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アウトソーシング利活用とIT部門の位置づけ考察(2)~ 経営環境・IT部門を取り巻く環境の変化 ② ~

前回、「企業・経営、IT部門を取り巻く環境の変化」について考察しました。

【まとめ】

■主な経営を取り巻く環境の変化・・・社会環境、競合環境から
・経営スピードの加速への対応。(タイムリーさが必須)
・経営、ビジネスのデジタル化への対応。(DX化、ビジネスモデル創出)
・IT利活用強化への対応。(さらなる生産性、効率化向上)

■主なIT部門を取り巻く環境の変化・・・経営からの要請・期待事項
・経営、現業部門へのコミット力強化。(自社理解、事業継続、内部統制)
・最先端技術の検証、適用力の強化。(ウォッチング力、自社活用検証力)
・情報の有用性、利活用力の強化。
 (マーケティング活用とセキュリティー、漏洩防止の両立)

今回は、そうした環境の変化に対し、IT部門の実情はどうなのか、経営の要請に十分に対応し得る体制が整っているのか、これまでの対応は十分であるのかということについて、考察しておきたいと思います。


3.IT部門の実情認識

IT部門については、これまでも各種環境の変化や経営要請に対応すべく、多くの対策に取り組んできたと思います。しかし、思い通りに事が進められているというケースは、まだまだ少ないのではないでしょうか。皆様の企業は如何でしょうか。
ここで改めて、IT部門が置かれている「実情」について見ておきたいと思います。

【IT部門の実情(これまで、言われてきたこと)】

■位置づけ
・間接部門として「コストセンター」に位置づけられてきた。
(常に、コスト削減要請対象に)
・経営層において、IT部門の認知度が高くない。
(コンセンサスが得られない)
・CIO *1的立場の人材が、なかなか配置されない。
(組織的位置づけが高くない)

■人材
・人材育成がままならない。
 (技術面だけでなく、経営・現業務ノウハウ習得の時間確保が難しい)
・人材確保が難しくなっている。(採用も厳しい(獲得競争激化))
・社内ローテーションもままならない。(部門内配置、現場交流も限定的)
・年齢構成が高くなっている。(ノウハウの継承が出来にくい)

■開発・運用・保守
・バックログに追われている。(経営要請にタイムリーに対応出来ない)
・毎日の運用、保守に追われている。

■評価
・IT投資効果の評価が難しい。(評価手法が確立できていない)
・投資ではなく、コストとしか評価されない。
・さらに、予算は「どんぶり勘定」と思われがち。

■技術の習得
・技術進化のスピードに追い付けない。(技術習得が難しい)
・個人の技量、興味に頼っている。

■現場部門との関連
・「作る人(システム開発)」と「使う人(現業部門)」意識が蔓延。
・現場部門とは、「協調感」というより「委託感」という意識が定着。

*1:CIO (Chief Information Officer)
「最高情報責任者」。企業の情報戦略を統括し、社内のシステムや情報管理など、IT戦略を統括する役職。

4.取り組み施策状況

このようなIT部門の実情が、経営環境変化への対応を難しくしているということは否めません。当然のことながら、IT部門そのものを変革する取り組みは、多々行われてきてはいました。以下に、まとめておきたいと思います。

【これまでの主な取り組み

■位置づけ変革
・CIOの設置。(IT部門立場の格上げを示すが、名前だけ感)
・IT部門の子会社化。(受託方式による、収支の明確化)
  ★パターン1:収支の明確化
   ・システムの構築・運用・保守機能を軸に子会社化。
   ・統制維持を目的に「企画機能」は、本社に残存。
  ★パターン2:プロフィット化
   ・企画機能を含めて、IT部門の完全子会社化。
   ・さらに、自社以外のシステム関連業務請負に道。

■人材評価・人材(ノウハウ)不足対応
・技術専門職としてのキャリア制度設定。(子会社化もその一環)
・上流工程 *2における外部要員活用。
 (社内補完として、外部コンサルタントを活用)
・開発工程のマネジメントにおける外部要員活用。
 (社内補完として、外部PMO *3を活用)

■開発・運用・保守の対応軽減
・ホスティング、ハウジング形態 *4の採用や、保守・運用系を軸とした、アウトソーシングの導入。

■評価の明確化(IT投資・部門評価)
・子会社化(分離)による収支明確化。
・プロフィット部門(間接部門から直接部門)への変革。(緊張感の醸成)

■技術の習得時間確保へ
・日常業務軽減施策の拡充。(アウトソーシング範囲の拡大)

■現場部門との関係
・作業内容、作業責任範囲の分担意識強化。(開発体制への巻き込み)

*2:上流工程
システム構想、企画・計画立案工程。

*3:PMO(Project Management Officer)
プロジェクトマネジメントを統括、推進する人材。複数のプロジェクトをマネジメントする場合は、「Program Management Officer」ともいう。

*4:ホスティング・ハウジング
・ホスティング:サービス会社のコンピュータ機器(サーバ類)をレンタル利用し、自社固有システムを稼働させるサービス。運用も、サービス提供企業が行う。(機器・場所貸し、運用サービス)
・ハウジング:自社コンピュータ機器をサービス会社が用意する施設に設置する形態。運用は、自社が行うサービス。(場所貸し)


以上、IT部門の実情認識と取り組み状況という観点で、考察しました。

尚、当初の予定では、「IT部門を取り巻く環境の変化」として「2回」で締めようと考えておりましたが、思ったより長文となってしまいましたので、「5.課題解消に向けた検証観点」につきましては、次回に延伸させてもらいました。ご了承下さい。

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