部屋の隅。ほつれたタオルケットにくるまっている。 閉めっぱなしの青いカーテンの隙間に…
素足に絡まる海辺の砂は、夏の熱を飲みこんでじりじりと皮フを焼く。 白いサテンのリボン…
――夢のつづきを上手に見たことがある? 彼は私の髪を梳きながら、ふいにそう聞くことがあ…
「洗濯機とリップ」 それは車庫にあった。 コンクリートの壁や床には雨風でついた汚れが…
最終章「桜の樹の下には」 骨壺を棚の上に置く。正しい置き場所なんてこの部屋にはなかった…
第七章「ラブホテル・バレンティン」 このごろ東京でも雪がちらつくようになった。汚れたア…
第六章「セージの花言葉」 セージから離れなくてはいけない、と思った。 あの夏休みのは…
第五章「絶縁体」 蝉の声が渦を巻き、雲一つない青空さえ突き抜けて消えていく。 大学が長…
第四章「スイセイムシ」 夏休み前のクラス会で、ピニーが死んじゃいましたと先生が言った。…
第三章「あじのこいはなし」 雨がしばらく続く。そうなってみてはじめて、ああ、いつの間に…
第二章「ざらめのひかり」 母親からの電話で目を覚ました。朝の六時半。アラームより三十分…
第一章「キリストとクリス」 白いスクリーンに磔のイエスがでかでかと映し出されていた。 …
陽だまりに溺れるレースのカーテン、繊細なふりして機械でざっくり繰り返された同じ模様。た…
【あらすじ】 涙のかわりに指先から糸が出る真央。きっかけは十五歳のころ、父親が彼から離…
梅雨より先に夏がくるかもしれない。 水に溶かしたシアンの飛沫で目をつぶる。午後の陽だ…