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文学の特権(ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』)
おもしろい比喩だ。
海外小説での人物描写は、目の色や髪の毛の色にこだわったものが多く(日本の小説ではみんなどちらも黒だから取り立てて言うことがないわけだが)、唇も性的なアピールとして描かれることはあるだろうが、「子供が描いた飛ぶ鳥の絵」に例えるというのはめずらしい。
女性の唇の性的な要素を子供っぽく抽象的なもので中和して、無機的な世界を演出しているということだろうか。
女性との思い出をノスタ
新しい大衆小説と神経漫遊者(ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』)
読み始めてしばらくして、ふと「ニューロマンサーってネクロマンサー(死人使い、降霊術)のもじりだったのか!」と気づいた。
調べてみると、半分当たっていた。
ウィキペディアによると、あとの半分は New Romance (新しいロマンス)をもじったもの、ということらしい。この場合の「ロマンス」とは、恋愛小説というより、大衆小説のことだろう。
次に、「ニューロン(神経)」はわかるけど、「マンサー」
【読書感想文】セス・グレアム=スミス『高慢と偏見とゾンビ』(2009)
半年くらい前にこの本をセールで買って(今見ても199円だ。もしかして定価か?)、予習として原作を5カ月くらいかけて読んだ(たぶん再読)。
原作はさすがに面白かったけど、この本は20%ほどで挫折した。
原作にときどきゾンビと武術と武器の話がでてくるだけなんだもの。原作を読んでなかったら楽しめたかもしれないが、まさか原作を先に読むべきでないパロディ本があるとは思わない。
共著者にちゃんとジェーン
処女性と可用性【名詞】Availability
YouTubeの動画Japan's MOST SHOCKING Weather Girl OUTRAGE(日本のお天気お姉さんのショッキングな炎上事件)(2023)より。
日本の文化が海外でどう評価されているのか、という動画をいろいろ観ていたら上がってきた。
なお、上の引用は文字起こしとディクテイションによるものなので、正確かどうかは分からない。
私は全然知らなかったが(似たようなニュースは
19世紀イギリスの平安貴族たち【名詞】monosyllable(ジェーン・オースティン『高慢と偏見』)
高慢なダーシーの妹と初対面した主人公エリザベス。妹も傲慢だと聞いていたが、実際はとんでもなく内気で控えめな女性だった。
ここで気になったのは monosyllable. 単音節語のことで、英語の学習書や文法書くらいでしか見かけたことがなかったので、めんくらった。こんな使い方ができるとは。
直訳すると、「ダーシー嬢から単音節語よりも長い単語を引き出すことさえ、エリザベスは難しいと感じた」というこ
プライドは重力に支配されている(Jane Austen / Pride and Prejudice )
感じの悪い紳士ダーシーに対するベネット家の読書家メアリーの評である。Pride と Vanity の違いを論じている。
すべて「自尊心」と「虚栄心」などで統一して訳すべきなのかもしれないが、日本語ではなんとなくうるさく感じるので、全部変えてみた。それはそれで分かりにくいか。
こうして並べてみると、自尊心と気位とプライドは「高さ」で程度を表現できるが、虚栄心と飾り気と見栄はできないようだ。
虚
英語になった中国語【動詞】kowtow (David Kirkpatrick / The Facebook Effect )
フェイスブック黎明期の逸話より、投資家が見た創始者マーク・ザッカーバーグの印象。
kowtow って英語っぽくない単語だなあと思ったら案の定、中国語由来だった。
漢字で書くと叩頭 kou4 touで、ぬかづくこと。
本来、最高の敬意をはらう行為だが、英語では「追従する」「へりくだる」という意味になっている。
似た言葉に bowwow がある。犬の鳴き声を表すオノマトペとして定着しているが、
測り知れない恐怖【形容詞】unplumbed(H. P. ラヴクラフト『闇をさまようもの』)
異教徒の教会で召喚される怪異と、それに魅入られた作家の狂気を描いた短編より。
とかく抽象的で分かりにくい文章ばかり書く作家だが、それを読むのがまた癖になりもする。
今回気になったのは unplumbed 。plumb は「鉛錘」「(測鉛で)〈海などの〉深さを測る」の意。unplumbed は「測深されていない」「深さの計り知れない」という意味だ。
日本だと「千尋の谷」などと大きな数字を使って
『ユリシーズ』と『ドルアーガの塔』はちょっと似ている【伝承】Will o’the wisp
20世紀を代表する小説のひとつとされながら、難解すぎて読破する人がほとんどいないことでも有名な『ユリシーズ』より。
主人公のひとりブルームが、友人の葬式に参列中、墓守はどうやって女を口説くのか?について考えている場面である。
なかなかの不謹慎である。まあ文学とは、人間とはそういうものではあるのだが。
ご存じない方には、どこらへんが世紀の傑作なのかを、この抜粋からお伝えするのはなかなか難しいし