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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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#マンガ感想文

打ち切りの30年後にNETFLIX実写化「国民クイズ」感想

打ち切りの30年後にNETFLIX実写化「国民クイズ」感想

「島倉千代子」と「大原麗子」でアメリカ本土は焼け野原! このレビューには微量のネタバレが含まれるが実写版はどうなるか全く読めない!

核兵器を独占し、あり余るカネで世界の王になった「もうひとつのニッポン」で放送される超人気番組「国民クイズ」。
勝者の夢がなんでもかなう!

番組を軸に、司会者と参加者、番組をつぶして日本を元に戻そうとする革命家たちがぶつかる。
特に、終盤は打ち切りが決まったせいか詰

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【マンガ】永田カビ「これはゆがんだ食レポです」

【マンガ】永田カビ「これはゆがんだ食レポです」

オビにもある通り「過食嘔吐と付き合い続けて」生きている永田カビさんのグルメ漫画。

「付き合っている」がポイント。
「戦っている」ではない。

20代末に拒食症から一転して過食になり、現在は治療もカウンセリングも一旦通り越し、24時間飲酒からの入院&一生禁酒とかも通り越し、過食嘔吐しつつも生活していけるようになっているそうだ。

昔の作品は、一回脳に過食のスイッチが入ってしまうと、インスタントラー

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【マンガ感想】ジョージ秋山と詰み本の呪い「ドストエフスキーの犬」など

【マンガ感想】ジョージ秋山と詰み本の呪い「ドストエフスキーの犬」など

ジョージ秋山は毒薬だ。
コンプレックスまみれのうじうじした男がひとりで傷ついて、通りすがりの女を横目で見て、欲情をおさえきれずに乱暴する。した方のくせに自分に嫌気がさして布団をかぶって泣く。死ぬ。

ジョージ秋山の代表作「浮浪雲」を父親が20年以上前に読んでいた。
今、それとは関係なくKindleで息子のぼくが同じ作者にたどり着いたことにちょっと恐怖を感じている。
なんで嫌悪感があるのに自分はジョ

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福本伸行はずっと、人が本気になる瞬間を書いている「無頼な風」

福本伸行はずっと、人が本気になる瞬間を書いている「無頼な風」

福本伸行「無頼な風 鉄」を読みました。
初期の人情マンガは「カイジ」「アカギ」でブレイクしたあとと違うんだろうなと思っていたら、初期福本、いいんです。どれも今の漫画にないアナログな力強さがあって、根っこの部分は変わっていない。
独特のテンポも言い回しも、あか抜けないギャグも、ずっと変わっていない。
枠線が歪んでたり、アシスタントの描いたモブの顔のタッチが明らかに違ってたり、手描きの味がする漫画は久

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ブックオフで買った、デカいあしたのジョー

ブックオフで買った、デカいあしたのジョー

110円で、運動部の弁当箱ぐらいデカい「あしたのジョー」を買った。
「まんがを読んでる!!」って感じがする。

冬場にあったかい蕎麦をすすりながら太宰治の文庫本読んでたときは
「小説を読んでる!!」って感じがしてた。内容うんぬんの前にシチュエーションに満足していた。

「あしたのジョー」は、力石って人が減量中にリンゴ食べるところと、死んだときは実際にお葬式があったこと、さいごに真っ白に燃え尽きたの

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クリスマスに一番不向きなプレゼント、福本伸行の「二階堂地獄ゴルフ」単行本

クリスマスに一番不向きなプレゼント、福本伸行の「二階堂地獄ゴルフ」単行本

クリスマスに一番適したプレゼントはケーキ。
一番適してないのは二階堂地獄ゴルフの単行本だ。

「カイジ」よりもさらに前の、売れるとは思われてなかったころの福本伸行の作風。
題材はゴルフ。
ぎりぎりでプロテストを落ち続けて35歳になった男の悲哀、だんだん周囲からめんどくさい人と思われていてもプライドを捨てきれない意地、そういうことを描いている。

ゴルフでなくても「漫画」や「お笑い」に置き換えて読め

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【海外マンガ】「ワイン知らず、マンガ知らず」で、芸能人格付けチェックの向こうへ

【海外マンガ】「ワイン知らず、マンガ知らず」で、芸能人格付けチェックの向こうへ

「ワイン知らず、マンガ知らず」を読みました。
読む前に驚いたのが、まず、本のでかさ。
成人男性がページに広がるブドウ畑にすっと手のひらを滑らせられる。

あと、3300円する。

えっ、マンガ一冊で?と思われるでしょうが、しっかりした装丁。金かかってます。
本のサイズや、フリーハンドの枠、ゆったりした時間感覚とか、読む前から日本の一般的なマンガと違う価値観のものだ!とわかって嬉しくなる。
南国の仮

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【宇宙人狼】久しぶりに買った漫画【海外マンガ】

【宇宙人狼】久しぶりに買った漫画【海外マンガ】

宇宙人狼やん!!

昔からのファンの方には「宇宙人狼やん!!」と言われても舌打ちされるかもしれないけど、萩尾望都「11人いる!」の導入には、流行が二回りぐらいして最新の流行と重なったことに興奮した。

10人の初対面の候補生たちに課せられた最終テスト。一定期間、宇宙船の中で問題なくすごすだけでいいのだが、いざ来てみると一人多い。何者か。どこまでテストでどこからアクシデントなのか。

候補生たちが二

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【漫画レビュー】表紙だけで人生!フレデリック・ペーターズ「青い薬」

【漫画レビュー】表紙だけで人生!フレデリック・ペーターズ「青い薬」

バンドデシネ(フランス語圏のマンガ)初体験でこの本を選んだのは、あまりにも濃いオレンジの表紙が、ぱっ!と目に飛び込んできたから。

日本の浮世絵はフランスで人気があったときくが、そのときにフランス人が驚いた紺色のようなオレンジだ。荒れる海にソファーが浮かんでいる。その上でほほ笑むふたり。
この表紙だけでほぼ人生。この本の語っているすべてがこの表紙にある。人生はたいへんだけど、目の前の幸福をみていき

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「生理ちゃん」は「ギャルと恐竜」ぐらいのポップさでアニメ化されるべき

小山健「生理ちゃん」が最終回らしくてしょんぼりしている。

「ギャルと恐竜」ぐらいのポップさでアニメになってほしかった。まさかの実写映画化はあったけど、映画館は、わざわざ足を運ぶところだ。
ふだんアニメを見ている男性の生活圏内に自然にはいってくることが、この作品の「完結」だと思っていた。

毎回オムニバスで、さまざまな職業や立場のちがう男女が主人公になる。
女性には生理ちゃん、男性には性欲くん、と

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【マンガ記録】和山やま「女の園の星」の話

【マンガ記録】和山やま「女の園の星」の話

前作が男子校で、生徒のほのかなBL風味が隠し味だったのに、そっちにこだわりはないんだ!?

和山やまの新作「女の園の星」は女子校と男の先生の話。

共学の学校の女子だけを描くやり方ではなく、あえて女子の学校で「女の園」と時代がかった呼び方をして、男の先生たちと恋愛関係になる気配もない。
設定だけで和山ワールドがにじみ出ている。

デビュー作「夢中さ、きみに。」は男子校の生徒たちによる短編集だった。

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