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putti essay ~日々を綴る~

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#エッセイ

2021年、8月末の夕暮れ情景

夕暮れ前、木陰のせいで少し涼しく感じられるが、終わりが近いといえまだ8月なのでじめじめしている。今まで気がつかなかったが、夏の間に黄色くなった葉を落とす木があることを発見し、アメンボが水面にたてるような驚きの輪がからだの中に広がってゆく。
つくつくぼうしが大合唱し、そのなかでひときわハッキリとした声で、「ミーンミンミンミー」 と鳴いている蝉が、まだ夏は終わっていないと主張する。

もくもくと湧いて

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ポストカードと、誰かの不思議そうな表情

ポストカードと、誰かの不思議そうな表情

今月になって行くことを諦めた、美術館から取り寄せたポストカードを布団の上にひろげて眺めはじめる。カーテンをしていたら、外からの日が入らずに、まだ涼しく感じられる時間が幸福だ。
以前行った美術展で買った、クリムトのユディトの絵はがきをひっぱりだし、部屋の隅のテーブルの上に載せた。

子供の夏休みっていいなぁ、という誰かの呟き。そういうものは、もう簡単には巡ってこないのだろうなぁと答えていたわたしに、

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ゲイ・バイセクシャルと、古代ギリシャ・ローマ時代と現代作品からのちょっとした考察

ゲイ・バイセクシャルと、古代ギリシャ・ローマ時代と現代作品からのちょっとした考察

最近、Netflixで『The PROM』という映画を観た。ゲイである女の子が大好きな彼女と、学校のイベントであるプロムで堂々とダンスを楽しむ為に奮闘する物語。応援団として、メリル・ストリープやジェームズ・コーデン、ニコール・キッドマン演じる人たちが登場し、ミュージカル形式で物語が進んでいく。 観ていて楽しいし、辛い場面もあるけど、心がじんとなる。

昨日急に聴きたくなって、運転しながら口ずさんで

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考えること、できること(資源と環境について)

魚の切り身の入ったトレイなんかは、洗って、自動的にリサイクルのほうに振り分けていたのに、どういうわけか納豆のパックは自動的にゴミ箱に棄てていた不思議に、最近気がついた。気がついたので、洗って、お店に持っていく袋の中に入れる習慣を始めた。

その先、回収されたものがどのくらい的確に処理されているのか、たまたま目に飛び込んできたTVのニュースを振り返ると、どこかのアジアの国が、日本から来た回収品が汚い

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この世界って、基本はホラーでできていると思ってる。

ホラー映画には向いていない、と思う。そもそもホラー映画を観るという選択をほぼしないのだけれど(実際、今まで観たホラーに分類されている映画は2本だけだと思う)、食わず嫌いではないということを一応自分で確認しておきたいので、人が薦めたものを2本観た、ということになる。

そのうちの1本は、恐らくホラーの中でも有名であろう『シャイニング』(1980)なのだけれど、わたしはこの映画を観て、途中から気が狂っ

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正義か、幸福か。(お肉を食べるのをやめることを決意する)

‘あなたは正しさと幸福と、どちらが好ましいと思うか’
初めてこの一文を目にしたときは、この問いの意味そのものがよくわからなかった。

一昨日、10年くらい前に1年間、お肉を食べない時期があったなぁ、と思い出した。

梅雨前線が引き連れている雲等の所為なのか、TVから流れてくるニュースで気が重いのかわからないけれども、何となく頭もハッキリしないし、きちんと眠っているはずなのに眠いし、職場で体調を崩す

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これって、やっぱり自分の為に書いているよね(結婚のはなしになる)

以前、職場の先輩に、「人と違うことを気にしなくていいよ。」と言われたことがある。若いときは特にかもしれないけれど、自分より人生経験や見る目のある他人のほうがわたしを見抜いていて、何年か後になって、あぁ、そういうことだったのか、と気づくという経験がある。
この「人と違う」というのは、ある意味誰にでも当てはまることかもしれないけれど、おそらく、世間一般的な大半とは少し違う、という意味で使われていたと思

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やはりそこに、行くことになっていたのだろうか(リヨン)

ひとつの物事があると、すぐに類似する何かを呼び起こし、それを頭の中の紐で結んで次々と引っ張り上げるのは得意技なのだが、村上龍氏の『MISSING』(新潮社 2020)を読み始め、主人公の50代の男性がそのような性質を持ち合わせているので、今回もわたしの中で予め繋がっていたのであろうそれを引っ張りあげて、この文章を書き始める。
この主人公ほど意識が錯乱する感覚や、不思議な光景が見えたりすることはわた

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結局のところ、世界は繋がっているのだから(アメリカの人種差別や貧困問題から)

アメリカでは、警官が黒人の男性を死亡させた事件が人種差別への抗議のデモになった。(他にも色々な要素を含んでいそうだけれども。)
国の中での長い歴史を伴うこの問題は、誰かが差別をすることで不当な扱いや不利な状況に置かれる誰かがあってはならないという、理屈的にはとてもシンプルなものだが(それだけで世界が廻っているのならもう天国であってもおかしくないわけだが)、人間には様々な欲や感情(恐怖)があるが故、

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この3ヶ月という日々と、約十年

今年の2月の末くらいまで、ここ数年の主な仕事は接客業だった。十年位勤めていた職場で(その間に違う職場でもやはり接客をしていたわけだけれど)、最後のほうは同僚や先輩というのは何だかゆるやかな家族みたいな雰囲気があり、お客さんは何年も前から知っている近所の顔見知りみたいな方も少なくなく、わたしはよく話を聞いたり、したりしながらのびのびと仕事をさせてもらっていた。(何と幸せなことだったろう。)

3月末

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年上の友人と、心理学者と作家とわたし

河合隼雄さんのことを最近初めて知った。
地元で知り合った、年上の知恵のある女性に新型コロナの外出自粛中にLINEすると、わたしはこれまでに彼の著書を読んで、自分の物の見方と合うと思いました、というテキストが返ってきた。
早速スマートフォンで彼の名前を検索すると、大量の彼の著書の題名が表示される。全く彼のことを知らない者からすると、どれを選んでよいか分からないくらいの量なのだけれど、その中に 河合隼

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バジル

朝目が覚めると、2階の開いたベランダの窓から、バジルの匂いが漂ってきた。
どうしてこんなに香るのだろう、とわたしは不思議に思う。

1階のテレビが何人が死亡、と伝える声がわたしの耳に届く。
聞き慣れた、うんざりした、諦めのような気持ちが一瞬わたしの横を通りすぎる。
わたしは自分の部屋の扉を閉めて、少しの間瞑想をする。わたしは何者でもなく、この世界の一部でもなく、‘わたし’というちっぽけな枠が取り払

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ずっと思っていたこと

ずっと思っていたこと

サービス残業は、社員の‘強制’ボランティア。
どうしてそれを当たり前と思われなけばならないの、と疑問に思いながら、貯まっていた有給休暇を消化してその分を少しは取り返そうかしら、と考える。

毎日少しずつでも、‘強制’ボランティアを
利用して無料で作業してもらおうというケチ臭い考え自体が、社員の意欲を下げている。そうしてもらって当たり前という、会社が個人に寄りかかっている姿勢は、甘えんぼう。
おむつ

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カタカナ語

朝、大きなやかんでお茶を沸かしていたら、母が「マタニティ...マタニティー茶!」という。

ある時、玄関の上の棚に‘ナタデココ’があるから取ってくれと言った母は自信満々だった。母がそのようなものを買ってわざわざ棚の上に置いておくなんて珍しいから、わたしは既にそれが‘ナタデココ’でないことには薄々感づいていた。
棚の扉を開けて見てみると、魚の缶詰やナッツ類なんかが備蓄してある、いつもの光景が広がって

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