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読書記録

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#読書感想文

赤裸々な文章| 『結局、他人の集まりなので』

赤裸々な文章| 『結局、他人の集まりなので』

毒親育ちで兄弟との距離もつかめない、あたそさんによるエッセイ。

赤裸々に、淡々と自分のことを書くというのは、こういう文章なんじゃないかと思った。

共感したのは、沈黙が怖い、このまま過ごすと孤独感に苛まれるんじゃないか?と思うこと、1人で決めて事後報告、自分の選択肢を正解にする、料理は毎日したくないから作り置きする。

台湾旅行中に出会ったドイツ人に言われた「傷は、その人の生きてきた証である。人

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お祭り読書 |『生きるための読書』

お祭り読書 |『生きるための読書』

問題にぶつかると、それに「直接関わるような本を満足するまでむちゃくちゃに読むこと=お祭り読書」と呼んで、それで読んだ本たちについて書かれている。具体的には以下6人で、伊藤亜紗さんの話は比較的多くのところで登場する。

本書は著者の感想文的な意味合いが強いと思っていたが、どうやら、自分なりに考えてみる勉強ノートという位置付けのようだ。

「お祭り読書」に加えて、アナーキズムが本書のもう半分を占めてい

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積ん読ならぬ、積み物

積ん読ならぬ、積み物

『積ん読の本』を読んだが、積み物も日常生活には普通にある。何を当然のことを。

積み物は、ゴミなのか、ゴミでないのか。『積ん読の本』には、本棚の整理の大変さについて書かれている。

確かに本は、インテリアとして飾られることも多いが、大切なのは書いていることであって、内容は劣化しない。

物は汚れたり、傷ついたり、風化したりと、時間の経過によって使えたものが突然に使えなくなることがある。

この本棚

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システムに最適化する女子高生|羽田圭介『タブ・ートラック』

システムに最適化する女子高生|羽田圭介『タブ・ートラック』

羽田圭介『タブー・トラック』を読んだ。

この小説には配信者として売れて、整形をする女子高生が登場する。個人的に高校生ながらかなり達観しているように感じた。

分析する力や独学する力は見習うところがあると思う。が、その反面、世の中に対して冷めている。しかし、配信者がある程度成功するには、世の中が何を必要とするかを察し、自分に何ができるかを俯瞰する力が必要なんじゃないかと思ったりもする。

既存のシ

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空っぽの中に見つける自分|鳥山まこと『アウトライン』

空っぽの中に見つける自分|鳥山まこと『アウトライン』

群像2024年11月号に掲載されている、鳥山まこと『アウトライン』を読みました。

建築メーカーに勤める平田優里の会社員生活を描いた作品です。

意見を求められても説得力のある回答ができない自分、自分の強みややりたいことが出てこない自分、それでいて、自分よりも仕事のできる優秀な後輩から褒められる自分。自分がよく分からないまま執着しているスケルトンビル企画に取り組む。

自分の「分からなさ」への共感

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「その測定本当に意味ある?」|ジェリー・Z・ミュラー『測りすぎ』

「その測定本当に意味ある?」|ジェリー・Z・ミュラー『測りすぎ』

『測りすぎ』を読みました。

本書は『給料はあなたの価値なのか』で知りました。その本では、能力給を批判し、賃金格差を狭めていくことを提案しています。そもそも能力で給与を測ることが無理なこと、不正が起こることが書かれています。そんな中で引用されていたのが、『測りすぎ』です。

本書で書かれている測定の欠陥として、7点あります。

この中で私がハッとさせられたのは、「成果ではなくインプットを測定する」

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『彼女が探偵でなければ』が描くクルド人問題と私たちの無知

『彼女が探偵でなければ』が描くクルド人問題と私たちの無知

逸木裕『彼女が探偵でなければ』を読みました。

以前にも書きましたが、高山環『夏のピルグリム』のようなアニメ調のカバーにはすぐ引き寄せられます。

今回読んだ本はどうやら続編なようです。「では、なんでそっちから先に読まないんだ?」と言われたら、タイトルだけで見て図書館で予約したので続編なのは全く知りませんでした。カバーに惹かれたのは後付けです。本書は続編と言えど、短編集で、特段引きずっている設定も

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2024年に読んでよかった本91選

2024年に読んでよかった本91選

本の管理をブクログに移行した関係で、記録が3月からしかありません。9ヶ月間で読んで特に良かった本を紹介します。

書き出したら91冊ありました。まとめているものもあるので、100冊を越えています。当初は1冊ずつコメントを書こうと思いましたが、リストを作っているうちに膨大な量になったので諦めました。

ここでは抜粋して紹介します。リストだけみたい人はスキップしてください。

特に良かった本アニメ関連

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とりあえず『プロ倫』関係はひとだんらく

とりあえず『プロ倫』関係はひとだんらく

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』のまとめ記事を出してから3週間ほど経ちましたが、これで書きたいことは書けたと思います。

これからも、「成果が報われる」とか、「自分の天職」とか、「選考に選ばれる」とかの文言を目にすると、『プロ倫』がよぎることは間違いないのですが、いちいち突っ込んでいたら今の世の中やってけないので、心のうちにとどめておきます。

『プロ倫』に触れたのは、この記事が初め

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カウンターカルチャーとしてのカトリック修道院生活

カウンターカルチャーとしてのカトリック修道院生活

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(通称、『プロ倫』)に出会ったのは、『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』がきっかけだった。

今になって、燃え尽き症候群のカウンターカルチャーとして、カトリックの修道院生活を取り上げるのがよく分かる。

もちろん、著者が神学者というのもあるだろう。しかし、プロテスタンティズムの進んだ先が資本主義の強化につながったのに対して、同じキリスト教のカトリックは

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散歩と思索|『散歩哲学』を読んで

散歩と思索|『散歩哲学』を読んで

島田雅彦『散歩哲学』を読んだ。

散歩する意味について哲学者や作家の著書を元に考え、自分の東京郊内の散歩と郊外の旅を振り返る本だ。

散歩の意義だけではなく、言葉の語源も気になった。

社会生活

狩りは計画的に行っていたと考える話と、本能的にしていたという話がある。道具作りや、武器の手入れ、動物の囲い込みなど入念に準備しなければ獲物を捕らえられなかったとするもの。後者は単に、食べ物が無くなったら

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手帳と自己啓発|『プロ倫』から考える手帳術

手帳と自己啓発|『プロ倫』から考える手帳術

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、通称『プロ倫』には、合理的生活を支えるツールとして手帳がどのような役割を果たしたかが書かれている。その背景には、キリスト教精神に基づく自己省察と日常生活の聖化があります。

『プロ倫』とその後に見られる手帳の役割

『プロ倫』では、カルヴァン派が禁欲的な生活を日常に取り入れる際、カトリックの「修道院生活」を参考にしたことが書かれています。この中で重要

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適度にサボる。完璧主義を脱構築する。

適度にサボる。完璧主義を脱構築する。

書くのが面倒になってきました。そんなときの私の方法として、「習慣報告で濁す」があります。「とりあえず投稿を満たしつつ、自分の気持ちを落ち込ませない」という60点のその場しのぎです。

noteの毎日投稿を続けて完璧主義な私の鎧もだいぶ脱げました。

0より0.1を。やる気1%の中での100%を。そんな気持ちで続けています。完璧主義が病気なら、治療とでも言うべきでしょうか。

くどうれいん『日記の練

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「大人」になるってなに?

「大人」になるってなに?

「大人になりなさい!」

大人に近づきつつある中高生になってからミスをしたとき怒られる文言として使われる言葉だと思います。今の私は、年齢的に十分な「大人」なんだけれども、いまだに大人になるという感覚が分かりませんでした。

けれども、「大人になる」=「大人しくなる」と考えれば、府に落ちることがありました。

私は、大人しいという言葉を「静かに黙っていることができる」という意味で使っています。自分の

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