【3分要約・読書メモ】客観性の落とし穴:客観性と数値、そんなに信用して大丈夫?:村上 靖彦 (著)
ご覧頂き誠にありがとうございます。
今回は『客観性の落とし穴』についてレビューと要約の記事となります。
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著者
村上 靖彦(むらかみ・やすひこ)
1970年、東京都生まれ。基礎精神病理学・精神分析学博士(パリ第七大学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授・感染症総合教育研究拠点CiDER兼任教員。専門は現象学的な質的研究。著書に『ケアとは何か』(中公新書)、『子どもたちのつくる町』(世界思想社)、『在宅無限大』(医学書院)、『交わらないリズム』(青土社)などがある。
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1. 本書の概要
『客観性の落とし穴』は、村上靖彦氏が「客観性」という現代社会で広く信奉されている概念に対し、その功罪を鋭く批評した一冊です。本書は、数字やデータを使ったエビデンスがもてはやされる現代において、果たしてその客観性が本当に万能であるのか、という問いを投げかけています。特に、客観性が絶対視されることで見失われがちな「主観的経験」や「生々しさ」といった人間本来の感覚や価値観の重要性を探ります。
客観性とは、一般的に数値やデータで物事を測り、論理的に説明することを指しますが、村上氏はこの客観性が多くの場面で一種の「真理」として受け入れられ、その限界や問題点が見過ごされている現状に警鐘を鳴らします。医療や教育の現場においても、個別の経験や感覚が客観的なデータによって軽視されている状況を取り上げ、あらゆる分野で「主観性」とのバランスが崩れていることを指摘しています。
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2. 本書の要約
本書は8つの章にわたって、客観性とその限界をさまざまな角度から検討しています。
第1章:客観性が真理となった時代
客観性がどのようにして現代社会において「真理」として受け入れられるようになったかを歴史的背景とともに解説します。科学や技術の発展とともに、客観的データに基づいた論理的思考が主流となり、これが社会全体に広がっていった過程を描いています。
第2章:社会と心の客観化
ここでは、社会全体が「モノ」や「数字」によって客観化されていく様子を探ります。特に、人間の心や感情までもが数値化される風潮がどのように広がっていったのか、そしてその影響がどのように表れているかが述べられています。
第3章:数字が支配する世界
日常生活において、私たちは多くの場面で数字に基づいた評価を受けます。教育、医療、ビジネスに至るまで、あらゆる分野で数字が支配的な地位を占めている現代社会の問題点を取り上げます。統計データやスコアリングシステムが、個人の感覚や経験を無視して進められることの危険性を指摘します。
第4章:社会の役に立つことを強制される
経済的な価値や効率性が最優先される社会において、「役に立つこと」が至上命題とされることの問題点が述べられています。特に、優生思想などが暗に存在する現代社会で、弱者や「役に立たない」ものが排除される傾向を批判しています。
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第5章:経験を言葉にする
ここでは、個々人が体験する「生々しい」経験や感覚をいかにして言葉で表現するかがテーマとなっています。客観性に頼らず、主観的な経験をいかにして他者と共有し、理解し合うことができるかが問われます。
第6章:偶然とリズム――時間について
この章では、偶然や不確定なリズムが人生においていかに重要な役割を果たすかを論じています。統計やデータでは捉えきれない「偶然」をどう受け入れ、対処していくかが議論されています。
第7章:生き生きとした経験をつかまえる哲学
「経験の内側から見る視点」をテーマに、哲学的な観点から経験の豊かさをどう捉え直すかが検討されます。村上氏は、現象学の倫理に基づき、客観性だけでは捉えられない「生きた経験」を重要視することを提案しています。
第8章:競争から脱却したときに見えてくる風景
競争社会から一歩引いて、個々人の経験や感覚に目を向けたときに見えてくる新しい風景を描いています。競争や効率にとらわれず、自分自身のペースで生きることの重要性が強調されています。
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3. 本書のポイント
私たち一人ひとりの生きづらさの背景に、客観性への過度の信頼がある。自然も社会も心も客観視され、内側から生き生きと生きられた経験の価値が減っていき、だんだんと生きづらくなっている。
数値が過剰に力を持った世界において、人々が競争に追いやられている。数字に支配された世界は、科学的な妥当性の名のもとに1人ひとりの個別性が消されて歯車になる世界だった。序列化された世界は、有用性・経済性で価値が測られる世界でもある。弱い立場に置かれた人たちは容易に排除され、マジョリティからは見えなくされ、場合によっては生存を脅かされる。
科学の進展に伴って客観性と数値に価値が置かれ、個別の経験の生々しさが忘れられがちになった。ただし、一人ひとり異なる個別の経験をその人の視点において尊重することは、困難を抱えすき間への追いやられた人の声を聴く努力と一体である。
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一人ひとりの声を尊重するということを拡げて考えると、排除される人がいないということであり、すべての人を尊重することでもある。
一人ひとりの経験を尊重する世界では、お互いがお互いをケアし合うことになる。そもそも、私たちはすべて誰かからケアを受け、誰かをケアしているはずだ。あかちゃんだった時には誰かのケアを受けなければ生存することができず、病の時や死の間際にもケアを受ける。つまり生涯にわたっての他の人からケアされることを必要とする。
しかも同時に、私たちは誰かをケアする。あかちゃんが親の生きがいになっているときにも、実は赤ちゃんこそが親をケアしているともいえる。日常的にケアしあうだけでなく、ケアを受けているとみられる「当事者」もまた常にだれかをケアしており、とりわけその人をケアしている支援者をい支えている。そして支援する実践は、誰かにケアされていない限り続けることは不可能な仕事でもある。そもそもお互いのケアは常にどこにでもあるのだ。それならばいっそのこと、ケアを軸としてコミュニティを作ることはできないだろうか。
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4. 感想とレビュー
『客観性の落とし穴』は、現代社会が抱える問題を深く掘り下げる非常に洞察に富んだ一冊です。特に、私たちが日常的に「客観的であること」を当然視し、数字やデータに基づいた判断を盲目的に信じるようになっている現状を批判する視点が新鮮です。
多くの場面で、数値やデータに基づいたエビデンスが重視される傾向が強まっています。これは一見合理的で効率的に見えますが、著者はその裏にある危険性を巧みに暴いています。例えば、医療現場や教育現場では、統計データに基づいた治療や指導が優先されがちですが、患者や学生個々の「生きた経験」や「主観的な感情」が軽視されることで失われるものが少なくないと感じました。
また、特に印象的だったのは「主観的な経験」や「生々しさ」がどれほど重要であるかを論じた部分です。客観性が優先されることで、個々人が感じる感情や経験が無視されがちですが、それらが持つ豊かさや深みを再認識させられる内容でした。村上氏は、経験そのものが持つ倫理性や豊かさを尊重し、客観性に囚われない新しい視点を提示しています。
さらに、本書は単に批判にとどまらず、解決策として「主観性」や「経験の語り」の重要性を強調しています。これは特に、医療や福祉の現場で働く人々にとって、非常に重要なメッセージだと思います。数値では測りきれない「人間らしさ」や「生きる実感」を大切にする姿勢が、今後の社会においてより必要とされるのではないかと感じました。
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5. まとめ
『客観性の落とし穴』は、現代社会における「客観性至上主義」に対する鋭い批評書であり、個々の経験や感覚の重要性を再認識させてくれる一冊です。客観的データが重視される現代において、数字やエビデンスが万能ではないことを指摘し、「主観性」や「生きた経験」に目を向けることの必要性を強く訴えています。
本書は、客観性と主観性のバランスを考える上で非常に重要な視点を提供しており、教育、医療、ビジネス、そして日常生活においても幅広く役立つ内容です。村上氏が示すように、客観性に囚われず、個々の経験や感覚にもっと目を向けることで、私たちはより豊かで人間らしい社会を築いていくことができるのではないでしょうか。
『客観性の落とし穴』は、数字やデータに頼りすぎる現代社会に疑問を感じるすべての人にとって、必読の一冊です。
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最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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