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赤裸々なブックレビュー

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2024年1月の記事一覧

「『○○○』を読まない」で扱ってほしい二作

「『○○○』を読まない」で扱ってほしい二作

少し前に「『罪と罰』を読まない」という本がヒットしました。

あえて読まずにいくつかの手がかりから内容を推理し、そのうえで実際に読んで語り合う。ユニークなアイデアだと感服しました。

一方で「いや『罪と罰』なら実際に読んだ方が速い」「パッと見は重厚で難解そうだけど、ミステリィ感覚でスイスイ進むし」と感じたのも事実です。

だいぶ前に「100分de名著」がカフカ「変身」を紹介した際も同じ感想を抱きま

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「柴田&野崎」≒「奥井&林原」論

「柴田&野崎」≒「奥井&林原」論

少し前に↓が発売されました。

毛色の異なる9つの短編を収めたサリンジャーの名作。訳は文芸誌(正確には書籍扱い)「MONKEY」で責任編集を務める柴田元幸さんです。

2012年にヴィレッジブックスから出た柴田訳の「ナイン・ストーリーズ」文庫版を持っています。野崎孝訳の新潮文庫版も。ただ、柴田さんは訳に手を入れているみたいなので変化を確かめたい気持ちもあります。

なんとなくの印象ですが、柴田さん

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「作家志望の元・受験生」が「いまの受験生」にオススメしたい一冊

「作家志望の元・受験生」が「いまの受験生」にオススメしたい一冊

今日は「大学入学共通テスト」の日です。

私の頃は「センター試験」と呼ばれていました。ちなみに受けていません。志望校が私大のみで必要なかったのです。

狙いは文学部と法学部。前者は作家になりたかったからで、後者は文系っぽい感じがしたから(というか、親にそれとなく誘導された)。前者に落ち、後者に入りました。

いま思えば入学後に転部できたわけですが、そんなシステムがあることを知りませんでした。誰も教

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「本当の自由」を教えてくれた二作

「本当の自由」を教えてくれた二作

休載が長い名作マンガ。

真っ先に頭に浮かぶのは、やはり剣豪・宮本武蔵の歩みを描く井上雄彦「バガボンド」でしょうか。2015年から休載しています。

なかなか新刊が出ないので、読み返す頻度の低い巻を手放してしまいました。でも29巻だけは、いつでも開けるように机の近くに置いています。

沢庵が武蔵にこう告げるのです。

「わしの お前の 生きる道は これまでもこれから先も 天によって完璧に決まってい

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