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全国学力テストの「行き過ぎた事前対策」は問題か。
小学6年生と中学3年生を対象に毎年実施されている全国学力テストを、平均順位を上げるために過去問対策などをしていた自治体や公立学校の教員などが問題になっています。
問題の石川県では、現場教員などに対して校長からの圧力があったという情報も寄せられているようです。
はたして、こうした対策に意味はあるのでしょうか。
高校で行われる「進研模試対策」
その意味を考える前に、高校での話をまとめたいと思います。
私の勤務校などを含む普通高校においては、こうした過去問対策をすでに行っているようです。
ただし、全国学力テスト自体は高校生には存在しないため、代わりに特定の業者の模擬試験でそれが行われます。
その中でも、最も有名であり、多くの学校が採用しているものがベネッセの進研模試です。
この過去問を用いた対策を行っている学校は全国でも相当数に上るのではないでしょうか。
公的な試験ではないが、全国データの比較が可能
進研模試の平均点は一般には公開されていません。
しかし、ベネッセと模擬試験の実施を契約した学校には全国の進研模試参加学校の平均点や得点分布を確認することができるシステムに入れるようになります。
その結果は近隣校やライバル校など、他校比較が可能となるため、管理職や進路指導部からの圧力がかかるケースも多いようです。
模擬試験の「過去問」対策に意味はあるのか
模擬試験は現状の自分の実力を測る手段であるため、そのために対策をすることは意味がないという意見があります。
確かに現時点での学力測定という意味合いであれば、そうした対策をすることに意味はないですし、測定誤差を発生させる行動でもあるため、データの収集においては不適切な行動と言えます。
一方で、こうした模擬試験を入試の疑似体験と考えた場合どうでしょうか。
本番の試験に向けて過去問の分析をして、何度も解き直して学習するというのは定番のやり方です。
こうした学習スタイルを入試までに何度も疑似体験させるという意味では、非常に有効な学習方法と言えます。
しかし、まれに模試対策の中で次の模試の内容を事前に確認し、重点的に授業で指導する学校が存在するようです。
この場合は全く意味のない得点、番数競争に勝つためだけの無意味な行動と言えるでしょう。
「全国学力テスト」の位置づけはどこにあるのか
では小中学校における「全国学力テスト」どのような位置づけでしょうか。
仮に、高校における模擬試験のように自分の学力の相対的な位置や苦手な分野を確認する試験だとすれば、冒頭のニュースのリンクにあったような石川県の指導はあながち間違っているとは言えないことになります。
一方で、「学力調査」を目的としたものの場合はどうでしょうか。
その場合、むしろ人為的に測定結果に影響ある行動を行うことは正確さを失わせ、そもそもの調査の信頼性や存在意義が揺らぎかねません。
そして、「全国学力テスト」の本来の目的は後者の意味合いが強い調査です。
それを示すように、2016年に文科省は「行き過ぎた取り扱いがあれば、テストの目的を損なう」として全国の教育委員会に注意喚起を行う通知を出しています。
データに振り回されない
こうしたテストの最も大きな意味は、自校の生徒の学力分布を確認し、また過年度比較をすることで指導方針や授業の計画や内容を見直すことにあります。
そうした意味を踏まえた上で、過去問対策をすること自体は文科省も否定していません。
結局のところ、平均点にこだわって他県比較に血道をあげている人たちがデータに振り回され、意味のない競争に駆り立てられているだけのようです。
また、県ごとの平均点を発表するなどすれば、そうした競争を煽り立てることはわかっていたはずです。
適切なデータを、適切な時期に活用するリテラシーがより強く求められているように思います。