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読書記録

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2021年5月の記事一覧

世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方(八木仁平)

世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方(八木仁平)

ここ数年、自己啓発系の本はほぼ読まなくなった。
書いてある内容といえば、全てが哲学や宗教的な視点、心理学的な視点か、もしくは武勇伝に思えることが多くなり疲れてしまった。
それを読むなら心理学、哲学のプロが大昔に書いた本を読み、自分なりの理解に変換したいと思うようになってしまったからだ。

本書も手にとる前は、怪しい…と思っていたのだが(失礼)、目から鱗だった。
私が読書記録SNSを始めることになっ

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子どもと悪(河合隼雄)

子どもと悪(河合隼雄)

親のための本というよりは、この日本社会に疑問を持って、生きづらさを感じる人のための本かもしれない。

谷川俊太郎氏や、田辺聖子氏との対談を元にしたエピソードも含まれていて、面白い。

本書は、いわゆる悪といわれる「窃盗」「自殺」「うそ」「秘密」「性」や、「いじめ」などの社会的な問題も含めて、子どもと親がどう向き合うかだけでなく教育現場や日本社会への問いかけをしている。

・盗みはなぜ悪いか?
・人

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ジヴェルニーの食卓(原田マハ)

ジヴェルニーの食卓(原田マハ)

原田マハさんの描く印象派画家たちの人生。
マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌ、モネーー

画家本人ではなく、一番近くで愛を持って見守っていた人々の目線で描かれる彼らの本質。だからこそリアリティに溢れているのだ。

画家は、自らを語らない。いや、おそらく言葉では語れない。自分自身のあらゆる側面を、幾たびも目の前のキャンバスに写し出してきた。それを見ればわかるのだ。彼らの描く絵は、彼ら自身であり、本質な

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ウィステリアと三人の女たち(川上未映子)

ウィステリアと三人の女たち(川上未映子)

自分の本質が姿を現す瞬間とは、いつどんな時だろうか。

自分がどんな人間か、と聞かれた時に、こういう人間ですと言い切れる人は少ないと思うのだ。
この人といる自分、あの人といる自分、一人の自分、大勢の中にいる自分ーーー
みな自分を使い分けて生きているし、これと言った定義ができないのではないだろうか。
ある日突然、知らない自分が顔を出すことだって大いにある。
例えば、口に出す言葉とあなたの態度は常に一

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科学者たちが語る食欲(ディビット・ローベンハイマースティーブン・J・シンプソン)

科学者たちが語る食欲(ディビット・ローベンハイマースティーブン・J・シンプソン)

食事のあり方、身体への向き合い方、自然との向き合い方が変わるかもしれない本だ。

本書は、虫(特にバッタ)、ネズミ、ゴリラ、猿、そして人間と食欲についての研究・実験を重ねた科学者たちの努力の結晶と言ってもいい本だった。

◆あなたに必要なタンパク質は決まっている
1日のうちで必要なタンパク質量は、母親のお腹の中にいる時〜乳幼児期に大体決まるらしい。
高タンパク低カロリーの食事は、繁殖期には最も良い

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三人の女たちの抗えない欲望(リサ・タッデオ)

三人の女たちの抗えない欲望(リサ・タッデオ)

これはただの官能小説ではない。
今もどこかで、意外と近くで起きている人間の欲望のリアルだ。
そして、社会的価値に振り回されて生きている人間のリアルだ。

人はみな、愛し愛されたいと思っている。
その欲望が、当たり前のように女にもある。
そして当たり前のように性欲もあるのだ。
しかし、女が男に選ばれるためにはそもそも容姿端麗で海外で言うとHotな女でないといけない。性的に魅力的に映るように着飾り、誰

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真昼なのに昏い部屋(江國香織)

真昼なのに昏い部屋(江國香織)

"明るい不倫小説です。"

これは本書を読んだ他の誰かのレビューだ。
その一文に興味を持ち、手に取ってみた。
短めの小説だが、読み終わった後じわじわとくるものがある。
まぎれもなく"明るい不倫"だった。
不倫は、悪いことですか?
あなたは、悪いと言い切れますか。
これは、1人の女性の再生の物語だ。

本書を、この次に書きたいと思っている『三人の女たちの抗えない欲望』というノンフィクション小説にも繋

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13歳からのアート思考(末永幸歩)

13歳からのアート思考(末永幸歩)

一枚の絵画を見て、あぁきれいだな、
で終わらせず、どこからそう思う?そこからどう思う?と思考を深めていく。
それは過去・現在・未来をつなぐ自己探究のような、他者とのつながりを感じることができる行為だ。
絵の横の解説を読むよりも、断然面白いのだ。

本書は、美術の歴史を追いながら、少しずつ歴史背景とともにアートの変化・変容も学べる。
美術とはなんぞ?むしろ美術は苦手…
という人にこそおすすめしたい。

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⬛︎読書記録 これからの男の子たちへ(太田啓子)

⬛︎読書記録 これからの男の子たちへ(太田啓子)

これからの男の子たちへとタイトルにはあるが、これは決して男の子だけの話ではない。
そして、子育てをしている人だけに対する本でもない。
世間からジェンダーの観点で向けられるまなざしに対して、少しでも違和感を覚えたことがある人にはぜひ読んでほしい。
幼い頃から意識し、刷り込まれる"男ならこうあるべきだろ!"という『有害な男らしさ』に対して切り込み、向き合う背中を押してくれる本だ。

今の社会は、男性に

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⬛︎読書記録 くらしのための料理学(土井善晴)

⬛︎読書記録 くらしのための料理学(土井善晴)

一汁一菜でよいという提案を読み、とても良かったのでこちらも読んでみた。世界観はもちろん繋がっているので、同じような内容も書かれてはいるが、こちらの方が短く、おそらく軽く読めるので、おすすめしたい。
全ての毎日頑張って生きている人に響く哲学だと思う。
『頑張りすぎたらあかん。程よく手を抜いて、生きることを、自分自身を肯定していこう。』
そんな風に私の背中を押してくれたのだ。

土井先生は、よくSNS

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⬛︎読書記録 源氏物語と日本人-紫マンダラ-(河合隼雄)

⬛︎読書記録 源氏物語と日本人-紫マンダラ-(河合隼雄)

マニアックだけれどかなり興味深い考察が書かれておりサクサクと読めた。
源氏物語は、ただの光源氏というプレイボーイの話ではないのだ。紫式部という女性が『個』としての生き方を探求した、壮大な曼荼羅図なのだ。と解釈した、素晴らしい考察書だった。

源氏物語。
これは女の生き方の提案である。
紫式部からの、1000年の時を経て私に届いた、新たな『個』としての女を生きよという提案なのだ。

まずは簡単に私と

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◆読書記録 夏物語(川上未映子)

◆読書記録 夏物語(川上未映子)

彼女の小説は好きだ。
大阪独特の抑揚のある話し方、息遣いも感じられるような独特な文体だと思う。

去年8月に購入して、結局読んだのは手術前後だったので11月ごろだった。
今更ながらに記録しておこうと思う。私にとって大事な小説だからだ。

まず読み終わって、「生まれてきて良かったと思うのか、思わないのかは一体どうやって決まるんやろうか」ということを真剣に考えた。
自分の子供にそう思ってもらえるのって

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⬛︎読書記録 差別感情の哲学(中島義道)

⬛︎読書記録 差別感情の哲学(中島義道)

ここまで心を抉られた本は今まで出会ったことがなかった。出会えてよかった。ほんとうにそう思う。

本書は疑問を投げかけてくれた。あなたの『普通』は誰かの『普通』ではない。

冒頭は、すべての差別や悪の感情を抑え付け、なくすことは可能か?そしてそんな世界は面白いのか?様々な感情があるからこそ人間であり、悪の感情も人間存在を輝かせる宝庫であると述べている。人間だからこそ攻撃本能があり、敵がいるから味方が

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