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「窓」 堀辰雄 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

「私」は、O夫人の別荘へうかがった。恩師であるA氏の遺作の絵を、展覧会に貸し出してもらうためにである。

O夫人はあの絵は昔のままではないと言う。そして、自分の記憶を確かめたいように、絵を見せてくれた。

「窓」という作品。「私」は、むかし、見せてもらったとき、何が書かれているか判然としない絵だった。しかし、ここで見たものは、画布にA氏の顔が。

「私」は、病により目の見えなくなったO夫人とA氏の隠された恋愛を思った。

(感想)

この物語は、O夫人の心のお話ではないでしょうか。

彼女とA氏はおそらく(作中で「私」が予想するように)、不倫の間柄だった。たぶん、O夫人にとっては遊びだった。

なぜなら、「窓」は、ずっと、その描かれたものがなんであるかわからないものだったからです。つまり、これはO夫人のA氏に対する、ツレなさ、理解の程度を表しているのでは。

そして、眼を病む前に、絵にはA氏の顔が現れました。それは、O夫人が、長いときをへて、A氏を愛していたことを理解したのだ……。おそらく、A氏の愛が本物であったことも。(ぼくはある老年の婦人の、求愛する老紳士に好意を見せながら、2人はともに、すでに独り者にも関わらず、婦人がある距離以上は寄せ付けないまま2人とも亡くなったのを見たことがあります)。

彼女は(心の)「窓」を本当は誰にも、もう、見せたくなかったのです。二人の愛を二人だけの宝物としておくためだったかもしれません。

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