一日だけの秋
浮遊感漂う軽めのポップソングからゆるやかに移行し、秋、ジョー・ヘンリーではじめる。
やさしく枯れた声に手をひかれ、穏やかに、気分は秋へと向う。
大好きな秋も、あっと言う間に駆け抜けて、気がつけば冬になってしまうから、はじまる前から既に苦しくなりそうだ。
毎夕、夕暮れの数分間は 必ず足をとめ、まるで、生まれて初めて見る夕陽のように、毎日見惚れ、あたりが暗闇に包まれるまで、ずっと眺めていよう。
毎日、一生で見る、最初で最後の完璧な夕陽のように、そっと胸にしまい、瞼のうらいっぱいに広げて眠る。
そして、次の日の朝にはすっかり忘れてしまおう。
そんな風に、秋を一日だけのものとし、毎日、秋にさよならする。
あせらないで、できるだけ静かに楽しみたい。
そうは言っても気は急いて、今日もこの声になだめられている。
麻佑子