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ライトノベル マークの大冒険 もうひとつの歴史

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イングランド国教会が設立したアカデミーに通うマークは、英国式の蔦這う赤煉瓦造りの美しき校舎でキャンパスライフを送っていた。日本で初めてキュレーター養成過程(博物館・美術館の収蔵品…
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記事一覧

マークの大冒険 現代日本編 | 神殺しの聖槍

マークの大冒険 現代日本編 | 神殺しの聖槍

マークの部屋で、マークと夜が話していた。ヴィクトリア朝風のクラシックな部屋の造りで、古書が大量に詰まった巨大な本棚とアンティークの机が特に目を見張る。机の上にはシェイクスピアの『真夏の夜の夢』とワーグナーの『ニーベルングの指環』の挿絵本が飾られており、その傍らには聖母マリアの銀製彫刻が置かれている。陽光が注ぐ出窓には香料が置かれており、ウッド系の優しい香りが部屋を包んでいた。マークと夜は向かい合う

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マークの大冒険 現代日本編 | 遣わされし者、第15使徒

マークの大冒険 現代日本編 | 遣わされし者、第15使徒

「アイ......オーン......」

夜はそう呟くと地面に倒れ込み、彼女が持っていた果実は足元に落ちて転がった。だが、その果実を拾い上げる者がいた。果実を拾い上げた者は、倒れた夜の背後から急に姿を現した。男は白色の亜麻布製ローブを着ており、フードを深く被っていた。顔には影が落ち、よく見えないが、彼はマークの方をぼんやりと見つめていた。

「久しぶりだね、マーク」

「アイオーン.....!?」

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マークの大冒険 現代日本編 | 新たに旅立つ者たち

マークの大冒険 現代日本編 | 新たに旅立つ者たち

前42年、古代ローマ、フィリッピにて____。

ローマのフィリッピでは、激しい戦いが繰り広げられていた。そこでは若き日のマークが、今まさに黄金の果実を使おうとしていた。

「アムラシュリングにあんな使い方が?あの時のボクより確実に賢い。いや、未来から来たボクが関わり、この戦いの中で急激に成長したのか?」

マークは、若き日のマークの戦い方が自分の記憶より格段に上であることに違和感を覚えていた。

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マークの大冒険 現代日本編 終章 リトル・サンクチュアリ | ゴールデン・アフタヌーン、放課後はキミのいる古書店で

マークの大冒険 現代日本編 終章 リトル・サンクチュアリ | ゴールデン・アフタヌーン、放課後はキミのいる古書店で

アイオーンの胸にロンギヌスの槍が突き刺さっていた。

「10年越しにやっと決着がついたな」

マークは胸にロンギヌスの槍が刺さったアイオーンを見て言った。

「目覚めの時が来る。キミは元の器に戻る。果実の代償は、夢から目覚めること。オリエンタル・ウィンドでの目覚め。指輪が持つ記憶の忘却は夢から覚めないための救済であって代償ではない。指輪は見たい幻想をいつまでも見させてくれる器」

「どういうことだ

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マークの大冒険 古代エジプト編 | 青き春の思い出

マークの大冒険 古代エジプト編 | 青き春の思い出

授業が終わり、次の授業までの移動時間、マークたちはキャンパスの中を歩いていた。そして、どの大学でも恒例と言える男子学生の間の女子の品定めトークが行われていた。

「あさみん、良いよな。普通に可愛い」

「俺はながれんかな」

「ながれん彼氏いるで」

「マジかっ!それどこ情報?」

「一週間くらい前に増田から聞いたけど」

「ショックなんですけど!」

「女子なら幾らでもいるだろ。次はフラ語の子狙

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マークの大冒険 現代日本編 | 全てを超えし者

マークの大冒険 現代日本編 | 全てを超えし者

10年前、エジプトの荒野にて_______。

エジプトの荒野に突如出現した巨大な岩柱。その上で、マークがアイオーンに問いかけていた。

「お前の目的は、何なんだ?」

「目的?それを聞いて何になる?」

「それが、ボクの生きる意味だからだ。だから教えて欲しい。自分の人生に納得するために、ボクはこの世界の真実が知りたい」

「面白い。いいだろう。教えてやろう。救済には、世界線の統合が必要だ」

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マークの大冒険 現代日本編 | 過去を引き摺りし者

マークの大冒険 現代日本編 | 過去を引き摺りし者

「賭けてみても良いのかもしれない.....」

マークはこもった声色で呟いた。

「はっきりしねえな」

ホルスがぼやいた。

「分かった。行こう。あの日のローマに」

「そう来なくっちゃ!」

夜は微笑を浮かべた。

「それで、キミのお父さんは、どんな人なんだい?」

マークが夜に訊ねた。

「気になる?ママの相手が知りたいんでしょ?どんな人と結婚したのか」

「いや、別に......。ただ、瞳

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マークの大冒険 現代日本編 | 後悔に溺れし者

マークの大冒険 現代日本編 | 後悔に溺れし者

10年前、ウェスタの間にて_______。

「本当は黒髪だったんだね。そっか、ローマだもんね」

「そうね。ほんの遊び心だったけど、ブロンドもなかなか似合っていたでしょ?」

「うん。誰よりも綺麗だった」

「そう」

「......ボクはキミが好きだった。初めてキミを見た時から。書架と向き合っていたその横顔がこちらを向いて、目が合った瞬間、既にボクの心は奪われていた。だから、キミがいるあの場所

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マークの大冒険 追憶のバルベーロー編 | 再臨

マークの大冒険 追憶のバルベーロー編 | 再臨

13人の男女の足元が突然、轟音を鳴らしながら揺れ出した。すると、地面が勢いよく盛り上がり、柱のように突き出していった。13人の男女は揺れに耐えながら、天へと近づいていく。空には灰色の雲が立ち込め、当たりは急に薄暗くなった。分厚い雲の間から稲妻がところどころに走っている。揺れが収まりしばらくすると、空が閃光を放った。そして、13人の男女の前にフードを被った一人の男が姿を現した。

「師よ!」

弟子

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マークの大冒険 追憶のバルベーロー編 | 再会

マークの大冒険 追憶のバルベーロー編 | 再会

現代、エジプトの荒野にて_____。

「ユダ、これはどういうことだ!お前が俺たちをここに?」

荒野に13人の者たちが円を描くように向き合って立っていた。突然の再会と復活にユダ一人を除いては驚きを隠せない様子だった。

「相変わらず荒々しいなペテロ、久しぶりの再会だというのに」

「自分の過ちを考えろ!ユダ、なぜ裏切った!!」

「黙れ、全ては師のお考えだ。もうじき師もここにいらっしゃる。それで

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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第5回

冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第5回

さあ、今回でボクと学ぶローマ帝国史は、第5回目となる。前回はローマ・サビニ戦争の最中に登場したタルペイアというウェスタの巫女のお話だったね。ウェスタの巫女はローマではかなり優遇された身分で、劇場の最前列の席が用意されたり、引退後は年金で生涯生活には困らなかったり、周囲が羨む役職でもあったんだ。ただし、30年間の役職を全うするまでは、交際や結婚は一切許されないという制約もあったのだけれどね。そんな金

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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第4回

冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第4回



さて、今回でボクと共に学ぶローマ帝国史は4回目となる。ローマの歴史はとても長い。だから、ローマの歴史は大きく分けて、王政期、共和政期、帝政期の3つに区分されるが、王政期以前のギリシア神話を含むとさらにボリュームを増す。

そんなわけで、第4回にしてまだ王政期であり、尚且つ初代王ロムルスのエピソードである。この後に6人の王が続き、ローマの王政期は計7人の王によって統治された。最初はローマ人、次は

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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第3回

冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第3回

ローマは如何にして帝国に成り得たのか?その成り立ちを見ていこう。ローマは偉大にして永遠なり。彼らの軌跡と栄光をコインの図像と共に追っていく。

前回までのあらすじ
トロイア王国は、アカイア軍のオデュッセウスが考案した木馬作戦の策略にかかり、一夜にして焼き払われた。だが、トロイアから命辛々脱出した王子アイネイアスは、亡命の末イタリア半島に辿り着いた。イタリアを北上した彼は最終的にラティウムと呼ばれる

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