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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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#私の仕事

「リフレクション」の効果に関する考察

「リフレクション」の効果に関する考察

ここ数年、授業の後に「リフレクション」(=振り返り)を生徒に書いてもらっている。

授業のプリントに本時の到達目標などを設定し、それに対して言語化する作業をGoogle formで入力する形式をとっていました。

それに関してのこの2年で得た知見をまとめたいと思います。

授業の流れと書かせるタイミング私の授業では、原則として15~20分程度の範囲学習解説をはじめに行います。

基本的な内容や教科

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「ギフテッド」対応の学校が民業圧迫で誰も得しない未来を生む

「ギフテッド」対応の学校が民業圧迫で誰も得しない未来を生む

特別な才能を持つ子供、「ギフテッド」に対して公教育がどう対応するか、ということが話題になっています。

文科省は何らかの対応を表面上は行うようです。

こうした特別な生徒に対しての対応に関しては、これまで前向きな施策はほとんどなかったと思います。

そういった意味では今回の取り組みを行おうとする姿勢は評価できます。

「ギフテッド」へのこれまでの対応これまで「ギフテッド」に関して無策を貫いていた公

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「埼玉超勤訴訟二審敗訴」に見る教員の働き方の問題

「埼玉超勤訴訟二審敗訴」に見る教員の働き方の問題

教員の方、特に働き方改革に興味のある方ならばおそらく注目していたであろう裁判の控訴審が原告敗訴となりました。

内容としては、労基法上は時間外にあたる時間に勤務したものに対して手当てが出ないのは違法ということで教育委員会を相手に起こした裁判になります。

給特法と教職調整額給特法の正式名称は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」というものです。

その内容を簡単に言うと

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「卒業生による大学ガイダンス」の実施に関する備忘録と、卒業生の半年での成長

「卒業生による大学ガイダンス」の実施に関する備忘録と、卒業生の半年での成長

私の勤務校では「卒業生による大学ガイダンス」を実施しています。

対象は高校2年生で、コロナ前までは実際に卒業生に来てもらって話をしてもらっていましたが、近年はリモートで実施をしています。

Google Classroomが非常に便利数年前から、勤務校ではGoogle Workspace を導入しており、Google Classroomの利用を行っています。

また、卒業生のアカウントも現時点で

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判定困難な「教員の適性」からの「でもしか先生」歓迎論

判定困難な「教員の適性」からの「でもしか先生」歓迎論

「でもしか先生」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。

主にやる気がない教員に対して使われる表現で、最初に流行ったのは1950年代というなかなか伝統ある表現のようです。

教員人気と生徒数減少その後は人材確保法(学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教職員の人材確保に関する特別措置法)や給特法の成立で、教員志望者数が一定数確保できるようになりました。

また、1990年代をピ

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リアル授業の価値の低下が教員に「教科学力」を要求する

ICT普及に伴い、リアル授業の価値が低下しています。

オンライン授業で教員側が配信するというケースもコロナ禍の初めにはありましたが、現在ではオンデマンド配信を利用するケースが増えているようです。

小学校ではNHK for School、中高でのスタディサプリや学びエイドなど多くの授業動画がそろっています。

またYouTubeにも無料で利用のものが多数存在し、学校でリアル授業を受ける価値は相対

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課題の適量は「腹六分」

課題の適量は「腹六分」

「腹八分」という言葉を知らない人はいないでしょう。

何事もほどほどが肝心、という意味です。ニュアンス的にはあと少し入りそうだが、適度なところでやめておくということでしょう。

課題を「満腹」で出す熱心さ進学指導に携わっている高校教員には非常に熱心な指導をされる方も多いようです。

特に九州では公立、私立を問わずそうした「熱血指導」、「丁寧な指導」を売りにするケースが散見されます。

そうした教員

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「本校の授業だけで○○大学に合格する」勢とどう付き合うか

「本校の授業だけで○○大学に合格する」勢とどう付き合うか

(自称)進学校に通っている生徒ならば一度は聞いたことのあるセリフがあります。

「本校の授業とその予復習にしっかり取り組めば○○大学に合格する」

この言葉を信じてよいものなのかどうか、それを高校教員の立場や視点から考察していきたいと思います。

そもそも真実なのか私が高校生のときに通っていた母校でもこうした話をする教員がいました。むしろ大半はそうした話をしていたと思います。

「本校のカリキュラ

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「道徳」教育とあの教団の教義

「道徳」教育とあの教団の教義

元総理の暗殺をきっかけに、旧統一教会の問題が大きく取りざたされています。

当該教団自体の過剰なお布施などに関しては、被害にあった方やその家族などとの民事的な問題を抱えていることは間違いありません。

また、政治の世界に影響力を持っていたというのも事実でしょう。

ただし、その影響力が他の圧力団体やロビイストと比較して大きいものだったかどうかは現時点では不明です。

今回は非常にデリケートでもある

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「始めに過去問ありき」

「始めに過去問ありき」

教員は授業を行うだけが仕事でありません。

具体的には教科担当だけでなく担任として、生徒の大学受験に向けての学習をマネジメントを行っています。
(事務仕事などももちろんありますが)

大学受験を目指す生徒(特に高3に上がってすぐの生徒や、難関大学に向けて受験勉強を始めた生徒)との面談やホームルームでの声掛けで常に口にするのが

「始めに過去問ありき」

という言葉です。

どのぐらいの知識を要求さ

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本当は教えている「○○を学校教育で教えるべき」こと

本当は教えている「○○を学校教育で教えるべき」こと

社会に出ると学生時代には知らなかった、見えていなかったことに出会うという機会が増えます。

あるいは、人生のステージを登って結婚や子育ての場面でも知らなかったことは少なくありません。

そうした知らなかったが、現実社会に必要なことに出会ったときに悔し紛れに「○○を学校教育で教えるべき」という言葉を吐く人がいます。

その気持ちは十分理解できるのですが、では義務教育で習ったことであれば社会全体に定着

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職務上の過失で個人に賠償責任を負わせるという悪しき前例

職務上の過失で個人に賠償責任を負わせるという悪しき前例

毎日暑い日が続いています、我が家でもビニールプールが活躍する時期となっています。

さて、この時期学校のプールの水を止めていなかった、という話題が目に付くようになります。

プールの管理に関する「過失」こうしたミスは過去にも、そして全国的に頻繁に起こっているようです。

Googleで検索をかけるだけでも相当な数の事例が上がります。

Yahooコメントなどでは「蛇口をひねることもできないのが教師

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ICT教具論者はICT導入に学力向上の夢を見る

ICT教具論者はICT導入に学力向上の夢を見る

前回からの緩い続きになります。

ICT導入反対論者の論拠に多いのが、「教育効果が低い」、「教育効果が向上するエビデンスが得られていない」といったものがあります。

今回はこれについて考えていきます。

ICTによる教育効果とは文字通り、ICT機器を用いた授業や学習によって得られる学力の伸びのことです。

ICTを導入することで、生徒の興味をひいたり、授業の効率化が図れるとする教員の意識調査にも表

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「ICTを使えない」という言い訳を許さない強い意志を持とう

「ICTを使えない」という言い訳を許さない強い意志を持とう

ICT環境がこの数年で教育現場にも整備されました。

他業種と比べて遅すぎた感もありますが、GIGAスクール構想などの前倒しの効果は絶大で、日本中の学校でICT機器を導入できたことは社会全体の環境改善として大きな一歩と言えます。

私は勤務校でICT推進に携わっており、授業での活用だけでなく日常利用に関しての実験を行うなどICT教育の普及に取り組んでおり、校内においての利用も大きく進んでいます。

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