【書籍紹介】1分で整う いつでもどこでもマインドフルネス
この度、『1分で整う いつでもどこでもマインドフルネス』(日本実業出版社)を著者の中村悟さんよりご恵贈いただきました。ありがとうございます!
本書は、2014年10月にGoogle社の提供するプログラムSIY(Search Inside Yourself)参加をきっかけにマインドフルネスに触れ、2016年にヤフー株式会社にてメタ認知トレーニング(マインドフルネス)を立ち上げられた後、現在はマインドフルネス・メッセンジャーとして活動されている中村悟さんの書籍です。
2000年代以降、国内では先述のようなGoogle社の研修プログラムや、Apple社スティーブ・ジョブズ氏も傾倒していた禅(ZEN)の実践などの文脈で紹介されてきたマインドフルネス(Mindfulness)。
2010年代〜2020年代にかけてマインドフルネスを取り巻く潮流は少しずつ変わりつつあり、健康経営における調査項目への新設やInner Development Goals (IDGs)の実践、近年ではコロナ禍における心身の健康を保つための方法論としても広がりつつあります。
今回は本書について、そもそもマインドフルネスとはどういったものか?ついても触れながら簡単にご紹介できればと思います。
また、『1分で整う』の出版プロセスについては中村さんが振り返りの記事も書かれておりますので、ぜひこちらもご覧ください。
マインドフルネスとは?
マインドフルネスの定義
そもそも、「マインドフルネス(Mindfulness)」とはどういった意味合いの用語なのでしょうか?
『1分で整う』著者の中村さんによると、以下のように紹介されています。
このように、「いまここ」に集中する感覚の大切さは、本書の表紙をめくったときに現れる「いまの気持ちは?」や、はじめにの前の書き出しにある『あなたは「いま何を感じていますか?」と聞かれることはありますか?』という問いにも現れています。
なお、上記のような「マインドフルネス」についての説明には、以下のような注釈が添えられています。
この、世界標準の定義を表したジョン・カバットジン博士(Jon Kabat-Zinn)の言葉を探ってみると、1994年出版の著書『Wherever You Go, There You Are: Mindfulness Meditation in Everyday Life』での言及などに行きつきました。
論文における表現やご本人による言葉などは、以下のものをご覧ください。
個人的には、最後に紹介した『意図を持って今この瞬間に集中し、瞬間ごとに展開する経験に判断を加えることなく、注意を払うことで生まれる意識状態』と訳せるような表現もお気に入りです。
国内におけるマインドフルネスの潮流
国内におけるマインドフルネスの広がりの発端は、私の体感ではApple社スティーブ・ジョブズ氏が禅(ZEN)に傾倒し、その哲学がApple製品にも表現されていた等とされる紹介と、急成長するIT企業として頭角を表しつつあったGoogle社による研修プログラムという、おおよそ2つの要因が大きかったと記憶しています。
欧米では鈴木大拙、鈴木俊隆、乙川弘文といった僧たちが仏教や禅・瞑想の実践を広げる中、1979年のジョン・カバットジン博士によるマインドフルネスストレス低減法(MBSR:Mindfulness-Based Stress Reduction)の開発、そして、ベトナム出身の禅僧であり活動家であるティク・ナット・ハン(Thích Nhất Hạnh)によって、マインドフルネスという語が社会的にも注目を集めるようになりました。
なお、ジョン・カバットジン博士は『Mindfulness-Based Interventions in Context:Past, Present, and Future』の中で、MBSRにおける介入はマインドフルネスが仏教を起源としつつも、仏教に由来する文化的、宗教的、イデオロギー的な要素を排除し、どのような人々にとっても、彼ら彼女らの心身の健康に資する実践としたかったといった意図も述べられています。
そして国内、特にビジネスの領域でもマインドフルネスが注目を集めるようになった契機は2012年頃。
『EQ こころの知能指数』著者ダニエル・ゴールマン氏と共にGoogle社における社員研修プログラムSIY(Search Inside Yourself)を開発したチャディー・メン・タン氏(Chade-Meng Tan)の書籍『サーチ! 富と幸福を高める自己探索メソッド』(宝島社)の出版でした。
その後、SIY(Search Inside Yourself)は2014年に国内で第1回プログラムが開催され、2016年には『サーチ・インサイド・ユアセルフ―仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』(英治出版)が邦訳出版されています。
マインドフルネスの現在
2025年現在、マインドフルネスは多岐にわたる領域で実践されていますが、以下、「心身の健康」「健康経営」「IDGs(Inner Development Goals)」という3つのフィールドにおけるマインドフルネスの実践について見ていこうと思います。
なお、マインドフルネス全般に関しては、厚生労働省の以下のサイトもご覧ください。
心身の健康とマインドフルネス
2020年代以降、マインドフルネスの実践が広がる大きな要因となったのは、コロナ禍及び、コロナ禍における心身の健康を促進する実践としてのマインドフルネスでした。
厚生労働省のポータルサイトにおける紹介のほか、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所による『COVID-19緊急事態宣言のため 自宅でお過ごしの皆様へ こころの健康を保つために 大切なこと』というスライドでの紹介が最たるものでしょう。
このほか、文部科学省のサイトでも、マインドフルネスという直接的な表現はないものの、ストレス対処法として呼吸法や瞑想法などが紹介されています。
健康経営とマインドフルネス
近年、マインドフルネスは健康経営においても言及されるようになりました。
健康経営とは、以下のように紹介される経営の考え方・指針です。
そして、令和元年度健康経営度調査の中で初めて「マインドフルネスなどの実践支援を行っているか」といった項目が新設されました。
さらに、直近の令和五年度健康経営度調査においても「マインドフルネス等の実践支援を行っている(実施場所や実施時間の確保等)」といった項目がQ59にて設けられています。
IDGsとマインドフルネス
また、現在マインドフルネスは世界的な人材育成の潮流においても取り上げられています。
2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成のため、IDGs(Inner Development Goals) という新たな人材育成のグローバルスタンダードが広がりつつあります。
そして、IDGs(Inner Development Goals)には5つのカテゴリーが存在し、以下のように紹介されています。
Being – Relationship to Self(自分のあり方 – 自己との関係性)
Thinking – Cognitive Skill(考える – 認知スキル)
Relating – Caring for Others and the World(つながりを意識する – 他者や世界を思いやる)
Collaborating – Social Skills(協働する – 社会的スキル)
Acting – Driving Change(行動する – 変化を推進する)
このうち、Being – Relationship to Self(自分のあり方 – 自己との関係性)の5つのターゲットスキルの中の1つに「自分を理解する力」が定められており、『IDGs 変容する組織』(経済法令研究会)の中では以下のように述べられています。
IDGsのtool kit及び、その一覧については以下のまとめもご覧ください。
『1分で整う いつでもどこでもマインドフルネス』の実践
以上、マインドフルネスのこれまでと現在について簡単に紹介してきましたが、マインドフルネスの実践はVUCAとも称される環境の変化が激しい現代を生きる私たちにとって不可欠の知恵と言えるでしょう。
私たちは日々、私たちの対応能力・処理能力を超えるほどの情報の奔流や環境の変化に晒され、「いまここ」で何をするべきかを見失ってしまったり、その結果、ストレス状態に陥ってしまいます。
では、『1分で整う いつでもどこでもマインドフルネス』は私たちに何をもたらしてくれるのでしょうか?
まず、本書『1分で整う いつでもどこでもマインドフルネス』のメッセージは至ってシンプル。
そのメッセージは、以下の2つに集約できるかもしれません。
そして、本書の中には日常のさまざまなシチュエーションで活用できるワークが紹介されており、自分にとって取り入れやすいものを見つけていくこともできるでしょう。
もし本記事をご覧いただいた中でマインドフルネスに興味を持っていただけたり、書店などで目にする機会があれば、ぜひ本書を手に取ってみてください。