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エッセイ・詩 / 井上イロ木

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井上イロ木のエッセイをまとめました。
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#創作大賞2024

蝶が好き

蝶が好き

 蝶はとても軽いのに、あんなにデカくて重そうな翅をもっている。そして、風の強い日でもひらひらと、瞬間移動をするように飛んでいる。

 よくもあんな飛び方で、目的地に行き着くものだといつも感心する。蝶はちゃんと花から花へと蜜を吸いに渡っていく。

 オレは常々、トンボの飛行能力、ホバリングや突然の加速力に目を奪われるが、それ以上に蝶の飛行能力の方がすごいのではないかと思っている。
 
 蝶は、台風の

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お口崩しのインスタントコーヒー

お口崩しのインスタントコーヒー

 黒色の中空二重構造のステンレスコップにいつも、インスタントコーヒーを淹れている。美味しいコーヒーの味を求めているわけでもなく、カフェインを求めているわけでもない。
 しかしお茶でも紅茶でもなく、不味くてもいいからコーヒーが飲みたいのだ。

 コーヒーという名前が重要な気がする。コーヒーを飲んでいるという行為に意味がある。何かよく分からない、美味しいのか不味いのか、いや、美味しくはないインスタント

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興味関心の時空間が狭くなっている

興味関心の時空間が狭くなっている

 興味関心が持てる範囲が時空間とも明らかに狭くなってきた。
 その範囲はその時々によって変わる。最も狭くなったときは、イマココの自分だけになるんだけど、日常的には空間は生活範囲であり、時間は長くて二〜三週間、短い時はは半日くらいだ。

 まずは地球の環境破壊について、昔はめちゃくちゃ関心があったけど、今はほぼゼロ。地球は大丈夫という確信があるというのもある。
 もちろん環境破壊の現状は、人間や他の

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両膝にきています。

両膝にきています。

 両膝にきている。これまでの運動不足と加齢で両膝への疲労が抜けきれていない。
 オレは週に二回、学童保育のアルバイトをしている。そこで小学生とサッカーやドッジボール、ケイドロやいろんな種類の鬼ごっこをする。基本的に走り回る遊びばかりだ。
 オレはあえてその遊びに参加させてもらっている。が、今週は学童保育のスタッフのスケジュールの関係で週三で、火水と二日続けて入った。ということは、二日続けて走り回っ

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人生は実践の哲学。机上の空論でなく実験せよ!

人生は実践の哲学。机上の空論でなく実験せよ!

 快調で充実した一日を送るために、早起きをし朝散歩(スロージョギング)をしているんだけど、だんだんと早起きがエスカレートしていき、四時起きになってしまった。早寝ができていない時に、四時起きもしくは四時半起きをすると、日中に眠気や気だるさに襲われてしまう。それでもせっかく習慣になった早起きをやめることはできなかった。
 早寝をすればいいんだけど、逆に少しずつ寝る時間は遅くなっていった。

 そこで今

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土砂降り散歩

土砂降り散歩

朝五時に起きると雨が止んでいた。スマホのアプリで調べてみると、十五分後から雨が降るとあった。梅雨真っ最中の貴重な雨上がりの朝。オレは今のうちだと思い、素早く靴を履くとジョギングに出かけた。

西の空にはどんよりと分厚い雲が見えるが、真上の空はところどころ薄い雲で、青色が少しだけ見える。オレは大きめの透明ビニール傘を手にし走り始めた。

東の山は前日からの雨で洗われた空気のおかげで、くっきりと稜線が

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人生は瓶に貼られたラベル剥がしみたいなもの。

人生は瓶に貼られたラベル剥がしみたいなもの。

 朝、キッチンでヤカンに水を入れガスにかけた。五徳に置かれたヤカンの下で、チチチチチと点火プラグから青色の火花が飛ぶ。ガスコンロに連動して自動的に換気扇が回り出す。オレは換気扇の音をうるさく感じるので、匂いや煙が出ない場合は換気扇をすぐに止める。換気扇の音は不快でしようがないのだ。

 水をヤカンにたくさん入れているわけではないので、その場を離れるのも落ち着かず、ヤカンを見下ろす。オレは手持ち無沙

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朝のひととき

朝のひととき

ネコが、開け放たれ網戸になっている窓枠に座って、鼻をひくひくさせながら、外を見下ろしている。外には風があり、笹がざわざわと騒いでいる。
カラスがカアカアと鳴いている。雨上がりの朝の五時。オレはテーブルでiPadを開いてエッセイを書いている。書くことがすぐに思い浮かばないから、こんなことをいま書いている。

テーブルの上に置いていたチョコレートを一欠片食べたら、急激に吐き気がしてきてびっくりするも、

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オレの性質が不便。【エッセイ】

オレの性質が不便。【エッセイ】

自分に主導権がないのに、能動的にならないといけない一時間以上の予定があると、その予定がどんなものであれ憂鬱で、前日、もしくは当日の朝から落ち着かない。嫌だなあ、めんどくさいなあ、とどうしても思ってしまう。基本的に雇われ仕事全般はこれに当てはまる。

あと、時間が決まっていることも、すごくプレッシャーになって落ち着かなくなる。始まる時間は絶対に守りたいタイプの人間で、そのために早めに行動をする。待ち

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豊な人生って、波乱万丈ってこと?【エッセイ】

豊な人生って、波乱万丈ってこと?【エッセイ】

人生を豊かにするって、なにも平和でしあわせってわけではなさそうな気がする。
「豊か」を検索してみる。

勝手に「豊かな人生」を解釈するなら、喜怒哀楽、いいことも悪いことも十分に満ち足りていて、なおかつ心や態度に余裕があって、落ち着いている人が「ああ、自分は豊かな人生を送っているなあ」と言えるんじゃないだろうかと。

ここで一番のポイントは、いま、心が落ち着いているってことだと思う。
冷静に自分の現

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神の啓示。34年前に描いた夢、いま再び【エッセイ】

神の啓示。34年前に描いた夢、いま再び【エッセイ】

高校生のときに、ほんの数ヶ月間だけ小説家になりたいと夢見た。あれから三十四年の歳月が流れた今、あらためてその夢を叶えたいと思った。

夢という困難に向かってそれに没頭することは、新興宗教にハマる、ネット商材にハマる、終末思想を信じて核シェルターを庭に作ることに似ていると思う。

それは、人生の無意味さという苦痛を忘れさせてくれる、恰好の餌になる。

オレは宗教にハマりたかった、神の啓示が降りてくる

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オレの経験は、いつまでがオレのものなんだろう。オレの経験は、どこまでがオレのものなんだろう。

オレの経験は、いつまでがオレのものなんだろう。オレの経験は、どこまでがオレのものなんだろう。

スマホ画面を見ると、Facebookのアイコンに赤い「1」のお知らせがまた表示されている。

今日、オレが投稿した朝焼けが、あまりにオレンジ色で美しく、いつもより多くの人がリアクションボタンを押してくれている。

リアクションを確認するたびに、自分で撮った朝焼けの写真を自分で見る。すごく綺麗だけど、今朝、オレは本当にそれを見たのだろうかといぶかしく思う。

確かに感動し、いつもより多くの写真を撮り

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生きている人が、まだ死んでいないことの奇跡

生きている人が、まだ死んでいないことの奇跡

「生きている人が、まだ生きていることの奇跡」
「生きている人が、まだ死んでないことの奇跡」

いま生きている人の全員が、120年後には死んでいる。地球上のすべての人間は、この短いスパンで総入れ替えがスムーズに、滞りなく行われる。

誰かがリーダーシップを発揮する必要もなければ、カリスマも暴君もいらない。

今までに親兄弟、友人知人、身の回りの人で死んでいった人は幾人もいる。病気や事故や自殺、寿命な

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その一言の奥には、すべてがある

その一言の奥には、すべてがある

浅はかなオレのこの考えや、理解も、行動も、実はその奥には計り知れないものがある。
それはすべての人にも当てはまる。

先のことをや周りの人のことをなにも考えずに、自分のエゴだけの言動があったとしても、その奥には、哲学者が悩み考えたことと同等かそれ以上の何かがある、とオレは信じている。

一瞬の思いつきには、オレのすべての人生と、先祖のDNAと、人間の歴史と、動物の、地球の、宇宙のそれらが凝縮されて

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