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青空文庫コラム

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青空文庫のご作品の感想を伝えていきます!! 週に一つ以上、掲載いたします。
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#コラム

「洋灯」 横光利一 を読んで。(青空文庫コラム)

「洋灯」 横光利一 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

このごろ、停電が多く夜が暗い。
知人がランプをくれた。

それを見ていると、祖父の葬式や四人の叔母のことなどが思い出される。

(感想)

主人公は、彼の父が外国へ働きへ行くので、母の故郷で母子で暮らすことになった。そこは農村であり、(おそらく)電気がなく、どの家にもランプが用意してあったのです。

そこで暮らした三年間は、主人公には忘れ難い。

そのあたりに住んでいる四人の叔母た

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「雪の障子」 島崎藤村 を読んで。(青空文庫コラム)

「雪の障子」 島崎藤村 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

語り手は雪が降ったことに喜ぶ。

この雪の中での動きが、昔の人が表現に凝ったことだ。

この寒さに耐えてよく生きる強さがあった。

(感想)

雪の日の記憶は、語り手の幼いときに結びついています。坂道の凍ったところで、氷滑りをしていたのだと。

「降ったばかりの雪は冷たいようで、実は暖かい」。

そして、「雪の中にはいろいろなものが隠れている」と言います。

鷺娘という古舞がありま

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「物を大切にする心」 種田山頭火 を読んで。(青空文庫コラム)

「物を大切にする心」 種田山頭火 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

私はお遍路参りをしていた。親しく一緒に歩く人ができた。

その人は貰ったたくさんのマッチをたばこの火付に一本でいいところを何本も湯水のように使った。彼の信心に疑いを持つ。

あるマダム。女中が洗濯の水を溢れさせるが、彼女は澄ましている。

この人たちは、本当の意味の、ものの値打ちが、わかっているのだろうか?

(感想)

物を大切にする、というのは、正しいと思う。けれども、現代人の

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「街の子」 竹久夢二 を読んで。(青空文庫コラム)

「街の子」 竹久夢二 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

ジャッキイ・クウガンの映画があるらしい。

春太郎はお姉さんと共に見にゆきます。

母と死に別れて、さまようが、最後には実の父に出会う話。

その映画を真似して自分の人生を空想する春太郎。

悲劇と感動を妄想で体得してみるけど、親はお仕事行っているんだっけ!

ふと気づくともう校舎の前だった。

(感想)

物語は、スラスラと読めますし、特に何も考えないで、ああ、親子の愛情はいいな

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「郷愁」 織田作之助 を読んで。(青空文庫コラム)

「郷愁」 織田作之助 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

世評を小説に盛り込もうとしてもうまくいかない。新吉は、悩みに悩み、なんとか原稿をこしらえる。

締め切りに間に合うよう中央郵便局へ電車で行く。その途中、夫に不明瞭な電報で呼ばれた女に出会い、彼女は、相手がどこへこいと言ったのかよくわからず、新吉に尋ねる。彼は彼女の身なりの貧しさが気になった。

そしてたどり着いた駅では、「浮浪者」が寝ており、隣でその息子が、立ち膝で上の方を見上げて

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「窓」 堀辰雄 を読んで。(青空文庫コラム)

「窓」 堀辰雄 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

「私」は、O夫人の別荘へうかがった。恩師であるA氏の遺作の絵を、展覧会に貸し出してもらうためにである。

O夫人はあの絵は昔のままではないと言う。そして、自分の記憶を確かめたいように、絵を見せてくれた。

「窓」という作品。「私」は、むかし、見せてもらったとき、何が書かれているか判然としない絵だった。しかし、ここで見たものは、画布にA氏の顔が。

「私」は、病により目の見えなくなっ

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「清修館挿話」 林芙美子 を読んで。(青空文庫コラム)

「清修館挿話」 林芙美子 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

谷村さんは、医学を志す学生です。夏休みを終えて、新しく下宿先を変えます。そこの「太つちょ」の下女に好かれます。

しかし、谷村さんは、街で偶然出会った「美しい女のひと」が気がかりです。同じ下宿「清修館」にいるようですが……?

(感想)

下宿にいる美しい女のひとのことを聞くと、太つちょの下女は、彼女はもう引き払ったとか、旦那がいるとか、教えてくれます。しかし、それは、下女が谷村さ

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「蒼穹」 梶井基次郎 を読んで。(青空文庫コラム)

「蒼穹」 梶井基次郎 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

午後、日差しのもと、渓(たに)と山の織りなす景色は心を休めるものだった。
夜、まだ(時代的に電灯のない)街道を歩いていると提灯も持たずに、家の明かりから闇へと消えていく人影を見た。そこに限りない虚無を見て恐怖を感じた。

(感想)

作者は、昼、空に広がる雲を見て、そのどこまでもあるような壮大さに鼓たれます。

けれども、夜の闇の中で、雲のその無限な神秘は、虚無に繋がっていることに

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「珈琲店より」 高村光太郎 を読んで。(青空文庫コラム)

「珈琲店より」 高村光太郎 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

「僕」は、フランスでの生活を満喫している。フランス語にひたり、フランスの女にひたり、オペラにひたり。
そして……一人の女と寝たあさ、鏡に映る東洋人を見て、「やはりJAPONAISだ。MONGOLだ」と絶望をする。

(感想)

江戸時代に黒船でペリーが来たころ、日本のお風呂は混浴でした。特に肌も隠さずに、です。でも、欧米人たちは、それを、けしからんと軽蔑したそうです。彼らの国では、

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