それは20代にも30代にも必要な「ギリギリな自分を助ける方法」かもしれない【井上祐紀『10代から身につけたい ギリギリな自分を助ける方法』KADOKAWA】
このあいだ30代になったばかりだが、仕事柄10代や中高生年代に向けて書かれた本をよく読んでいる。それは別に自分の悩みに活かすためというよりかは、関わっている子どもたちに向けておすすめしたかったり、または子どもたちの悩みへ送るアドバイスの参考として読んでいる面が大きい。
だから学校の先生であったり、普段から中高生年代に関わっている大人は、こういう「10代のための~」みたいな文言がタイトルに含まれている本を常日頃から読んでおくべきだと思う。
そんな中でこの本は、中高生年代でぶつかりがちな悩みに対しての対処法が多岐に、しかも事細かく記されている。大きく友だち・恋愛・家族・自分自身の4項目に整理されて取り上げられているのだが、この「悩み」というのが、本のタイトルにある10代だけではなく20代、30代の大人の悩みとしても有り得るものばかりになっている。
「友だちの前で明るい自分を演じてしまう」大人だって一定数いるだろうし、付き合っている関係でも「彼・彼女に体をさわられるのがいや」というカップル(夫婦)はいるはず。親と同居していて「親が細かいことにまで口出ししてくる」ことにうんざりしている大人はごまんといるし、「新しい環境になじめない」のは自分もよく悩んでいる。
これだけではなく、友だちや恋人関係に限らない暴力問題、さらにはLGBTにまつわる悩みまで、大人はもちろん中高生年代でもものすごく言い出しにくい、カミングアウトできない悩みにまで手厚くアドバイスを送っているのがこの本の大きな特徴だ。
この本のスタンスは「自分は守られるべき存在だ」ということに気づいてほしい、というところにある。たとえば先に書いた暴力の悩みの章では「どんな場合でも、だれからも暴力をふるわれてはいけない存在だ、ということを絶対に忘れないでほしい」と本文中にハッキリ明記されている。これに限らず、各悩みに対する回答のベースには「嫌なものは、ハッキリ嫌だと言ってもいい」という著者の思いがしっかりと根づいている。事あるごとに「安全な相談者」と表現された相談窓口へのリンク(Chapter5にまとめてある)もあり、この本が1冊あれば心強さが段違いだと思う。
よく考えたら「10代から身につけたい」なので、20代や30代の読者も想定してるところはあるだろう。その言葉ひとつひとつは平易で暖かく、あらゆる壁にぶち当たる10代を優しく包み込むような表現で書かれている。でもそこで自分は20代だし、年齢層違うし、と変に考えて受け取ろうとするのはきっと大間違いなのだと思う。たとえ10代に向けてやさしく書かれていたとしても、年齢関係なくその言葉を額面通りやさしく受け取っていいはずだ。
だって、「自分は守られるべき存在」なのだから。