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月ふたつ

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嬉しかったこと、楽しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと。生きてたら、みんなそれなりに何かある。それを全部ひっくるめて私という人間ができあがる。もちろん、あなたも。日常と、想…
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等々力の神様に愛された男

等々力の神様に愛された男

その人は言った。「等々力には神様がいた」と。

3年前のあの日。
サッカーなんて何が面白いの?と斜に構えていた私が、友人の影響でなんとなくサッカーを観始めたものの、まだ日が浅く、川崎フロンターレに関しては「シルバーコレクターと呼ばれている」くらいの知識しか持っていなかった頃。

その年の優勝が、川崎フロンターレと鹿島アントラーズのどちらになるのか気になり、自宅のテレビで試合中継を観ていた。気になり

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ふたりの日々

ふたりの日々

重たい灰色の雲が空を覆っている。まさに「どんより」という表現がぴったりの景色だ。吐く息は白く、凍えそうな空気が頬に痛い。春の訪れはまだ感じられず、たまにうっすらとさす日差しは、すぐにまた分厚い雲にかき消されてしまっていた。

そんな冬空の下、私たちは近所の川沿いの遊歩道を二人並んで歩いている。手にはたくさんの食料とお酒が詰まった袋を携えながら。つないだ手はひんやりと冷たい。「寒い、寒い」と言いなが

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いまこの時がすべてだけれど...

いまこの時がすべてだけれど...

いまこの時がすべてだから、精一杯いまを生きる。けれどいまこの時の思考や感情は、そのすべてではない。

それらは経験や知識を積み重ねていくことによって変化を遂げる。そして時が経ち、ふいに過去の「あの時」を思い返す。すると「あの時」には思いもしなかった感情や、その事が起こった意味、それによって得たもの。そういったことが不思議と次々と見えてくる瞬間がある。そしてストン、と心の中にあった何かが腑に落ちるの

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ないものねだり

ないものねだり

冬に想う、夏のうだるような暑さ、容赦なく照りつける日差し、鳴きやむことのない蝉の声、草いきれのこもる道、夕立のあとのアスファルトの匂い、夜空に煌めく大輪の花。

そのすべてが狂おしいほど恋しい。暑さで皆が少しずつおかしくなってしまうような。匂い立つ濃密な闇。なにかが起こりそうで、でも結局なにも起こらないまま終わる夏。胸がぎゅっと締めつけられるようなあの空気感。あの中にいますぐ戻りたいと、そう願う。

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終わりを迎える関係

終わりを迎える関係

あと何回この悔しい思いをしなければならないのだろうか。虚しさが心のなかを占拠する。

そんなふうに簡単に人を切れるのか。そうか、そうだったのか。

これで自分のことを「人見る目が無い」なんて言ったら、それはいま私を支えてくれている人たちに失礼になる。じゃなぜ?

遅かれ早かれ決別の時はきたのだろう。そんな内容だった。

共感能力の欠如。おごり高ぶった心。損得勘定で決められた優劣のついた人間関係。

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いまこの時に

いまこの時に

雲のすき間から差す黄金色の光の柱。溢れだす光。神々しく輝くその光のまぶしさに目を細める。

離れてしまった大切な人。今そばにいてくれる大切な人。そのすべての人を愛しく想う。

おだやかな日々。めぐりゆく季節。私たちはみな幸せになるために生きている。

この美しい夕景に心満たされるような日々を、大切にしようと想う、いまこの時。今日という日が終わりろうとしている。

音の渦、永遠の夜、訪れる朝

音の渦、永遠の夜、訪れる朝

浮き足立つ人々の流れ。皆そこを目指している。

一歩足を踏み入れれば、そこに待つのは音の渦。響く重低音。男も女も、みんな少しだけソワソワしている。まるで今夜なにかが起こることを期待しているみたいに。

最初の瞬間は、少しの気恥ずかしさとともにリズムを取り出す。徐々に場に馴染んできたら、まるでそこでずっとそうしていたかのように、我が物顔で踊りだす。身体が音を欲している。夜が更けていくにつれ、ずっとこ

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移ろう季節

移ろう季節

抜けるような青空。木々はほのかに色づき、澄んだ空気がひんやりと頬に触れた。透き通った美しい水が流れてゆく。とどまることを知らない、永遠の清らかな流れ。その流れゆく様を、ずっとずっと眺めていたくなる。

世界がどんなに困難な状況にあろうとも、季節はいつも通り移ろいゆく。今年もまた、美しい季節がやってきた。日々変わりゆくこの景色を一瞬たりとも見逃したくはない。この美しい世界にずっと身を委ねていよう。そ

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時の流れ

時の流れ

ずっと待ち続けていたその時を、もう待たなくていいことへの安堵と少しの罪悪感。そんなもの、持つ必要はないのだけれど。

ずっと望んでいたその時は結局来なかった。けれどおそらくそれを上回る時に巡り会えたから、きっとこの道で合っているのだろう。

私のこころの中に、きっとずっと居続ける人。忘れることはないであろうその人。

私の時は、おそらくあの瞬間で止まってしまっていた。動いてはいけないような気もして

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出会うことの奇跡

出会うことの奇跡

目の前に愛しい人がいる。
その人も私を想ってくれているという。

大真面目な顔をしながら「あなたが好きだ」と話すその人の、その言葉のひとつひとつは、とても率直で、あけすけで、そこにはまったく嘘が存在しなかった。私はその人を見つめながら、その嘘のない言葉が私の心のなかにまっすぐ入ってきて、そして徐々に心の内をあたためてゆくのを感じていた。

こんなふうにお互いがお互いを愛しく想いあえるということは、

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選択

選択

導きだされる答え。頭のなかを埋め尽くす無数の選択肢。なにが正解かを決めるのは自分自身。果てしなく続く、選択するという行為。決断できずに途方に暮れることもある。

幸せであるために生きているのに、終わりの見えない苦しみで、ときどき胸のなかがいっぱいになってしまう。

私は何をしたらいいのだろう。私に何ができるのだろう。しがらみの中に生きる。そんな世界はもうおしまいにしたいから、終わりのない選択をし続

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家族とは...

家族とは...

「もう解放してほしい」
そう母が言った。

私がふざけて「おかーさーん!」と甘えたように読んだときのことだ。母の言葉にはため息が混ざっていた。

たしかに私は長年母を苦しめた。それは心を病んでまともに働くことも叶わなかったからだ。正直この年になっても、いまだに世間でいう「自立」には程遠い。その点については、本当に申し訳なく思う。けれどだからと言って「開放してほしい」なんて言葉は使ってほしくない。

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人生のスタート地点

人生のスタート地点

気づかぬうちに、自分の本当の感情や想いを押し殺していた。ようやくその事に気づいて、慌ててそこから抜け出した。いままではその場所がとても居心地のよい場所だと思っていたが、どうやら途中からは、自分で自分に「ここは居心地のいい場所だ」という暗示をかけていたようだ。疑問符はたびたび浮かんでいたのに、見て見ぬふりをしてしまった。ここに限ってそんなはずはないと。

ある事をきっかけに、それまで見えていた光景が

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何かを求めて

何かを求めて

よどんだ空気。汗ばむ首すじ。暗澹とした気持ちを抱えたまま歩きだす。

何を求めているかもわからない。わからないけれど、確実に何かは求めている。どこへ向かうべきなのか。彷徨えど答えは見つからず。

なぜこんなにも重苦しい気持ちを抱えているのか。その理由さえわからずにいる。いや、それは正確ではないかもしれない。正確には「わかろうとしてこなかった」だろう。自分と向き合うことが、なにかとてつもなく恐ろしい

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