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中学生の素直な声を受け止められないのならば、絶対に読まないでください。【春名風花『少女と傷とあっためミルク ~心ない言葉に傷ついた君へ』扶桑社】
久しぶりに、読後ものすごい腹立たしい感覚を味わった本だった。
それは、決して著者の「はるかぜちゃん」に対してでは、ない。
この本を上梓したときのはるかぜちゃんの年齢は、13歳。
そんな女の子が、醜い大人が抱える本質をズバッと見抜き、それを素直に指摘する。
「こんな本、13歳の子に書かせちゃいけないよ」
本を閉じるなり、そう思った。
はるかぜちゃんは、とっても素直な13歳の女の子だ。
それは、文章を読んでいてもすぐに分かる。
いじめられている子どもがいつでも逃げ込めるよう、「いじめシェルター」があればいいのに、という提案も実に素直だ。
しかし、その素直さが、ときとして大人をヒヤヒヤさせる方向に彼女を進めてしまう。この本の終わりに寄せられた、人気ブロガーのまつたけ氏による寄稿でもそのことはずばり指摘されている。
はるかぜちゃんは9歳のころからTwitterで、様々な問題提起をしてきた。
そのたびに心無い大人が罵詈雑言を浴びせるのだが、はるかぜちゃんはそれに対して「言えばわかってくれるはず」と対話の姿勢に持ち込む。
結果、さらに炎上して、さらに心無い大人があまりにも不条理なクレームや、ひどいと殺害予告まで突きつける。
中学生の女の子がちょっと意見を言っただけで、気に食わない大人たち。
「ものすごい腹立たしい感覚を味わった」のは、そこだった。
それでもなお、はるかぜちゃんは素直で、冷静な女の子だ。
そんな罵詈雑言を浴びせてくる大人たちの心の寂しさ、貧しさを、彼女はその持ち前の素直さで実に的確に指摘している。それは、大人である僕が、「13歳の女の子に、こんなことを言わせてごめんなさい」と何度も謝罪をしたくなるほど、まっすぐで純粋な正論なのだ。
この本は、13歳の女の子の素直な気持ちを受け止めきれる自信がないのなら、絶対に手を出さないほうが良い。それでも手に取るのならば、きちんと受け止められる覚悟を持って、手にしてほしい。
とは言ったものの、きっといちばん手にしなければならないのは、この素直な気持ちを受け止めきれない大人たちなのだろう、と思う。