
【マンガ記録】和山やま「女の園の星」の話
前作が男子校で、生徒のほのかなBL風味が隠し味だったのに、そっちにこだわりはないんだ!?
和山やまの新作「女の園の星」は女子校と男の先生の話。
共学の学校の女子だけを描くやり方ではなく、あえて女子の学校で「女の園」と時代がかった呼び方をして、男の先生たちと恋愛関係になる気配もない。
設定だけで和山ワールドがにじみ出ている。
デビュー作「夢中さ、きみに。」は男子校の生徒たちによる短編集だった。
現実の高校生男子はこんな近さで話さないだろうけど、ここは和山ワールド。
作者の妄想力を水がわりに、観察力という肥料をあたえ、育て、はぐくんだ「和山ワールド」の男子たち。
彼らのやりとりは、楽しいだけじゃない。
無表情。陶器のような肌、どちらの作品にも共通する「他者を観察する生徒」の存在。
涼しい顔の生徒たちだけど、教室内には湿度がある。ほんのり気持ち悪さのようなものが隠し味にきいている。
新作はまさかの「女の園」が舞台。
教室内が女子たちに変わっても、生徒たちの落ち着き払った姿や言葉遣いは、やっぱり独特。(職員室に生徒がいても、どちらも先生に見える)
やはりここも女子校とは名ばかりで、現実には存在しない「和山ワールド」だ。
ジャンルはコメディだけど、単純に笑うだけで終わらない。
沈黙と、困惑する表情で笑わせてくる場面が多くて
「作者は、こういうものを面白いと思って、こういうところを観察して生活しているのかな」
と、書き手のセンスを知りたい、わかりたいと思ってしまう。
どちらの作品も、クラスの中心人物による明るいギャグではなく、クラスの隅でみんなを観察している生徒の好む笑い。
ラジオのハガキ職人ぽい笑い。
「夢中さ、きみに。」でSNSで出会ったふたりが、自分のハンドルネーム(おいも三兄妹)は、どういう兄弟関係なのか由来を真顔で解説する場面は、とくにラジオっぽさを感じた。ハガキ職人ってペンネームにこだわるから。
いいなと思ったら応援しよう!
