箱庭の正しさについて/9.21 UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2024『20th BEST MACHINE』@福岡サンパレス
ユニゾン結成20周年を記念する、7月リリースのベストアルバムを引っ提げたツアーの福岡公演に行った。事前にシングル曲をメインとしたセットリストになることがインタビューで予告されており、普段のように過去のアルバムからも満遍なく選曲するツアーになることは明白であった。ベストアルバムの収録は20曲以上、普通に全てやればワンマンの尺は足りてしまう。ある意味、これまでで最も何を演奏するかを想像しやすいツアーであった。
しかし始まってしまえば想像は容易く裏切られる。やるとは思っていた曲をやりはするが、それを立て続けにライブで聴くことがこれほどまでただごとじゃない迫力を帯びるものだとは。「センチメンタルピリオド」で颯爽と始まったかと思えば、「Invisible Sensation」「カオスが極まる」とクライマックス御用達な楽曲が続くし、4曲目にして「オリオンをなぞる」も投下。1曲ごとにより濃く深く重ね塗りされていくような濃厚なオープニングだった。
珍しく斎藤宏介(Vo/Gt)のMCもあった。「特に気合いを入れて作った曲たちを」と前置きした後、歌われた「流星のスコール」は個人的にはずっとライブで聴けてなかった曲だったので待望だった。そしてこのツアーで聴く意味を深く感じた。ベスト盤でもこの曲を境に、明確に“届ける”という覚悟が強まった印象を受けたからだ。彼らの現在はこの曲で描いた意志の延長にある。そんな名曲が目一杯の祝福を会場へと降り注いでいるように見えた。
それ以降も無茶苦茶な選曲が続き、圧倒されっぱなし。いつものツアーのようにシンプルかつサクッとした曲や気の抜けたオルタナ曲を組み込めないことから「kaleido proud fiesta」からの「春が来てぼくら」や、「いけないfool logic」からの「Phantom Joke」など曲調の振れ幅によってライブの展開をシンコペーションするしかなく、もれなくハイカロリーな楽曲が次々押し寄せる。運んでくる感情も様々ゆえ、混乱と興奮でクラクラしてしまった。
この流れの中で「Numbness like a ginger」は光っていた。ここまでの中で唯一シングル曲ではない(タイアップ曲ではある)が、ゆえに重要な選曲に思える。
この曲が収録された、現時点での最新アルバム『Ninth Peel』はこの記事でも書いたようにユニゾンの見られ方に対して構えなくなった作品である。この在り方に辿り着くまでは今回のベスト盤の序盤に記録された様々な葛藤があり、まさに“采配権“を握られ、誰かの都合に合わせられる時期があったのだ。そんな自分たちをバンド名にちなんで《実によくできすぎた箱庭ですこと》と揶揄しつつ、それを《どうでもよくなった》と受容する楽曲として解釈できる。
今回のツアーは20年かけて手にした、“見られ方なんて些末なことであり今ここにある音がすべて”という境地を全国各地で確かめるという意義がある。“君の街まで会いに行く。ちゃんと幸せになるために。”というツアーのキャッチコピーじも滲むその思いは「Numbness like a ginger」、そして斎藤が「20年分の感謝をこめて」と真っ直ぐな前置きをした後に演奏された「アナザーワールドエンド」で濃く表現された。
普段の起承転結のメリハリをいったん中断し、じっくりと「アナザーワールドエンド」を聴かせる時間を設けたのも今回のライブの特別さを物語っている。瞬間の高揚感を求めながらも、決してインスタントには消費させない。それどころか、何もかもの価値がひっくり返った先にも、きっと届く人がいると信じている、それがユニゾンの音楽なのだ。この日、彼らが目いっぱい拍手をもらう時間をあえて設けていたのは照れ隠しのようでいて、20年間を真正面から誇る姿勢そのものだ。
終盤はどこを切り取ってもクライマックスに相応しい猛烈なもの。どこまでいってしまうのかと恐怖すら覚えるほどにブチ上げ続ける。ラスト3曲は少し意外に思えたが、最後を飾った「Catch up,latency」は聴きながら思わず涙が滲んできてしまった。これ以上なく、ユニゾンの歩みを肯定する曲として聴こえたからだ。このライブの最後に《敬具 結んでくれ/僕たちが正しくなくても》と歌う美しさに、打ち震えるしかなかった。
3人それぞれが固有のミュージシャン/アーティストとしての美学を持ちながら思い思いに暴れつつ、それがどういうわけか重なり合って複雑怪奇な楽曲を織りなす。3つの箱庭が合奏する、という意味でバンド名もつくづくしっくる来るようになったのがこの20年と言える。そのやり方が正しくなくても、やり通すことでひとつの正しさと胸を張れるようになるのだと彼らは証明している。これからもただひたすらに音楽の高揚感そのものを掴まえ続けていってほしい。
《setlist》
1.センチメンタルピリオド
2.Invisible Sensation
3.カオスが極まる
4.オリオンをなぞる
-MC-
5.流星のスコール
6.リニアブルーを聴きながら
7.10% roll, 10% romance
8.kaleido proud fiesta
9.春が来てぼくら
10.Numbness like a ginger
11.Nihil Pip Viper
12.いけないfool logic
13.Phantom Joke
14.アナザーワールドエンド
セッション
15.桜のあと (all quartets lead to the?)
16.MR.アンディ
17. fake town baby
18.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
19.シュガーソングとビターステップ
-MC-
20.crazy birthday
21.スペースシャトル・ララバイ
22.Catch up, latency
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