人生のスタート地点
気づかぬうちに、自分の本当の感情や想いを押し殺していた。ようやくその事に気づいて、慌ててそこから抜け出した。いままではその場所がとても居心地のよい場所だと思っていたが、どうやら途中からは、自分で自分に「ここは居心地のいい場所だ」という暗示をかけていたようだ。疑問符はたびたび浮かんでいたのに、見て見ぬふりをしてしまった。ここに限ってそんなはずはないと。
ある事をきっかけに、それまで見えていた光景が180度変わってしまうことがある。これまでも何度かそんな経験をしたが、またしてもそれが来てしまった。「来てしまった」と表現したのは、その経験には大なり小なり、必ず心の痛みが伴うものだからだ。
慣れ親しんだ場所を去るということは、たとえそれが正しいことだとわかっていても、とても寂しく辛い作業だ。多くの別れがあるのだから。それでもやらなければならないから、なんとかその悲しみを乗り越える。乗り越えた先にあるのは、圧倒的な心の自由。そしてその場所から抜け出すことによって、ようやく私は自分の足でしっかりと自分自身を支え、ひとりで立っていられるようになった。
自由はとても心地が良い。こんな気持ちは初めて味わう。思い返せば、自分というものを確立するためにひたすら努力を重ねてきたこの数年だった。そしてようやく私は心の自立を果たすことができたように思う。
誰かの中に答えを求めることはもうしない。答えは自分の中にある。自分の出した答えに不安を抱くことも少なくなった。自分を信頼できるようになったことへの安心感が私の心を穏やかにしている。自分自身をよく見つめること。それが自分という軸をぶれさせないために必要なことなのかもしれない。
いま私はようやく人生のスタート地点に立てた気がしている。39歳、私の人生、まだまだこれからだ。