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行けなくて、行ける場所
年が明けたら京都に遊びに行くという友達に、おすすめの場所をまとめて教えるね、と年末に約束したことを思い出し、あわててリストをつくる。
10代の終わりから20代の半ばにかけて、年に2,3回は足を運ぶほど、京都に恋していた時期があった。その後、すっかりご無沙汰してしまった私のなかの京都地図は、今もあの頃のままだ。果たして、まだ存在するのかどうか、しっかり確かめもせずに、思いつくままに店の名前と感
はじまったときには、もうすでに苦しい。
5月も終わりに近づくと、もう気が気でない。
メンフィス・ジャグバンドの
「ピーチ・イン・スプリングタイム」を聞いていたら、今年も訪れるであろう、桃の季節を思い出して苦しくなった。
とにかく桃が好きすぎるのだ。
桃の季節のはじまりを逃すまいと、
気もそぞろになる。
そうして用心深く、はじまりを予感した時にはもう、いずれ終わってしまうという、逃れようのない事実に、私の胸は、既に苦しい。
江國
カサブランカ202号室
上京してはじめて暮らしたアパートの名前は、「カサブランカ」といった。
「あなたの部屋はイングリッド・バーグマンの部屋ね。」
大家さんから鍵を手渡され、茶目っ気たっぷりにウィンクされた瞬間、胸にこみ上げてきた、あの嬉しさをふと思い出した。
これからはじまる東京での暮らしが、
急に色目きだち、すぐさま映画「カサブランカ」を借りに走ったのだ。
アパートで1人、バーグマンの美しさに魅入りながら、東京で