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書評

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#本

世界史の「点」がここにたくさんある。世界史超超初心者に向けた入門書の最高峰がついに出た!【山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史人物事典』SBクリエイティブ】

世界史の「点」がここにたくさんある。世界史超超初心者に向けた入門書の最高峰がついに出た!【山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史人物事典』SBクリエイティブ】

毎回発刊してすぐに手に入れ、読んで即こうして書評を残している、先ごろYouTube登録者数10万人を突破した「ムンディ先生」こと山崎圭一先生の『一度読んだら絶対忘れない』シリーズ。忘れもしない、自分の誕生日に3作目の『世界史経済編』が届いたと思ったら、もう4作目の『世界史人物事典』も発刊された。

さて今回の『世界史人物事典』。結論から先に書いてしまおう。

『一度読んだら絶対忘れない』シリーズ第

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ムンディ先生渾身の「経済の世界史」が教養となり、より「カタン」のプレイがおもしろくなる!?【山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 経済編』SBクリエイティブ】

ムンディ先生渾身の「経済の世界史」が教養となり、より「カタン」のプレイがおもしろくなる!?【山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 経済編』SBクリエイティブ】

いきなりだが、「カタン」というボードゲームがある。

土地の境目に開拓地と道路を置き、サイコロの出た目によってレンガや麦、木などの資源を獲得する。この資源が道路となり、開拓地となり、更に発展して都市となる。開拓地を多く置けばそのぶん資源もたくさん手に入り、都市として発展すればもらえる資源も2倍となる。さらにどうしてもほしい資源があれば「麦とレンガを交換しませんか?」などとほかのプレイヤーに持ちかけ

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それは20代にも30代にも必要な「ギリギリな自分を助ける方法」かもしれない【井上祐紀『10代から身につけたい ギリギリな自分を助ける方法』KADOKAWA】

それは20代にも30代にも必要な「ギリギリな自分を助ける方法」かもしれない【井上祐紀『10代から身につけたい ギリギリな自分を助ける方法』KADOKAWA】

このあいだ30代になったばかりだが、仕事柄10代や中高生年代に向けて書かれた本をよく読んでいる。それは別に自分の悩みに活かすためというよりかは、関わっている子どもたちに向けておすすめしたかったり、または子どもたちの悩みへ送るアドバイスの参考として読んでいる面が大きい。

だから学校の先生であったり、普段から中高生年代に関わっている大人は、こういう「10代のための~」みたいな文言がタイトルに含まれて

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まちがいない、自分も「かくれ繊細さん」の一員だ【時田ひさ子『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』フォレスト出版】

まちがいない、自分も「かくれ繊細さん」の一員だ【時田ひさ子『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』フォレスト出版】

先日大阪駅近くのジュンク堂書店に並んでいるのを見て、ついつい買ってしまった本である。決め手は「かくれ繊細さん」という耳馴染みのなかった言葉。「繊細さん」はだいぶんメジャーになってきたが、「かくれ」とははて?というその好奇心と疑問が、自分をレジへ向かわせた。

そもそもこの本で言う「かくれ繊細さん」とは、HSP全体の3割を占めると言われているいわゆるHSS(High Sensation Seekin

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思い出が邪魔して物を捨てられない僕のような人に、心の底から推奨したい片づけ本【米田まりな
『モノが多い 部屋が狭い 時間がない でも、捨てられない人の捨てない片づけ』ディスカヴァー・トゥエンティワン】

思い出が邪魔して物を捨てられない僕のような人に、心の底から推奨したい片づけ本【米田まりな 『モノが多い 部屋が狭い 時間がない でも、捨てられない人の捨てない片づけ』ディスカヴァー・トゥエンティワン】

機種変に伴って不要になったiPhoneXSを下取りに出した。この2年間、毎日肌身離さず持ち歩いていた代物である。「これでお手続きは完了になりますので」と言われ、店の外に出てからもしばらく心が痛い時間が続いた。

物を捨てるのが苦手だ。本当に苦手だ。これじゃよくない、と思って、片付けに関する本を読み漁る。でもそこに書いてあるのは

「使うかどうか迷うのなら捨てましょう」
「その物にときめかないのなら

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「この本を開いたとき、偶数ページのある・ほう」が表す言葉って?想像以上にたいへんな、国語辞典を作る裏側を知れる一冊。【飯間浩明『辞書を編む』光文社新書】

「この本を開いたとき、偶数ページのある・ほう」が表す言葉って?想像以上にたいへんな、国語辞典を作る裏側を知れる一冊。【飯間浩明『辞書を編む』光文社新書】

「南を向いた時、西にあたる方」(『広辞苑』第6版)
「北を向いたとき、東にあたるほう」(『チャレンジ小学国語辞典』第3版)
「アナログ時計の文字盤に向かった時、一時から五時までの表示のある側。〔「明」という漢字の「月」が書かれている側と一致〕」(『新明解国語辞典』第7版)
「この本を開いたとき、偶数ページのある・ほう」(『三省堂国語辞典』第4版)

異なる国語辞典から引用したこの意味を表す言葉はな

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中学生の素直な声を受け止められないのならば、絶対に読まないでください。【春名風花『少女と傷とあっためミルク ~心ない言葉に傷ついた君へ』扶桑社】

中学生の素直な声を受け止められないのならば、絶対に読まないでください。【春名風花『少女と傷とあっためミルク ~心ない言葉に傷ついた君へ』扶桑社】

久しぶりに、読後ものすごい腹立たしい感覚を味わった本だった。

それは、決して著者の「はるかぜちゃん」に対してでは、ない。

この本を上梓したときのはるかぜちゃんの年齢は、13歳。
そんな女の子が、醜い大人が抱える本質をズバッと見抜き、それを素直に指摘する。

「こんな本、13歳の子に書かせちゃいけないよ」

本を閉じるなり、そう思った。

はるかぜちゃんは、とっても素直な13歳の女の子だ。
それ

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想像してほしい。あなたの子どもが平日の朝、何時になっても起きてこないとしたら・・・?【武香織『朝起きられない子の意外な病気 - 「起立性調節障害」患者家族の体験から』中公新書ラクレ】

想像してほしい。あなたの子どもが平日の朝、何時になっても起きてこないとしたら・・・?【武香織『朝起きられない子の意外な病気 - 「起立性調節障害」患者家族の体験から』中公新書ラクレ】

「早くしないと遅刻するよ」と無理ぐり布団をひっぱがすか。
「いつまでも怠けているんじゃない」と一喝するか。
はたまた、愛想を尽かして放置するか。

「起立性調節障害」の観点から言えば、上に挙げた3つの対応策は、「大間違い」である。

中学生の息子が、ある日から突然「頭が痛い」と毎朝訴え、学校にいけなくなった。母親(著者)は最初、我が子のサボり癖を疑ったが、ふと「死人のような蒼白な顔」に気が付き、こ

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たしかに、「あたりまえのこと」が書いてあるが、問題はそのやり方だ。【ロン・クラーク『あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック』草思社】

たしかに、「あたりまえのこと」が書いてあるが、問題はそのやり方だ。【ロン・クラーク『あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック』草思社】

この本には、たしかに「あたりまえのこと」が書いてある。
しかも50個もある。
原著では55個だったそうだが、日本の教育現場でそぐわないものを5つ削ぎ落としたらしい。

・誰かが話しているときには、その人の顔を見る。
・人から何かをもらったときは「ありがとう」とお礼する。
・すべての人にあいさつをする。
・物を落としたら拾ってあげる。
・劇場や、どこかへ入るときは静粛に入場。
・いじめやいやがらせが

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「不登校は不幸じゃない」。でも、「学校は必要」?その理由も腑に落ちる、不登校経験談の集合体の1冊。【小幡和輝『学校は行かなくてもいい―親子で読みたい「正しい不登校のやり方」健康ジャーナル社】

「不登校は不幸じゃない」。でも、「学校は必要」?その理由も腑に落ちる、不登校経験談の集合体の1冊。【小幡和輝『学校は行かなくてもいい―親子で読みたい「正しい不登校のやり方」健康ジャーナル社】

この本の書評はどうしても今日書いておきたかった。

もうすぐ夏休みが終わる。実はこの時期に「18歳以下の自殺者数」というものが格段に増える。それは、2学期が始まるにあたって学校に行きたくない、学校が辛くてしんどい子どもたちが、耐えきれずに「死」の道を選んでしまうからだ。

でも、それっておかしくないか。
「学校に行く」以外に、選択肢が許されないのっておかしくないか。
もし「学校に行く」以外の選択肢

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あまりにも緻密すぎる佐藤氏の京都での学びの記録。学習意欲を刺激されたい人は手にするべし。【佐藤優『同志社大学神学部』光文社】

あまりにも緻密すぎる佐藤氏の京都での学びの記録。学習意欲を刺激されたい人は手にするべし。【佐藤優『同志社大学神学部』光文社】

正直な話、この本は読みにくい。

まず、章立てが一切ない。348ページとかなり分量は多いが、目次もなく物語がいきなりはじまり、終わるまでノンストップで駆け抜けてゆく。それに本作で扱われる神学の話や、その当時の学生闘争の話も、非常に難解かつマニアックで、予備知識なしではいったい何のことかさっぱりわからない。

しかしこの本には、仮にそれらを読み飛ばしてもなお、ある魅力がある。

この本を簡単に説明す

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大人も学生も、世界史を学びたい人は必携!現役の高校の先生が書いた「整理されすぎた世界史」の流れを刮目せよ。【山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』SBクリエイティブ】

大人も学生も、世界史を学びたい人は必携!現役の高校の先生が書いた「整理されすぎた世界史」の流れを刮目せよ。【山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』SBクリエイティブ】

高校で世界史を教えている。

世界史の教科書というものは、文章自体はわかりやすく書かれているが、「流れ」が非常にややこしい。たとえば中国文明の起こりから中国史の話が始まったかと思えば、唐が衰退するころに次のページをめくると「イスラーム世界の成立」とある。さらにゲルマン民族が大移動してフランク王国や神聖ローマ帝国が成立し、十字軍が遠征して百年戦争でジャンヌ・ダルクが処刑されて、ようやく中国史の話に戻

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広島カープが強い今だからこそ、読み返しておきたい物語。あの年、「広島」でいったい何が起こっていたのか?【重松清『赤ヘル1975』講談社】

広島カープが強い今だからこそ、読み返しておきたい物語。あの年、「広島」でいったい何が起こっていたのか?【重松清『赤ヘル1975』講談社】

広島カープが強い。気がついたら今年のペナントレースでもマジックを点灯させている。このままいけば2016年から3連覇、ということになる。

そもそもカープがはじめて優勝したのは1975年のことだった。帽子の色を赤に変えたその年、決して下馬評が高くない中で、序盤にルーツが監督を退任するアクシデントがありながらも後任の古葉竹識監督が立て直し、山本浩二、衣笠、大下、外木場らが活躍して栄冠をもたらす。それは

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