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#邦ロック
箱庭の正しさについて/9.21 UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2024『20th BEST MACHINE』@福岡サンパレス
ユニゾン結成20周年を記念する、7月リリースのベストアルバムを引っ提げたツアーの福岡公演に行った。事前にシングル曲をメインとしたセットリストになることがインタビューで予告されており、普段のように過去のアルバムからも満遍なく選曲するツアーになることは明白であった。ベストアルバムの収録は20曲以上、普通に全てやればワンマンの尺は足りてしまう。ある意味、これまでで最も何を演奏するかを想像しやすいツアーで
もっとみる境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】
橋本絵莉子の2ndアルバム『街よ街よ』に感動しきっている。前作『日記を燃やして』では柔らかなアレンジはアコースティックギターの音色も印象的だったが、本作はずっしりとしたグルーヴを活かしたロックバンドらしさ溢れる1作。ライブでの経験値が制作にも反映された好例だろう。
40歳を迎えた橋本が自身の年齢を「若くもないけど老いてもいない、この感じがちょうど踊り場っぽいなって。(中略)ただスッと過ぎていくだ
戻れないけど消せもしない/Base Ball Bear『天使だったじゃないか』【ディスクレビュー】
子どもが生まれてから生活は変わった。粉ミルクを溶かす時間がルーティーンに組み込まれ、泣き叫べばオムツを変え、それでも泣き続けるならば抱っこする。当たり前のことだが、妻とともに育児に向き合う日々は去年までの自分とは全く違う。しかし買い物に行ったり、出勤したりする時にはいつも1人。そんな時、慣れ親しんだ音楽を聴けば自分が我が子の親になったという事実と同時に、今までと変わらない自分もまたここに居続けてい
もっとみる2023年ベストアルバム トップ20
今年はびしっと厳選して20枚で1年を総括。ライブカルチャーの復権と揺れる世界、喜びも悲しみも猛スピードで切り替わる時流の中で、この音楽を聴いてる間はきっと大丈夫だ、と思えたアルバムを選びました。
20位 ROTH BART BARON『8』
三船雅也がドイツに拠点を移してからの1作目。ここしばらく毎年凄まじいアルバムをリリースし続てけいるが、本作はまた違う場所へ飛ぼうとする萌芽を感じた。エレキ
2023年ベストトラック トップ20
今年からは20曲に。選りすぐりの良い"うた"ばかりです。
20位 Cody・Lee(李)「さよuなら」
つくづく彼らは生活のバンドなのだな、と思う。メンバー脱退をここまで明け透けに歌にするとは。本当の想いを隠し切れないという誠実さ。
19位 Bialystocks「幸せのまわり道」
フォークの装いでどこまでリーチできるか、それを何歩先にも進めてしまう存在が、ど真ん中を撃ち抜いてきた。この温かさ
アジカン精神分析的レビュー『プラネットフォークス』/他者と生きるためのエンパシー
10thアルバム『プラネットフォークス』(2022.03.30)
このアルバムの制作はコロナ禍に突入する時期に大半が行われた。2020年以降、世界中で猛威を奮ったウイルスがもたらした影響は計り知れない。アジカンもライブツアーが中止となり、ライブ活動が再開になった後も観客からの声がない「リライト」や「君という花」を演奏をし続けた時期もあった。通常ではない日々を積み重ねる中で本作は少しずつ形になって
アジカン精神分析レビュー『ソルファ(2016)』/来たる壮年期のために
『ソルファ(2016)』(2016.11.30)
2004年にリリースされた2ndアルバム『ソルファ』はアジカンの代表作として語られ、評価も結果も充分な作品として愛されてきた。代表曲も多く収録され、アジカンの名を広く知らしめたアルバムである。しかしこの作品はメジャーデビュー後、曲のストックを使いきったアジカンが初めてのツアーやフェスなどを乗り越えながら、怒涛のスケジュールで完成させたものだ。
アジカン精神分析的レビュー『Wonder Future』/物語と轟音はシステムに抗えるか
8thアルバム『Wonder Future』(2015.05.27)
中村佑介のイラストが載っていない、ただ真っ白なジャケットにエンボス加工されたタイトル。明らかに今までとは一線を画すデザインで届けられたのはアジカン史上最もラウドなロック・アルバムである。『Wonder Future』はFoo Fightersのプライベートスタジオ「Studio 606」にてレコーディングの大半が敢行され、その
アジカン精神分析的レビュー『ランドマーク』/グリーフケアとしてバンドミュージック
7thアルバム『ランドマーク』(2012.09.12)
前作『マジックディスク』を携えた半年間に及ぶツアーの中、アジカンは解散目前だった。『マジックディスク』を中心となって作った後藤正文(Vo/Gt)が他メンバーに要求するものが変化し、後藤と山田貴洋(Ba)の間で音楽的なズレが生じたことが決定打となり、このツアーを終えた時点での解散を後藤は考えるに至ったという。しかしこのツアーは2011年3月1
アジカン精神分析的レビュー『マジックディスク』/語り直しと混ざり合い
6thアルバム『マジックディスク』(2010.6.23)
前作から1年7ヶ月ぶりのアルバム。リリース当時の音楽シーンはYouTubeが興隆し、Soundcloudなど新たなプラットフォームが台頭、定額音楽配信サービスの上陸も予感される中で、"CD"というメディアそのものを見つめたようなアートフォームで『マジックディスク』は作られた。8面に及ぶ巨大なジャケット、AR機能を搭載した円盤など、様々な試
アジカン精神分析的レビュー『サーフ ブンガク カマクラ』/今を肯定するノスタルジア
5thアルバム『サーフ ブンガク カマクラ』(2008.11.5)
11thアルバム『サーフ ブンガク カマクラ(完全版)』(2023.7.5)
2008年にリリースされた2枚目のフルアルバム。江ノ島電鉄の駅名を冠したタイトルの楽曲を藤沢から鎌倉に至るまで順番通りに揃えたコンセプト作品で、サウンドはパワーポップに傾倒し、レコーディングはやり直しや修正ナシの一発録り。歌詞も従来と異なり甘酸っぱい
2023年上半期ベストアルバム トップ10
例年よりは遅れてしまったけれども、今年も上半期ベストnoteを書き上げることができた。良い歌モノとの出会いのきっかけになればこれ幸い。どのアルバムも、すごく優しい、というのは共通点かもしれない。心に寄り添うという作品が年々好きになっている。下半期も、音楽に抱えられていきたい。
10位 クラムボン『添春編』
蛙化現象という言葉がZ世代の流行語であり、しかもそれがYouTuberの動画を基に流行し
アジカン精神分析的レビュー『ワールド ワールド ワールド』/“自分”として現実界に挑む
4thアルバム『ワールド ワールド ワールド」(2008.3.5)
2年ぶりの4thアルバム。『ファンクラブ』から継承した複雑なアレンジを維持したまま、より外向きに、ポップに開けた楽曲たちが集まった本作。肉体は変わらないままで精神的姿勢に変化をつけたような作風と言える。ジャケットも前作はモノクロで正面を向いた少女、本作は極彩色で背中を向けた少女であるなど対を成しており、前作と明確な対比が付けられ
男性ブランコ『やってみたいことがあるのだけれど』とスピッツ『ひみつスタジオ』
男性ブランコのコントライブ『やってみたいことがあるのだけれど』を配信で観た。繊細な詩情に満ちたコントを元より得意としてきた男性ブランコだが、本作ではほぼ全コントが10分近くの尺があり、賞レースで消耗させる気のない作品性がある。トニー・フランクによるアコギの生演奏を劇伴にするなどその作りは演劇的。この方向性を磨くことに腹を決めたように見える。
そして最も唸ったのがそのコントの見せ方。現代漫才の中で