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たしかに、「あたりまえのこと」が書いてあるが、問題はそのやり方だ。【ロン・クラーク『あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック』草思社】
この本には、たしかに「あたりまえのこと」が書いてある。
しかも50個もある。
原著では55個だったそうだが、日本の教育現場でそぐわないものを5つ削ぎ落としたらしい。
・誰かが話しているときには、その人の顔を見る。
・人から何かをもらったときは「ありがとう」とお礼する。
・すべての人にあいさつをする。
・物を落としたら拾ってあげる。
・劇場や、どこかへ入るときは静粛に入場。
・いじめやいやがらせがあったらすぐに先生に言う。
・そして、きみのなれるもっとも素晴らしい人間になれ。
一部を取り上げてみたが、大事だ。たしかに大事だ。
「子どものためのルールブック」という副題がついているが、もしかしたら大人でも守れていないことがあるかもしれない。
それは、納得する。
だが、どうしても、どうしても腑に落ちないのだ。
いくら著者が「全米No.1人気小学校教師」と銘打つ先生だとしても、釈然としない。
結論から言えば、もし自分のクラスの担任がこれを持ち出してきたら、僕は絶対反抗する自信がある。
繰り返すが、この本にある50個もの「あたりまえのこと」は、たしかに大事だ。これはもちろん理解できる。こうした礼儀を教えるのは非常に大事なことも、わかる。
しかし、この「あたりまえのこと」をきちっと1年間、著者のクラーク氏の学級で仮に守らせたとして、本当に子どもたちの力として将来役立つかと言われれば、そうではない気がするのだ。
そう思う原因は、ハッキリしている。
クラーク先生は、ものすごい賞罰教育を用いる。
ルールを守った、良い結果を残したときは、お手製のクッキーをご褒美としてあげる。しかしその反面、ルールを少しでも破ろうものなら、とんでもなく過酷な罰が待っている。
宿題の量に対して文句を言えば、宿題は一気に倍になる。
移動中、誰かひとりが一言でも喋ったなら、全員その場で1分間待機を命じられる。その1分間で誰かが文句を言えば、また1分待機時間が増える。それに文句が出れば、また1分。
あまりに待機時間が伸びすぎたせいで、ある日のランチタイムが大幅に繰り下がり、他の先生が白い目を向けていたらしい。そりゃそうだろう。
このやり方は、正直言って、ただ単に自分の思うような型にはめて生徒に必要以上の権力を誇示しているようにしか読み取れなかった。そして生徒側も、あの先生のルールを破ったらとんでもないことになる、という恐怖心をもって従っていた子どもが、絶対にいたはずだ。
これでは、いくら将来に役立たせるための55個のルールと言っても、子どもたちにはまったく身につかないように思う。
この「やり方」さえ無視すれば、本当にごくごく「あたりまえのこと」がわかりやすく示されている。
大人が自分の行動を振り返るときにも大いに役立つ。
そして、自分の振る舞いを反省する材料になるだろう。