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加速主義

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#推薦図書

J. D. ヴァンス『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』読んだ

J. D. ヴァンス『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』読んだ

次期米副大統領J. D.ヴァンスの自伝。

さすがベストセラー、めちゃおもろかった。

ヒルビリーとは、アパラチア山脈西部の丘陵地帯に住む人々のことである。基本的に田舎住まいで、貧しい人々というイメージだが、本書を読むとそのイメージは大きくは間違っていないようだ。

そしてヒルビリー達は仕事を求めてオハイオ州やミシガン州などへ出ていく。それらの地域は製造業が発達していたが、いまはラストベルトと呼ば

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御田寺圭『フォールン・ブリッジ 橋渡し不可能な分断社会を生きるために』読んだ

御田寺圭『フォールン・ブリッジ 橋渡し不可能な分断社会を生きるために』読んだ

白饅頭こと御田寺圭さんの新著が出たので読んだ。

本書は、スタジオジブリの機関誌『熱風』に連載された記事を中心にしたものらしい。

熱風に連載を持っているのは知っていたが、同誌はやや入手しにくいこともあり読んでなかった。ありがたい。

しかし、著者の文章を何年もほぼ毎日読んでいる私でも暗い気分になってしまう記事がいくつかあり、おいおい、これをジブリのファンに読ませたんかい、、、と驚いてしまったので

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山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』読んだ

山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』読んだ

東アジアでは少子化が話題にならない日はなく、少々のことでは驚かないが、韓国の数字は衝撃的すぎるね。。。

そういうわけで少子化シリーズいきましょう。

著名な家族社会学者であり、政府の政策にも関与してきた山田昌弘氏の新書。

コロナ前に出ていたが、今ごろ読んだ。Kindle Unlimitedだよ。

トゥイッターランドに棲息する賢明な諸氏ならだいぶ前から知っていたことばかりなのだが、やはり真っ当

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ポール・モーランド『人口は未来を語る』読んだ

ポール・モーランド『人口は未来を語る』読んだ

友人のSさんにおすすめされた本をようやく読んだのである。

早く読まなきゃと思っているうちに、白饅頭師匠が的確な書評を上げてしまわれて、もう読まなくていいかなと思ってしまったが、どうにか読んだのであった。

これからさらに3ヶ月たってるし、、、時間たつの早すぎやろ。。。

本書と似たような内容のものとして『格差の起源』がある。

同書は人口減少について、地球環境への負荷が減るからいい面もあるという

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三牧聖子『Z世代のアメリカ』読んだ

三牧聖子『Z世代のアメリカ』読んだ

なんとなくシラスでこんな動画を見て、この三牧さんて人は面白いなあとか、最近のアメリカの情勢どうなってるのかなあとか、そんな関心からこの本を読んでみたのである。

けっこう面白かった。

Z世代とはいまの20代なかばくらいの世代である。つまり2001年9月11日のテロのときには生まれていないか、物心がついていなかった人たちだ。

アメリカ例外主義との決別彼らに特徴的なのはアメリカ例外主義の否定である

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ネオ高等遊民『一度読んだら絶対に忘れない哲学の教科書 』読んだ

ネオ高等遊民『一度読んだら絶対に忘れない哲学の教科書 』読んだ

通称ネオ哲学史、やっと読み終わった。

発売日前にフライングゲットしたのにずいぶんと時間がかかってしまったのは、ポップな装丁、キャッチーな見出しに反して、骨太な内容だったからである。

著者のネオ高等遊民氏は日本初の哲学系Youtuberであり、その名の通りタイで高等遊民をしているという非常に羨ましいお方である。

氏は読書サークルも主宰されており、私も混ぜていただいております。

本書がよくある

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ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙』読んだ

ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙』読んだ

いやあこれは面白かった。

原著は40年以上前、邦訳は約20年前に出ているが、まだ読んでなかったなんてもったいないことをしていた。

意識はいつ、どのように生じたかというありふれたテーマだが、大胆な仮説を立てて検証した意欲的な作品だ。

まず意識とはなんでないかから始まる。

意識は学習に必要でない。概念の習得、形成に必要ではない。意識は経験の複写ではないし、知覚されたものを貯蔵しているのではない

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スティーブン・クーニン『気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?』読んだ

スティーブン・クーニン『気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?』読んだ

いまごろ読んだ。

大雑把にいうと、メディア、政治家、科学者は気候変動の影響を誇張しすぎという内容だ。

過去数十年、地球が暖かくなっているのは事実だが、それにどれほど人類の活動が影響しているかはなかなか確定しがたい。というか長期的な自然変化のほうが大きくて、人類の影響はあったとしても極小ではないか、、、と指摘されている。

さらには、人類の影響を人類の努力でどれほど相殺できるかも、かなり心もとな

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2023年読んで良かった本 ギリシャ哲学・教父哲学・中世哲学編

2023年読んで良かった本 ギリシャ哲学・教父哲学・中世哲学編

2023年に読んだ本の振り返り、まだまだ続く。

幸運なことに昨年は素晴らしい書籍に出会う確率が非常に高かった。

本日はとりあえず古代とか中世の哲学、およびキリスト教関連の本を厳選して挙げていく。

まず私にとって決定的に重要だったのが『個の誕生』である。

キリスト教に古代ギリシャ哲学、具体的には新プラトン主義が分かちがたく絡んでいること、さらには中世や近代の西欧の思想に浸透していることがよく

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八木雄二『神を哲学した中世』読んだ

八木雄二『神を哲学した中世』読んだ

中世哲学入門シリーズ。

読みやすくてよかった。

形而上学や論理学的なこと、というか悪い意味でのスコラ学的なところに深入りしないで、どうしてあのような煩瑣な理屈を必要としたのかに力点が置かれている。

したがって、中世の人々の思考に入り込むことになる。大衆がふつうに神の実在を信じていたこと、修道院や大学の学者たちの理屈の組み立て方など。

なぜ中世の人々の思考を学ぶ必要があるかというと、あの時代

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伊東俊太郎・村上陽一郎・広重徹『思想史のなかの科学』読んだ

伊東俊太郎・村上陽一郎・広重徹『思想史のなかの科学』読んだ

科学史とか科学哲学について読んでいると、伊東俊太郎氏の著書を読んでみたくなり、これが一番とっつきやすそうだったので図書館で借りてきたのだ。

古代ギリシャから20世紀まで科学のあり方をおさらいしたとても良い本だ。自然科学は普遍性があるといっても、それは科学の法則が普遍的であるというだけのことで、その成り立ち、社会での受容や利用のされ方などには歴史的であったり、地域に固有のものであったりするわけであ

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リチャード・ルーベンスタイン『中世の覚醒』はすぐれた哲学入門書であり歴史書だ

リチャード・ルーベンスタイン『中世の覚醒』はすぐれた哲学入門書であり歴史書だ

一部で絶賛されている『中世の覚醒』を読んだのだ。非常に面白かった。

原題はアリストテレスの子どもたち、みたいな感じだ。

レコンキスタの開始とともにトレドやシチリアにて、西洋人はアリストテレスを再発見する。そしてアリストテレスがいかに受容されていったかの物語であり、中世哲学の入門書として最適である。

歴史的背景を抜きにして神学論争だけ紹介されても困るのだが、本書はそのあたりも含めて解説されてい

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富松保文『アリストテレス はじめての形而上学』読んだ

中世哲学をヨタヨタと学び始めたが、そうすると避けて通れないのがアリストテレスである。

かといっていきなり原書を読むわけにはいかないので入門書を探したところ、これがよさそうだった。

Ciniiで検索すると著者はベルクソンとかメルロ・ポンティとかを専門としているようだが、まあいいだろう。NHK出版ならクオリティは担保されているだろう。

タイトルのとおり主に形而上学の一部を解説しているが、デ・アニ

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山内志朗『普遍論争』読んだ

山内志朗『普遍論争』読んだ

山内志朗先生の「ラテン語が一瞬で身につく夢の哲学チャンネル」を購読して、私は先生のファンになってしまった。だから今年出版された『中世哲学入門』を購入したのだ。

ところが、どこが入門やねんって感じの難易度で途方に暮れてしまったのである。

とりあえず同書でたびたび引用されている、山内先生の初期の著作『普遍論争』を読んでみることにしたのだ。

普遍論争を図式的にではなく、ちゃんと残されたテキストに即

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