風花 朋(Kazahana Tomo)

HSS型HSPの39才。パニック障害とうつ病の経験あり。日々の出来事、想い出、創作物な…

風花 朋(Kazahana Tomo)

HSS型HSPの39才。パニック障害とうつ病の経験あり。日々の出来事、想い出、創作物など自由に書いています。

マガジン

  • くそったれの世界

    過去にパニック障害とうつ病を併発し、7年間苦しみました。原因となった家族関係や、そのときの経験など、少しずつ書いていこうと思います。

  • 月ふたつ

    嬉しかったこと、楽しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと。生きてたら、みんなそれなりに何かある。それを全部ひっくるめて私という人間ができあがる。もちろん、あなたも。日常と、想い出と。少しづつ書いていきたいと思います。

最近の記事

被害者の順位~虐待が生みだす負の連鎖~

別にそんな壮絶な虐待をされていたわけではない。 ただ強制的に勉強させられて、したくないと駄々をこねると怒鳴り散らすから、その恐怖から言うことを聞いて勉強するしかなかった。それ以外にも、日常生活のなかで父の思い通りに動かないことがあると、怒鳴られ、時に平手打ちをくらった。10代後半の姉たちはもっと殴られ、蹴られたりしていたそうだ。あまりの殺意に包丁を向けたこともあると話していた。 そんなことが日常茶飯事で、家のなかはいつだって重たい空気が流れていた。あの人を怒らせないよう、

    • 彷徨う言葉

      「お父さん」 ときどきふと思い出しては、その言葉を声に出して言ってみる。 すると私の発したその「お父さん」という言葉は、ふわふわと当て所なく宙を彷徨い、終いにはスーッとどこかへ消え去ってしまうのだった。 いつもこうだ。 何が言いたいかというと、私のなかで「お父さん」という言葉は、実感を伴わない、とてもふわふわとした中身のない言葉なのである、ということだ。 「お父さん」と実際に会ったのは小学6年生のときが最後で、そこから「お父さん」という言葉を使うことはほとんどなくなっ

      • ふたりの日々

        重たい灰色の雲が空を覆っている。まさに「どんより」という表現がぴったりの景色だ。吐く息は白く、凍えそうな空気が頬に痛い。春の訪れはまだ感じられず、たまにうっすらとさす日差しは、すぐにまた分厚い雲にかき消されてしまっていた。 そんな冬空の下、私たちは近所の川沿いの遊歩道を二人並んで歩いている。手にはたくさんの食料とお酒が詰まった袋を携えながら。つないだ手はひんやりと冷たい。「寒い、寒い」と言いながら、私たちは帰路を急ぐ。 そこにあるのは暖かな部屋、温かな食事、とりとめのない

        • 永遠のテレビっ子

          私を傷つけたのは、なにも父だけというわけではない。 両親が別居することも、そして引っ越す先も、すべてが決まってあとで言われるだけ。のちに正式に離婚したことも、その後数年経ってから知らされた。 当時私はまだ小学生だったから、仕方のないことだとは思う。しかし小学生だからこそ、きちんとした説明がほしかった。引っ越すことによって友人と離れてしまう不安。誰も知ってる人のいない中学校へ進学しなくてはならないことの恐怖。親の都合に振り回されることへの怒り。でもみんな私の気持ちには無関心

        被害者の順位~虐待が生みだす負の連鎖~

        マガジン

        • くそったれの世界
          7本
        • 月ふたつ
          36本

        記事

          いまこの時がすべてだけれど...

          いまこの時がすべてだから、精一杯いまを生きる。けれどいまこの時の思考や感情は、そのすべてではない。 それらは経験や知識を積み重ねていくことによって変化を遂げる。そして時が経ち、ふいに過去の「あの時」を思い返す。すると「あの時」には思いもしなかった感情や、その事が起こった意味、それによって得たもの。そういったことが不思議と次々と見えてくる瞬間がある。そしてストン、と心の中にあった何かが腑に落ちるのだ。 それもまた、いまこの時の想い。しばらくするとまた違う想いが湧いてくること

          いまこの時がすべてだけれど...

          ないものねだり

          冬に想う、夏のうだるような暑さ、容赦なく照りつける日差し、鳴きやむことのない蝉の声、草いきれのこもる道、夕立のあとのアスファルトの匂い、夜空に煌めく大輪の花。 そのすべてが狂おしいほど恋しい。暑さで皆が少しずつおかしくなってしまうような。匂い立つ濃密な闇。なにかが起こりそうで、でも結局なにも起こらないまま終わる夏。胸がぎゅっと締めつけられるようなあの空気感。あの中にいますぐ戻りたいと、そう願う。 夏に想う、冬の凍てつく空気、どんよりと厚く重く空を覆う雲、吐く息の白さ、かじ

          終わりを迎える関係

          あと何回この悔しい思いをしなければならないのだろうか。虚しさが心のなかを占拠する。 そんなふうに簡単に人を切れるのか。そうか、そうだったのか。 これで自分のことを「人見る目が無い」なんて言ったら、それはいま私を支えてくれている人たちに失礼になる。じゃなぜ? 遅かれ早かれ決別の時はきたのだろう。そんな内容だった。 共感能力の欠如。おごり高ぶった心。損得勘定で決められた優劣のついた人間関係。 「嫌いになりたくない」 大丈夫。そんな人間とは私が一緒にいられない。こちらか

          終わりを迎える関係

          夢にあらわれる父。そしていま安心な場所へ。

          私が9才のとき、両親は別居を始めた。 別居することを知ったときは、本当に心の底から嬉しくて、正直これまで母にしてもらったことの中で1番嬉しかったんじゃないかと思うくらい。そのくらい私にとっては大きな出来事だった。 離れて暮らし始めてからしばらくは、まだ家が同じ町内にあり、そして相変わらず勉強はしなければならなかったため、ほぼ毎日父の家に通い勉強を教わっていた。しかしそれもふとした事がきっかけで行かなくなってしまった。 その後、同じ沿線だが少し離れた地区に引っ越しをした。そ

          夢にあらわれる父。そしていま安心な場所へ。

          安心な場所

          この世に生まれて初めて接する大人の男性。それが父親だ。 私の父は、自分が絶対の人だった。そこに歯向かう人は、彼にとって悪で、必要のない者だった。 7つと6つ年の離れた姉たちがちょうど反抗期に入り自分の思いどおりにならなくなった頃、私はまだ6才で、親の言うことになんの疑問も持たずに生きていた。そんな私を見て、父のターゲットは姉たちから私に移ったのであった。 父の理想の子供というのは、どうやらよく勉強のできる子だったらしい。保育園の年長クラスになると、帰宅後、毎日決められた

          いまこの時に

          雲のすき間から差す黄金色の光の柱。溢れだす光。神々しく輝くその光のまぶしさに目を細める。 離れてしまった大切な人。今そばにいてくれる大切な人。そのすべての人を愛しく想う。 おだやかな日々。めぐりゆく季節。私たちはみな幸せになるために生きている。 この美しい夕景に心満たされるような日々を、大切にしようと想う、いまこの時。今日という日が終わりろうとしている。

          くそったれの世界

          一時期、私の世界は真っ暗でした。 生きていることが苦痛で、こんな生活が一生続くのかと思うと、絶望感で一刻も早くこの世界からいなくなってしまいたいと、本気で毎日思っていました。 そういう苦しみや、その苦しみの根本的な原因について、文字に起こして語るという作業は、あの絶望感や苦しみの数々をリアルに思い出してしまうため、これまでずっと避けてきました。挑戦してみたこともあったのですが、いろいろな思いが噴き出してうまいこと言葉にできずに諦めたこともあります。 ただ、私がこうして文章

          くそったれの世界

          音の渦、永遠の夜、訪れる朝

          浮き足立つ人々の流れ。皆そこを目指している。 一歩足を踏み入れれば、そこに待つのは音の渦。響く重低音。男も女も、みんな少しだけソワソワしている。まるで今夜なにかが起こることを期待しているみたいに。 最初の瞬間は、少しの気恥ずかしさとともにリズムを取り出す。徐々に場に馴染んできたら、まるでそこでずっとそうしていたかのように、我が物顔で踊りだす。身体が音を欲している。夜が更けていくにつれ、ずっとこの音の渦のなかで躍り続けていたいと切に願う。楽しくて仕方がないから。もっともっと

          音の渦、永遠の夜、訪れる朝

          移ろう季節

          抜けるような青空。木々はほのかに色づき、澄んだ空気がひんやりと頬に触れた。透き通った美しい水が流れてゆく。とどまることを知らない、永遠の清らかな流れ。その流れゆく様を、ずっとずっと眺めていたくなる。 世界がどんなに困難な状況にあろうとも、季節はいつも通り移ろいゆく。今年もまた、美しい季節がやってきた。日々変わりゆくこの景色を一瞬たりとも見逃したくはない。この美しい世界にずっと身を委ねていよう。その情景の一部分として溶けてしまうように。

          時の流れ

          ずっと待ち続けていたその時を、もう待たなくていいことへの安堵と少しの罪悪感。そんなもの、持つ必要はないのだけれど。 ずっと望んでいたその時は結局来なかった。けれどおそらくそれを上回る時に巡り会えたから、きっとこの道で合っているのだろう。 私のこころの中に、きっとずっと居続ける人。忘れることはないであろうその人。 私の時は、おそらくあの瞬間で止まってしまっていた。動いてはいけないような気もしていたし。私のまわりだけ、気づけばどんどん時が進み、いつのまにか私は時の流れの外側

          出会うことの奇跡

          目の前に愛しい人がいる。 その人も私を想ってくれているという。 大真面目な顔をしながら「あなたが好きだ」と話すその人の、その言葉のひとつひとつは、とても率直で、あけすけで、そこにはまったく嘘が存在しなかった。私はその人を見つめながら、その嘘のない言葉が私の心のなかにまっすぐ入ってきて、そして徐々に心の内をあたためてゆくのを感じていた。 こんなふうにお互いがお互いを愛しく想いあえるということは、奇跡なのだと、そう思う。 外へ出れば人はあふれているけれど、そのなかでこんなふ

          出会うことの奇跡

          選択

          導きだされる答え。頭のなかを埋め尽くす無数の選択肢。なにが正解かを決めるのは自分自身。果てしなく続く、選択するという行為。決断できずに途方に暮れることもある。 幸せであるために生きているのに、終わりの見えない苦しみで、ときどき胸のなかがいっぱいになってしまう。 私は何をしたらいいのだろう。私に何ができるのだろう。しがらみの中に生きる。そんな世界はもうおしまいにしたいから、終わりのない選択をし続けている。 書くことが救いにならない日だってある。けれど書くという行為が好きな