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昔住んでいたお家まで散歩してきた🏠🚶【目指せ10km!】

2020年5月4日。
引きこもりの画伯ちゃんは体がなまっていた。

2ヶ月ほどまともに歩いてすらいない。
そして、この日仕事が休みだった当時の元カノ

"通話も運動も兼ね備えたい!"
そう思った画伯ちゃんは想いをぶつける。


「いいよ〜✨」


やったぜ。
散歩通話に付き合ってくれるようだ。

"5月頃になると精神が不安定になる"


出会った時から、そういう共通認識を持っていた。
"その時期が苦手"な2人だったんだろうな。

気分が落ち過ぎる前に、できる限り話していたかった。

(長すぎてもアレだし30分くらいで帰るか〜)
そう思いながら、散歩スタート。

時間は、15時前。

用事があるらしく、
元カノはもう少し後で連絡してくれるとのことだった。


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散策していると...


とことこと歩き出した画伯ちゃん。
久しぶりに歩いたから、どこかぎこちない。

今日の目的地はどこにしよう...


"そうだ!昔住んでいた家を見に行ってみよう!"


そう思い、歩いていく。
14歳の頃まで住んでいた一軒家は、すぐ近くにあった。


その家について一番覚えている出来事は、
玄関と床下の間にあった"隙間"のこと。

大きな穴が空いていたようで
虫やネズミや妖気など、ありとあらゆるものが入ってきていた。


ある日の夕暮れ。
10歳の画伯ちゃんの"身長の半分ほどある蛇"が入り込んでいた。(70cmくらい?)

静かに鎮座し、舌を出し入れする蛇の姿を見て"殺される"って思ったね...
スーッと扉を閉めて、もう一度開く。

まるで消えてなかった...現実だった...


近所のお兄ちゃんに助けて乞うて、棒で追い出してもらった。
その晩、帰ってきた親には蛇の存在など信じてもらえず終い。

悲しいね...

"今はどんな家になってるんだろう!
改装して綺麗になってるのかな?"


もう少しで辿り着きそうな距離までやってきた。

アスファルトのど真ん中で座り込む猫と遭遇。
メンチをきられて、ビビった画伯ちゃん。

視線を外して、その周りを見ているフリをしていると

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あれ...
駄菓子屋さん周辺が完全に無くなってる..

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それに...
近くの家も...

ちょっぴりセンチメンタルな気持ち。
照りつける日差しが、なんとか心を平穏に保たせてくれた。


"仕方ないよね..."


さらに進んでいく。
小さい頃よく通っていた細い道へ。

今この身長で通ると本当に狭い。
この道を、何度も駆けずり回っていたなんて信じられないな。

初めて見た"毛虫"に触れて刺された時、
知らない通りかかりの女性に患部を吸ってもらった思い出がある。

この細道での思い出。

"あなたの人生は波乱よ"
"だって鬼がついてるから"


また違う知らない女性に、そんなことを言われたこともある。
細道とはそういうものなのかもしれない。

知らない女性と出くわすものなのかも。


もうすぐ懐かしのお家に到着です!


猫が2匹でパンパンになるような道。
もう少しで見慣れた場所へ出るはず。

14年間住んでいた一軒家のある場所へ。

しかし、その先には
とんでもない光景が広がっていた。


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え...
何もない...

"どういうこと?"

驚きで固まり、立ち止まってしまった。
必死に考えてみる。


何の考えも処理できないまま、5分経過。
ただただ呆然としていた。

その間も、誰も通らない細道。
猫が画伯ちゃんの背中を見ていた。


今の家から近くの場所なのに...
取り壊されて更地になっていることに、1ミリ足りとも気づいてなかった。

なんの音も聞こえていなかった...

"解体業者さん優秀すぎん...?"


画伯ちゃんを生み出した街


この消えた一帯が、
小学校時代のすべてだった。

画伯ちゃんの人間性を形成した全て。
すなわち、このnoteの文体すらもこの街一帯が作った。

今までのバンドも。音楽も。腹痛も、緊張も、恋も、性欲も、衝動も、虫集めも、お風呂場での人形バトルも、捕まえすぎたオタマジャクシが一斉にカエルになって鳴き始めたことも、Lサイズのピザくらいある蜘蛛に襲われたことも、親友に盗まれたキラカードも、幼稚園で初めてできた友達の女の子が「遊びに来たよ〜」と1人で家まで来てくれたことも。

それらが全て、文章と音楽になっただけだったから。


画伯ちゃんを作り上げたのは、
この街の善意と悪意と自然だ。

たった半径数十メートルの世界で、14歳まで何もわからずに過ごしていた。
ほぼそこから外へ出ることもなく。最寄り駅まで行くことすらなく。

それらが消えてしまっていたなんて。
信じられない。

どこにいったの...


家まで遊びに来てくれた幼馴染のゆかちゃん!
画伯ちゃんのことや、この街のこと覚えてる?

小4くらいまで"結婚しようね!"
って言いながら、おもちゃの指輪を交換してたね!

高一くらいにレンタルビデオ屋さんですれ違った時、妊娠しててびっくりしたよ!
めちゃくちゃキレイになってて、ケバくもなってて。

ゆかちゃん...
元気にしとんの?


自分の家の2階から伝って、他人の長屋の屋根を走り回った、画伯ちゃんの足に踏まれた家たち!
元気にしとんの?


その長屋の端にあった鳥まみれの家!
そこに住むゆうくん!

5歳くらい年下だったね。
君のお母さんとはよく話していたのに、なんでお姉さん2人とお父さんとは会うことすらなかったんだろう?あと鳥いすぎて怖かったよ!
元気にしとんの?


真向かいの家に住んでいた、シーズー犬を飼っていた一家の皆さん!
可愛すぎる8歳くらい年上のお姉さん2人、旦那さん、奥さん!

なぜか画伯ちゃんを家にあげてくれて遊んでくれてありがとう。
シーズー犬はとろけたチーズみたいに玄関で寝ていて可愛かったし、みんな優しく画伯ちゃんの笑顔を引き出したり、悲しみを受け止めてくれたり。

飼ってたハムスターが死んだとき、「河川敷に埋めてあげたら?」っていうお姉さんからの提案は忘れられないよ。スコップありがとう。
あの一帯に似合わない美しさと優しさを兼ね備えてましたね!
元気にしとんの?


みんな元気にしとんの...?


みんなどこに...

もう二度と会えないってこと...?


名前すら覚えていないから、もう記憶の中でしか会えない。
あだ名でしか覚えていない。


🤗画伯ちゃんはこの通り🤗

生きてるよ


傷だらけのみんな


いろんなことがあった。
変な街というか、訳ありな人間が多く住んでいた印象。


さっきとはまた違う方向にも長屋が隣接していた。
そこに住んでいた隣人のお婆さん。

背が小さくて丸まっているのに、常に怒りを剥き出しにしたような生き方。
ただ、画伯ちゃんにだけは優しい表情を見せてくれていた。

すぐ懐いて、生意気に話す画伯ちゃん。
我が子のように思っていてくれたのかもしれない。


あれは平日の夜。
急に窓ガラスの割れる音が鳴り響いた。

それから棒で叩かれたような打撃音。

自分の家の窓の隙間から覗くと、かすかに現場が見えた。
隣人のお婆さんが、男たちに怒鳴られていた。


「金返さんかい!おら!ババア!ころすぞ!」

「無いもんは無いんや〜帰れ〜!」


1時間くらい叫び合う両者。
もう寝る時間が過ぎていた画伯ちゃん。

不安でソワソワして落ち着かなかった。


「窓辺から離れなさい」とは言われたものの、
喧騒については聞こえていないフリをする両親。

警察が来てすぐに静まった。
しかし翌日の通学時にお婆さんと出くわすと、その顔面は傷だらけになっていた。

「画伯ちゃん!白米食うとるんか?あれは毒や!」

「え...」


「あたしは麦しか食わん。麦しか食わんのや」

「そうなん...」


「麦は安いしぃぃぃぃ!!!栄養もあるしぃぃぃぃ!!!!」


そう話すお婆さんの後ろの窓ガラスには、大量のガムテープが貼られていた。
大人になるまで、怖くて麦飯が食えなかった。

そしてある日、お婆さんは急に死んでいなくなってしまった。
ガムテープが貼られたまま。

たまに誰かが訪れていて、家の中が見えることがあった。
とても狭く、薄暗かった。

"あそこに1人で..."


たった1人で戦ってたんだな...


急に"亡くなった"とは言われたものの、
未だに死んだのか、どこかに連れていかれたのか

釈然としない不自然さはあった。


それから14年間で、一度も見たことのない隣人や近所の人も多くいた。
なぜ彼らと会うことすら無かったのか。

なぜ名前すら知らなかったのか。


この狭い一帯で、数名しか知っている人間はいなかった。
呼び名も知っている人間だと、数はもっと少なくなる。

100人くらいは住んでいただろうに。


みんなどこに消えたんだ...?


・宗教の違いや、収入の違いによるいざこざ
・顔すら見た事のない近隣の家にかけた小便
・急に金玉を蹴ってきた幼稚園時代のクソ野郎の家の玄関をずっと蹴り続ける夕暮れ

あの日々は"現実"だった。
でも無くなってしまうと"夢"だったようにも思えてくる。


みんなどこに消えてしまったの...


なんだか泣きそう。

ブルル


LINEに通知。
当時の元カノだった。


"もう通話できるよ!"


立ちすくんだままの画伯ちゃんは、即座に音声通話のボタンを押した。

「もしもし〜👧🏻✨」

相手の声を聞き、落ち着いていった画伯ちゃん。
泣き崩れるところだった。


真昼間に、重機の前で。
泣き崩れるところだったんだ。

つづく

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