九州では日中の日差しはまだまだ強く、体調不良になった生徒も出たようです。

昨年度からの「新しい体育祭」コロナ禍の一年目、一昨年度はほとんどの行事を中止しました。

当然体育祭や文化祭といった大きめの行事はもちろんですが、集会などの

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宗教2世への相談体制充実を求める文科省からの通知に教育現場は対応可能か

宗教2世への相談体制充実を求める文科省からの通知に教育現場は対応可能か

安倍元総理の暗殺以降、宗教問題が何かと話題になっています。

とりわけ直接的な原因の一つとなった、旧統一教会に関しては世間の関心が高く、世論の後押しを受ける形で役所が重い腰を上げた報道が流れています。

文科省からは小中学校、高校へ宗教2世問題などに対して、宗教問題であることから消極的にならずに対応をするように通知があったようです。

学校は支援施設ではないこういった問題を考える場合、根本的な原則

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学力向上に一斉授業の効果は限定的だが、影響力を高めるスパイス

学力向上に一斉授業の効果は限定的だが、影響力を高めるスパイス

学力向上に関して、一斉型の講義授業の効果が低いということが問題になっています。

これに関する学術論文の有無は不明ですが、実感としてはかなり正しい印象を受けます。

特に大学入試などの試験で点数を取る能力の向上に関しては、動画授業、自学、質問対応に加えてコーチングや分析などの個別サポートが鉄則になりつつあります。

授業の存在意義はないのかでは、もはや一斉授業の存在意義はないのかというと、そうでは

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