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しりとり手帖

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しりとりをしながら、最後の音節で始まる言葉をテーマにした何かを担当メンバーが発信します。
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記事一覧

冒険 担当:寺橋佳央

冒険 担当:寺橋佳央

 リュックサックを背負い、口元をキュッと結び、彼方を見上げる主人公。そんな冒険への一歩を踏み出すシーンを見ると、これから良いことが起こりそうってワクワクする。冒険っていいな。そうだ、今日は冒険っぽい旅に出よう。目指すは海! 逗子海岸へ! 
 私はいつも使っているリュックサックを背負い、玄関の扉を開けた。

 なぜ逗子なのか。それは逗子が湘南新宿ラインの終着駅だからだ。平日に見上げる駅の電光掲示板。

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とおせんぼ 担当:はおまりこ

とおせんぼ 担当:はおまりこ

「もし家に帰れなくなったら道しるべの虫についてくんだぞぉ」

小学6年生だった高山さんは、ふいにお祖父さんにそう言われた。
広島の中心部から山間部についこの間越して来たばかり。慣れない土地ではあったが、転入した小学校は自宅から見える程の近さで、いくら子供でも迷うはずがない。
もう高学年で来年には中学生だというのに。
侮られたような気持ちがして頬を膨らます高山さんに
「とおせんぼが悪さをする時がある

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ここ最近わかった自分のこと 担当:スギノイチヲ1.0

ここ最近わかった自分のこと 担当:スギノイチヲ1.0

来年で還暦である。
いくつになっても生きるのが下手すぎて笑ってしまう。
60歳近くになっても20代からなんにも変わらないんだなって感じる。

本はたくさん読んだつもりだが
いくら本を千冊読もうが馬鹿には勝てないこともよくわかった。
もうすぐこの世界ともお別れする時期がくるのかなと時々考えたりするが
まぁやっと楽になれるのでそれはそれで楽しみであったりする。
生きることに執着し過ぎると
脳や身体を冷

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韓国語 担当:須田さ紀え

韓国語 担当:須田さ紀え

韓国語をかじりはじめて今年で7年目になる。

きっかけは映画「お嬢さん」だ。
日本統治時代の朝鮮半島を舞台に、資産家と姪の令嬢、彼女の侍女、そして財産を狙う詐欺師の騙し合いを描いた作品で、登場人物の言語も日本語と韓国語が混じっているのだけど、その入り混じるさまがとてもミステリアスに感じられたのを覚えている。

ぐらりぐらりと揺らぐ騙し合いの行方のように、日本語と韓国語を行き来するセリフ。字幕で内容

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キッチンドリンカー 担当:ヤナイユキコ

キッチンドリンカー 担当:ヤナイユキコ

主に女性が家事をしながらお酒を飲むことを、キッチンドリンカーという。
なかにはキッチンドリンカー=アルコール依存症となった人、と言い切ってしまう解説もあったりで、私はもうアル中なのか、とぼんやりする。

数日前にXでつぶやいたのだが、私は料理をしながらのお酒が一番うまいと思っている。
未完成の段階の料理に塩を振ったり、マヨネーズをちょびっとのせたりしてつまんで流し込むビールはもう堪らなくおいしい。

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ジャンボケーキ 担当:BUNKO

ジャンボケーキ 担当:BUNKO

 今回お声がけいただき、「しりとり手帖」に参加させていただきます
「学校の読書感想文の7割は本の内容を書く」でおなじみのBUNKOです。
しりとりなので「じゃ」になりましたが、ぱっと浮かぶのは「ジャイアント馬場」「ジャンボ鶴田」「ジャーマンスープレックス」・・・・
 全くプロレスは詳しくないのにプロレス黄金期時代育ちというのは恐ろしいことです・・

ということで(?)今回は「ジャンボケーキ」です。

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白ジャー 担当:かわかみなおこ

白ジャー 担当:かわかみなおこ

恩田陸著「夜のピクニック」をご存知だろうか。
夜通し80キロほどの距離を高校生たちが歩くというイベント「歩行祭」を舞台にした物語だ。

さて、どうしていきなり小説の話を出したかというと、何を隠そう、わたしはこの物語の舞台である歩行祭の経験者だからだ。

毎年10月に全校生徒で約70キロほどを歩く、その行事の本当の名は「歩く会」。
行事の内容については、まさに夜のピクニックをお読みいただければ書いて

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着こなし 担当:エロ司

着こなし 担当:エロ司

 肌を撫でるレーヨンの質感と、その間を吹き抜ける清風。夏は嫌いだが、敢えてひとつ好きなところを挙げるとするなら、三十枚近い柄シャツコレクションの中から一枚を選び、袖を通す瞬間を挙げるだろう。自分の所持している柄シャツは、着て街を歩けばどこで売っているのかと人に問われるような珍奇かつ淫靡な柄のものばかり。さすがにオーダーメイドというわけにはいかないが、柄シャツの柄選びと私服のコーディネートは、自分に

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えにっき 担当:はおまりこ

えにっき 担当:はおまりこ

人に話したら笑われそうな、それでも、今も時折蘇っては胸を締め付けられる記憶がある。

小学校低学年の頃だったと思う。
自宅でピアノ教室を営む先生のマンションから、レッスン後の帰り道。
あたりは暮れかかり、オレンジ色の光に満ちていた。
マンション前の急な坂道を、母に手を引かれながらゆっくり下っていく。滑り止めの為らしい坂一面の円状のくぼみは逆に幼児には歩きづらく、つまずかないよう自然足元ばかりを見つ

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記録するための絵 担当:五嶋奈津美(イラストレーター)

記録するための絵 担当:五嶋奈津美(イラストレーター)

私は写真を撮るのが苦手だ。
まず撮りたい!という衝動が起きる回数が人より少ない気がする。そして絶望的に撮影センスがない。だから集合写真を私のスマホで撮らなくてはならない時などは戦慄してしまう。それでも言われれば一生懸命撮るのだが、私の写真はいつもアングルがおかしかったり、ぶれていたり、誰か目をつむっていたり、とにかく本当に下手くそなのだ。

そんな私でも自主的に写真を撮りたくなる時がある。近所の散

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1回休み :担当 寺橋佳央

1回休み :担当 寺橋佳央

今回のしりとり手帖はお休み。
ま、そんな事もあるよね。そしてまた私です。
ただの休みじゃつまらないので、我々の馴れ初め話でもしようかと思います。
 今から8年前。私と須田さんが、文章を書く講座に通っていたのが馴れ初めの「始め」です。

この講座の授業で私は「なぜ書きたいのか」がテーマの発表をしました。
「自分はリア充死ねとか思うような人間で、何も満たされていない。だけど私は私の存在を認めて欲しい

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今日のコンドーム自販機 : 担当 寺橋佳央

今日のコンドーム自販機 : 担当 寺橋佳央

 とんでもない題名だが、私はこんな名前のポストをXで毎日続けており、Twitterの頃からすると、もう8年目になった。基本的に毎日続けていて、うっかり日をまたいだとか、体調不良で寝込んだとかでポスト出来なかったのは、ほんの数日。

 今日のコンドーム自販機のポストは、正面、左右等から自販機を撮影した写真を1日1枚ポストしている。1つの自販機で5.6枚、1ヶ月で5〜7台の自販機をポストしている計算

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暗渠 担当:須田さ紀え

暗渠 担当:須田さ紀え

 上京してきたばかりの頃のわたしをイラつかせたもののひとつ、それは
「至るところにあるうねうねした道」
だった。
 18歳まで過ごした北海道では、こっちに行けば目的地に着くはず、と確信して進んだ道の先があらぬ場所につながっている、ということなんてほぼなかった。街の道路はだいたい碁盤の目状に整備されていたから、どんなにぼんやりしていても方角さえ間違わなければ目的地にたどり着けていたし、それが当たり前

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酒瓶のミニチュア : 担当 だまだま

酒瓶のミニチュア : 担当 だまだま

 昔からミニチュアが、特に食べ物のミニチュアが好きだった。中でも覚えているのが、某お人形が某ハンバーガーショップ店員になって働くセットだ。
 精巧なメニュー表に小さなビッグマックの箱、ツヤツヤしたバーガーのバンズに赤い箱のポテト……ハンバーガーショップなんて生活圏にない田舎住まいだったので、それらのメニューを私はミニチュアで先に知った。
 中でも不思議だったのは長方形の箱に入ったアップルパイ。アッ

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