写真集を欲するとき
もう何者の言葉も、自分のなかに入れたくない。
全ての情報を拒絶する。
そんな時、膝の上にのせた一冊の写真集の重みに、救われている自分に気がついた。
人類は言葉という道具を選んだが、言葉に救われる時もあれば、言葉が襲ってくる時もある。言葉はいつでも不確かで、言葉を信用するかどうかは、受取り手の判断に委ねられる。人はいつも自分の判断に疑心暗鬼だ。
言葉のない世界に、一枚の写真は、ただ、在る。
言葉のない世界に漂う気配には、絶対的な信用があって、〝信じる自分〟に疑う余地を与えない。
もう、何者の知識も、思想も、物語も知りたくない。誰のものでもない、自分だけの感覚を直に味わい、言葉のない世界に身を沈めたい。
少なくとも、私の人生には一冊の写真集が必要だ。
麻佑子