見出し画像

アウトソーシング利活用とIT部門の位置づけ考察(4)~情報システムの位置づけとIT部門のあり方 ~

3回にわたり、経営環境やIT部門を取り巻く環境変化、IT部門のおかれた実情、そしてこれまでの取り組みと課題解消に向けた取り組みポイントなどについて考察しました。

今回から、そうした自社の状況を踏まえ、IT部門を「真に経営戦略に寄与する部門に変革する」ために取るべき施策、特に外部に委託することで自社内に余裕(時間面、人材育成面)を生み出せるか、その実現のためにどこまでアウトソーシングすべきなのか、その際、どのような考え方をすべきなのかということについて、考察していきたいと思います。(8回を予定)

当然のことながら、アウトソーシングを検討する際には、経営戦略を踏まえた自社に残すべき「コアコンピテンシー *1」について、検討・検証をしておくことが重要と考えています。

*1:コアコンピテンシー(Core-Competency)
一般的には、「他社にはない強み(中核となる技術・製品・能力等)」のこととしてよく使われるかと思いますが、本稿では、「IT部門として、自社として(自社プロパー社員で)、取り組むべき役割、機能、能力など」のこととしています。つまり、自社に残すべき役割、機能、能力は「何なのか」を検証することで、外部活用に関する「無理無駄の回避」、「効果的な活用」に寄与することになると考えています。


1.情報システムの位置づけ(目的)

「情報システム」を活用する狙いには、大きく分けて以下の2つの捉え方があると考えています。

【情報システムの導入目的】
(1)経営戦略、営業戦略を支える仕組みとして。
  (業務改革、効率化、省力化、合理化)
(2)経営・営業戦略(ビジネス)を創造、実現する仕組みとして。
  (DXの推進、実効化)

※『仕組み』とは、ツールということ。(実践するのは、あくまで「人」)
※(1)の情報システムは、経営戦略、営業戦略ありきであり、その戦略に基づいて構築される仕組みを言う。
よって目的は、効率化や合理化といった観点が重視されることにある。
※(2)の情報システムは、あらたな経営戦略、営業戦略そのものを構築する仕組みを言う。
よって目的は、「経営変革・ビジネス創造」そのものということにある。
(DXの実現に資する仕組み)

2.IT部門のあり方

実効性ある情報システム作りを行うには、本来それぞれ違ったノウハウや、違った要員構成、役割での取り組みが必要です。しかし目的ごとに自社要員構成を変えるということは難しく、更に最初からフル要員を揃えておくということは、経営的にも要員確保・育成といった観点からも、現実的ではないでしょう。 
そこで外部にIT要員を確保することが必要になってくるわけですが、多くが「機器やインフラ、マシン運用」といった面での単純なアウトソーシンググをはじめとし、特に今求められている経営戦略に関わる「情報システム構想(戦略)立案や経営層への提言」などにあたっては、所謂コンサルタントという外部要員を活用して対応するといった取り組みが行われてきたのではないでしょうか。
そこで今一度、自社要員で「本来こなすべき担務とは何か」ということについて再検討し(コアコンピテンシーの確立)、自社のIT部門のあり方、自社の要員(社員)で持つべきノウハウ、資質などについて再検証することが必要だと考えます。 

2.1 IT部門に求められるノウハウ

求められる情報システムに対し、その実現を効果的にハッキし得るために必要な対応能力について以下に示します。

■経営戦略、営業戦略を支える仕組み
 (第1項の(1)を軸に担務する場合(従来型位置づけ))

【主に求められるノウハウ】
a. 経営戦略、営業戦略に基づく『情報システム戦略の立案・構築』力。
b. 情報システム化戦略に基づく『ネゴシエーション(トップ、現場)』力。
c. システム計画力。(構想、実行計画)
d. システム開発力。(設計、開発、メンテ、検証)
e. システム運用力。
f. システムインテグレーション力、システムマネジメント力。
g. 現場部門への指導、教育力。
(操作、ツール、情報活用技術(情報リテラシー)等)
h. 最新技術動向調査、研究、適用力。

・特に "a. b. c." の3つについては、自社プロパー要員で対応すべき能力として育成、強化することが必須。
・その他の能力は、外部でも良いと言っている訳ではありませんので、留意して下さい。

■ 経営・営業戦略(ビジネス)を創造、実践する仕組み
 (第1項(2)を軸に担務する場合(今後型位置づけ))

【主に求められるノウハウ】
a. 経営・営業戦略(ニュービジネス)の企画、立案力。
(情報技術をキー(DXの実践)として)
b. 経営・営業戦略に基づく、トップ『ネゴシエーション』力。
c. システム計画力。(構想、実行計画)
d. システム開発力。(設計、開発、メンテ、検証)
e. システム運用力。
f. システムインテグレーション力、システムマネジメント力。
g. 現場部門への指導、教育力。
(操作、ツール、情報活用技術(情報リテラシー)等)
h. 最新技術動向調査、研究、適用力。
i. 最新業界動向調査、研究、適用力、応用力。

・特に "a. b. c." の3つについては、自社プロパー要員で対応すべき役割、能力として育成、強化することが必須。
・また、 "a. b. i." の3つについては、「 従来型位置づけ」とは異なる役割、能力として、意識して下さい。
・もちろん、従来型位置づけの"a. b." の能力を包含していることは言うまでもありません。
・その他の能力も外部でも良いと言っている訳ではありませんので、留意して下さい。

2.2 強化すべき資質のポイント

求められるノウハウ、能力について考察しましたが、各項目について検再証(採点)をされてみては如何でしょうか?

いずれにしても、まずはIT部門としての役割、機能を『従来型中心』とするか、『今後型中心』とするのかの選択が、先に行われることが必要だと考えています。(自社のIT部門の位置づけ確認)

自社として、どの方向を目指すのか。 あなたの会社は、如何でしょうか?経営層が求めている方向性を理解したものかどうか、今一度検証してみて下さい。
そして、どちらの方向を選択されるにせよ、今取り組むべき共通する強化ポイントについても意識して下さい。

【今、強化すべきポイント】
① 最新動向(業界/技術)を意識した、企画、構想立案力の育成、強化
② 現場部門自身による情報技術活用力の育成施策の強化、推進
 (情報リテラシー向上)

次回は、求められるノウハウの再検証を受け、「IT部門の位置づけ」と「IT部門の構成」について考察したいと思います。

【過去の関連記事】
第1回 IT(システム)部門に望まれること

第5回 あなたの会社、「システム部門」は本当に機能していますか?


いいなと思ったら応援しよう!