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長編小説「紡がれた僕らに終わりの春を」第一章

第一章「キリストとクリス」

 白いスクリーンに磔のイエスがでかでかと映し出されていた。
 老年の教授の声は低く、ペースは不規則なメトロノームのようで、二限の教室では船をこいでいる学生が何人もいた。
僕のふたつ飛ばして隣の机についた女子学生は、長い爪でスマホをタップしている。
 説明と説明の隙間、えー、と規則的に入りこむ教授の言葉と同じリズムで、かちゃかちゃと爪の音が鳴っている。教授に聞こえないか、なぜか僕のほうがハラハラする。
 春の終わりごろには、初回こそきっちりノートをとっていた学生もだらけてくる。若者のやる気なんて、落ちるのが線香花火よりも早いときがある。
 頬杖をつき、机上に張り付いた、ブラウン管の砂嵐より粗いコピーを見下ろす。丁寧に説明してくれているものの、文字が濃いせいでいったいどこの話をしているのかわからない。諦めてルーズリーフに落書きをする。
「ユダは本当に裏切者なのか、と」教授のその文言にはやけに力が入っていた。「そういう説も出ております」
 必修科目の中で面白そうだったキリスト学も、このごろ小難しい。
 僕が通う大学はいわゆるミッション系で、神父になるための神学科があり、キャンパス内にも小さな教会がある。大学の造りは古いが、ところどころにステンドグラスが埋めこまれ、天気のいい日には虹彩の光が散り、曇った日にはそれなりの雰囲気を連れてくる。入試パンフレットにいくつも写真が載るくらいには人の興味を引く。
 神学科を狙って受験してきた学生も多く、他大学よりクリスチャンが多いけれど、僕のような一般人も多く通っている。となれば他学科の講義なんてそこらの大学と変わらない。
 えー、かちゃかちゃ。えー、かちゃかちゃ。
 さっきから爪の音が気になって仕方ない。シャーペンの芯が折れてどっかに飛んでいく。僕の描いたドラえもんはまったくかわいくないし、むしろ目が据わっている。消しゴムで擦る。
 正直、なにもかもがつまらない。
 つまらないけど、初年次クラスの初回講義で教授が言っていたことを思いだす。思いだすと、スマホを見る気にはなれない。
 ――えー、講義ひとつあたりの金額は知ってますか?えー、あなたたちの、えー、通っている大学、ここですね、この大学は私立です。私立。えー、となれば国立よりも、え、高いわけですねー。いいですか。はい、まあなかにはね、自分で頑張って支払っている学生さんや、え、奨学金をね借りてらっしゃる方もいると思いますけれども。ずばりサンゼンエン。サンゼンエンですよ。どうですか、アルバイトの時給は千円ちょっとでしょう、ね、ね。だから我々もね、えー、教える側ももちろんね、そういう意識でいますけれども、――。
 まるでテレビショッピングの販売員のように、口の端に泡をたてながら、サンゼンエン、サンゼンエン、と繰り返す教授は、今しがた消したドラえもんと同じくらい目が据わっていた。
 金の話をされると罪悪感に胃が痛む。
 ルーズリーフを丸める。消したとはいえ、なんだか嫌なことをしてしまった気持ちになる。
 新しい一枚を取り出して、教授の声に意識を傾けていく。えー、えー、その声の輪郭がはっきりしてくると同時に、爪の音が薄くなっていく。

          *

 アパートにまっすぐ帰り、コンビニの弁当で食事を済ませた。なまぬるいペットボトルの水を流しこみ、無料期間だけ入会している映画のサブスクを開く。
 無料期間が終われば解約、を繰り返している。家賃を踏み倒していなくなるようで良心は若干痛むけれど、金がないからしかたない。そういう言い訳で自分を慰めている。
 マイリストを開く。新しい映画を観ればいいのに、いつも同じものばかり繰り返す。新しい映画に興味が引かれない。同じものだけを観ていたいと思う。それは僕にとって、使い慣れた毛布みたいなものなのかもしれない。
 再生ボタンをタップすると、もう見慣れたシーンが始まる。部屋の明かりを消し、薄暗い中、画面だけを見つめながらベッドに寝転がる。結局あのあと洗濯したシーツや枕カバーや掛け布団からは、コインランドリー特有の洗剤と、あたたまったようなにおいがした。
 眠気を感じ始める。だけど目を閉じていても、今どこのシーンが流れているのかがわかる。
 ――俺のことを知らない場所に行きたい。
 クリスの声が聞こえる。まどろみが僕の意識をぼやけさせていく。クリスが泣いている。
 腕を投げ出して枕に頬をつけていた。そのせいか両手がうっすら痺れ始めている。それとは別に、右手の人差し指が痒くなる。ああ、まただ。またかよ。まぶたが徐々に重くなってくる。
 クリス役のリバー・フェニックスの声はまだ少年で、その声で紡がれていく台詞はすべて僕にとって母語じゃない英語で、部分的にしかわからない。
 わからないけれど、どのシーンで、どんなニュアンスのことを言っているのかは、うっすらわかる。
 クリス、と口の中で呟く。
 わかるよ、クリス。
 僕も行きたいと思ってる。僕のことを知らないひとたちしかいない場所へ。でもさ、そこに行ってもまた誰かが僕のことを知るだろ。どこにもないんだ、そんなところ。
 誰にも知られず、誰にも傷つかず、自分だけを愛せる場所なんか、ない。
でも行きたいと思うよ。そういうところで生きたいって、思う。
 馴染みの前奏から、ベンの歌声が流れ出す。僕のまぶたはゆっくりと落ちた。

 目を覚ます。
 薄暗い中でからだをゆっくり起こす。口の中がべたついていて、喉は乾いている。なんか少し気持ちが悪い。冷え切った指先に目線を向ける。
 予想通り、右の人差し指から細い透明な糸が十五センチほど伸びていた。枕もとの小さいはさみで切り落とし、ジャムの小瓶に入れる。透明なそれは、透明な瓶の中で確かに溜まり始めていた。
 涙のかわりに糸が出るようになった。
 十五歳から。
 きっかけはなんとなくわかっている。
 くしゃみやあくびで涙がにじむことはあっても、感情的な涙は出なくなった。いつも指先が痒くなり、さながら弱々しいスパイダーマンもどきみたいに糸が伸びている。糸はナイロンのように無駄に硬く、引っ張っても千切れない。指先に糸の出る穴は見当たらない。
 他の人間にとっての涙がどれくらい溜まれば、僕の一センチになるのかはわからない。
 奇妙な病だと思う。でも病院に行くこともできなかった。
 ――涙が出なくなりました。かわりに糸が出ます。
 バカみたいだ。そんなこと言えるわけない。
 伸びた糸ははさみで切り落として、空き瓶にためている。
 瓶は三つになった。でも多いのか少ないのかわからない。だって一生のうち、人は涙を平均どれくらい流すのか、僕は知らない。誰だって知らないだろう。
 糸が伸びてからはじめて、僕はあのとき泣いていたんだと知ることになる。でもそんなの、結局たいした問題じゃない。この病が小さいころにはじまらなくてよかったと思う。十代の後半から、泣くことに関してたいした重みを感じなくなる。
 実際二十歳になった今、僕は自分がなにに泣いていたのか、その意味を気にする必要もないと思い始めていた。
 画面ははじめの「再生する」に戻っている。下にはあらすじを書いた文章が並び、役者の名前がそのとなりに表示されている。スマホの電源を落とす。通知は全部切っているから、メッセージが来ているかも知らない。でも今は眠たかった。本能にしたがって目を閉じる。
 目を閉じても、ベンの歌声が遠くに聞こえている気がした。

          *

 映画入門、なんて名前に惹かれて履修したものの、なんか違うと思っていた。
 三日目にしてなんか違うは絶対違うに変わり始めていたけれど、一年生のうちにたらふく単位はとっておいたほうがいい。四年生になってまで講義詰めはたまったもんじゃない。
 担当教授の映画を選ぶセンスはなんかズレまくっていた。
僕が感じたそのズレは勘違いじゃないらしく、初日には大量にいた学生が日に日に減っている。今日はまだ三日目だというのに、初日の四分の三くらいしかいなかった。
 電気を消した教室は昼間でも薄暗い。でかいスクリーンが教卓を挟むように左右にひとつずつ垂れ、そこに映画が再生されている。ずいぶん昔の映画らしく、恋人らしき男女は白黒の世界で愛を語り合っていた。字幕がなければなにもわからない。
 男女は次第に口論を始める。女はやたらヒステリックだ。一方的に責められた男は次第に怒り出し、口論は加速していく。僕の右斜め前に座っている女子の頭が船を漕いでいる。スクリーンの向こう、時計を細目になって見る。あと四十分も残っている。
 頬杖をついていたら腕が痛くなってきた。
 女がなにかを叫ぶ。男が叫び返す。
 腕を見たらちょっと赤くなっていた。
 映画はそこでなぜかぷつりと終わった。なにがなんだかよくわからないうちに電気がつき、その明るさに白いスクリーンは反射してしまう。白黒の世界で愛を語っていたカップルは、その光に飲まれて消えてしまった。
「ではア」教授はマイクなしでも声がでかい。でも律儀にマイクを通すから、声の大きさにこっちは毎回驚くことになる。「前後またはア、あ、左右で。感想を共有してくださいねえ、え、あてますからね」
 あてます、とつけ足した途端に、学生たちはスマホを置いてきょろきょろしだす。
 僕の左右には誰も座っていない。いちばん後ろに座っているせいで後ろもいない。二列前に男の頭が見える。腰を上げ、男のもとに行こうとすると、向こうから僕を振り返った。
 慌ててルーズリーフとシャーペンを片手に、男の後ろの席に座る。
「あ、あの」椅子がギッと鳴った。「お願いします」
 男が僕を見る。大きな猫目。右の涙袋の下にほくろがある。そのほくろから伝うように顎先まで目線を滑らせると、唇の端にもほくろがあった。鼻筋は高く、色は白く、それでもなぜか彼の中に光が見えないのは、猫背と真っ黒な瞳のせいかもしれない。
「お願いします」彼はそう言ってからだをこちらに向け、僕の机に肘をつく。「何年ですか」
「一年生です」
「あ。一緒だ」
「そうなの?大人っぽいね」
「老けてるかな」
「いや、ちがう、」僕は慌てて首を振る。「あの、……雰囲気がさ。違うなって」
 そっか、と彼は呟く。深海みたいな青色の開襟シャツ。顔立ちは整っているのに、なにかのせいでぱっとしない。彼は静かに微笑み、白い指でペンケースを漁ると、細いボールペンを取り出す。
「わかった?」
「さっきの、あの、映画だよね」
「うん」
「……あの、僕はあの、率直に言うと好きじゃなかった。だからぶっちゃけ頭に入ってこなくて、覚えてない、かも、な」
 ふ、と彼は笑った。
「バカショージキ」
「ごめん」
「でもさ、俺もあれ嫌いだったよ」
 聞こえたかな、と彼が教授のいるところに目を向ける。教授はマイク片手に、監視のように教室を回っている。大丈夫、と僕は囁く。ふたりで笑う。
頬杖をつき、彼は目線を窓の向こうに向ける。そうすると長い睫毛が光に照らされてより彼を物憂げに見せた。
「……この講義、ぶっちゃけ、毎回映画微妙だよね」
「んね。わかる。俺、邦画しか観ないんだ。だから洋画はあんまり詳しくない」
「そうなの?好きな映画は?」
「僕はイエス様が嫌い、って映画。俺の弟と名前が一緒なんだ。主役の子」
「なんて名前?」
「ゆら。由来の由に、良い、で、ゆら。あと、そらって弟もいる」
 君は?彼は落ち着いた声で僕に聞いた。
「好きな映画?」
「うん」
「スタンド・バイ・ミー」
「スティーヴン・キングだ。邦画は?あんまり見ない?」
「ん、うーん、ああ、……太陽を盗んだ男、とか」
「ああ、」彼はわずかに目を細めてほほえむ。「ジュリーだ」
「知ってる?」
「三回観た」
「めっちゃ好きじゃん」
 彼は微笑み、そういえば、君の名前、と呟く。
「あ、神崎真央」
「マオ」
「うん」
「俺は城戸聖司」
「セージ」
「そう。セージでいいよ」
「綺麗な名前」
「そう?」
「うん。キド、じゃなくてシロトなんだね」
「そう、シロト。バイト先でそれもじられて、シロートって揶揄われてる」
「なんのバイトしてるの、」
 はい、と教授のでかい声が響く。学生が一気に教授のほうを向いた。セージは、清掃員、と呟くように言うと、前を向いてしまった。セージの髪からは、石鹸のにおいがしていた。

          *

 翌週、先週と同じ席でセージを見た。
 大学の教室では、たいてい、なにも言わずともどこに誰が座るか決まるものだ。講義十分前の教室には学生の半分ほどが来ていて、スマホをいじったり、退屈そうな顔で菓子パンを齧ったりしている。
 僕の定位置になっている最後列、その二列前に、健康的な骨と筋肉を感じる背中が見えた。涼しそうな襟足、その上にかかるさらりとした黒髪。顔を見なくてもセージだとわかった。
 僕がセージを盗み見ながらいつもの席につくと、ふいに彼が振り返る。
 目が合う。
 僕はこくんと首を前に出すようなかたちで会釈をした。彼の口が開く。
「おはよう」
「……お、はよう」声がかすれる。咳ばらいをふたつする。「今日、あったかいね」
 英語の教科書みたいなあいさつ文しか出ない。きまずくなって座る。そうだね、と落ち着く声音で言いながら彼はちらりと天候をうかがうように窓に目を向けた。嫌になるほど快晴で空は高く、五月にしてはひどくあたたかかった。
 教室には長袖をまくった学生も多く、彼も同じだった。今日の彼は白いシャツに袖のない、グレーの薄いニットを重ねていた。シャツの袖はまくられ、そこから白い腕がのびている。
「暑いくらいだね」彼は呟くように言い、それから隣の空席に置いていたバッグをよけると、僕に目を向ける。「ここ、来る?」
「あ、うん、ありがとう」
 セージの一個飛ばして隣に座る。講義室の座席は間隔が狭いから少し気まずい。
 セージが僕を見たので、飛ばした座席にバッグを置いた。あたりさわりのない会話で場を繋ごうとしてしまう。
「前回の感想文、書けた?」
「うん、なんとなくだけど」
「あなただったらあのラストをどう撮りますかって質問、結構難しかったよね」
「本当だよ」セージはバッグからポカリスエットを取り出して一口飲んだ。「あんなの、どう改編するんだよって思った。ラストだけって、無理だよな」
「……そういえば、セージって、」
「うん」
「清掃員のバイトしてるんだっけ」
 セージがきつくペットボトルのキャップを閉めた。
 誰かがペンケースを落とし、プラスチックのケースやペンが床にぶつかる音が響く。菓子パンを齧っていた学生、スマホを惰性で見ていた学生、誰もが一瞬だけ音に首を傾ける。
 セージを見ると、セージはかがんでペンを拾う女子学生をじっと見ていた。
「清掃員っていっても、普通の掃除じゃないんだ」
「そうなの、」
「特殊清掃員。孤独死とか、自殺。そういう人の部屋を掃除するんだよ」
 そうなんだ、も、そっか、も、それって、とも、言えなかった。その瞬間、いずれも僕に言わせない空気をセージはまとっていた。
 女子学生のもとに地味な女子学生が駆け寄り、転がっていったペンを拾い上げて渡す。落とした女子学生はそういうおもちゃみたいに何度もぺこぺこ頭を下げている。
「時給高いんだ」
 セージはいまだ僕を見ないまま、ひとりごとのようにそうつけ足した。
「……そっか、」
 結局、そっか、しか言えなかった。セージはやっと女子学生から目線を僕に向け、真央はなにしてるの、と聞いた。
「映画館のスタッフ」
「へえ」セージは興味を持った猫みたいにわずかに目を丸くした。「そっか、映画が好きなんだよね、真央は」
「うん。バイト探してたときにちょうど求人出てて。安く映画観られるし」
「どこの映画館?」
「新宿。でも小さいよ」
「へえ、いいな」
 ぴろん、ぴろん。
 聴きなれた電子音に僕たちは顔をあげる。入り口の端末に、学生がそれぞれ自分の学生証をかざしていく。ああ、忘れてた、とセージがひとりごとを言う。僕たちはそれぞれ学生証を取り出すと、列のうしろに並んだ。
 かざすだけだから列はすいすい進んでいく。僕の学生証はすんなりリーダーに読みこまれた。セージが僕の後ろで学生証をかざす。
「さっきのやつ、ピ逃げだ」
「え、うそ」
「見ちゃった」セージはそう言って笑う。「まあでも、ああやって効率よく生きてるやつのほうが、うまくいったりするよな」
「僕は怖くてできないよ」
 ポケットに入れようとしたセージの手から、学生証の入った藍色のパスケースが落ちる。拾い上げると、ごめん、とセージが手を伸ばした。
 神学科 学籍番号2017523 城戸聖司
 神学科、の字がやけに目立って見える。僕はセージにパスケースを渡しながら、思わず聞いてしまった。
「セージ、神学科なの?」
「そうだよ」
「神父さんになるの?」
「あー、いや、全然」セージは気まずそうに笑う。「ちがうよ」
 ごめん、と僕は口の中でもごもご謝った。つい、見えたから。
 別にいいよ、とセージは手を振りながら席に腰をおろした。
「神学科なら礼拝とかあるんだよね、確か」
 神学科に通う学生はなんとなく雰囲気が違う。だからか、と思いながらセージを見る。同じようで全然、どこにもいないように見えるのは。
「あるね。朝早いから面倒くさい。キリスト基礎学とか、来年まで受講しなくちゃいけないし。あと定期的にレポートも出さないといけない。まわりはやっぱちゃんとしたクリスチャンの子ばっかりだから、結構がんばらないと、浮く」
「セージはクリスチャンじゃないんだ」
「まったく」セージはちょっとだけ気まずそうに声を落とした。
「そうなんだ」
「父親に入れられたんだ」セージはなんでもないように言った。「本当は文学やりたかった。だから勝手に履修してる。卒業さえすればなんにも言わないだろうし」
「大変だ」
 講義開始のチャイムが鳴り、教授が入ってくる。
 セージはもう前を向き、真っ白なルーズリーフに今日の日付を書きこんでいた。神経質な、細い字。五月十二日。もう五月も真ん中になったんだ、と変な気持ちになる。
 いつからか、二十四時間をずいぶん短いと思うようになった。
 教授がいつものように電気を消す。白いスクリーンに映画が映し出される。
 今日の映画は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」だった。
 この世界では猫として描かれたジョバンニが、母親のためのミルクを求めて町を駆けている。今日の映画はアタリだ、という顔で、セージが僕を見てそっと笑った。
 セージはほんのすこし、なにかが、ジョバンニに似ている。


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